誘拐の真実
ロウアの語った言葉に部員達は言葉を失い、自分達も普段から使っているロネントとの会話に背筋が凍った。
「ケセロは、ロネントを作り出してから裏で神への信仰を否定する言葉を学習させていたんです」
「ミカ・エル、そんなことは不可能ですっ!神殿に集まった知識を操作するなど、神官達ですらできないことですっ!」
ミクヨは、ロウアの言葉を強く否定した。自分達が信用していた知識を否定されたためであり、自分達のやってきたことを否定されてしまうためでもあった。
「女王、ロネントの知識集約装置は、聖域のはるか上空の衛星軌道上にありますね?」
「そ、それを何故ご存じなのですか?……いいえ、愚問ですね……」
「僕がこの地にやってきて学校の図書館で様々な事を学びました。そこには聖域のことも記載してあったのです。しかし、聖域は神殿に存在していません。丁度、重力を制御する装置がこの地で発明された頃から記載されていないのです」
「それは……」
「重力制御装置が出来たためだとすぐに分かりました。だから、僕は神殿の上空を調べました。聖域はすぐに見つかりました。しかし、ロネントの知識を集めている場所だけは特定できませんでした。シアムやアルのお父さんにも聞いたことはありますが、自分達は知らないと言ってました。しかし、神殿のどこかだとは話していました。それしかあり得ないと」
「にゃっ?!」
「カミィめ、いつの間に聞いていたんじゃ」
シアムとアルは、突然名前が出て来たのでビックリした。
「シアム、アル、ごめんね」
ロウアは手でごめんねと言いながらニコリとした。
「ケセロは神官達を洗脳して知識集約装置を調べてようとしました。僕の父親、そして、兄カウラを別の地に移動させたのはそのためです。しかし、二人とも知らなかった……」
「そんな……、誘拐だったということ……」
「やだやだ……、そんな理由……?」
ケセロの記憶操作で突然空き家になってしまったロウアの家だったが、その家族はケセロの操ったロネントによって隔離されていたのだった。
「次に狙ったのは、シアムとアルの父親です」
「にゃっ!お父さんお母さんも?」
「やだやだ……、どういうことじゃ……。あっ、誘拐されてしまった……」
「僕の周りの大人達は神官組織の科学部に所属しています。だから、僕の両親も兄も、そして二人の父親も狙われてしまった……。僕が関係していたからかもしれない……。二人ともごめん」
「にゃぁ……」
「……そ、そんなこと……」
「しかし、彼らはホセイトスが解放してくれました」
「えっ?ホセイトスさんか、にゃ?」
「ホセイトスさんが?どして?」
ロウアがそう話すと、小さな船が降りてきて、ホセイトスが降りてきた。
「あん?アルとシアムの両親は俺じゃなくて、お前だろ?……さ、降りてください」
すると船から部員達の両親達とキルクモ、そして、ロウアの両親とカウラが降りてきたので部員達は歓喜に沸いた。彼らはケセロによって誘拐されて地下に幽閉されていたのだった。部員達は両親に会えず不安に思っていた。
「お、お父さん、お母さんっ!キルクモ先生もっ!」
「あぁっ!!シイリ……?シイリッ!生まれたのね……。お母さんっ!お父さんっ!ぶ、無事で良かった……」
アルとシアムは自分達の両親が無事だったことに安堵し、彼らに寄り添って、家族の目には涙がこぼれた。
「ヨシッ!アマミルよ、こっちにきてワシを抱きしめて良いのだぞっ!」
「いやよ、バカね……グスッ……」
アマミルは、父親のバカさ加減も今なら親しみに思え、涙ぐむと彼に抱きついた。
イツキナも両親に駆け寄った。
「お父さんっ!お母さんっ!心配だったんだよぉ……、よく無事だったねぇ……グスッ」
「シイリちゃんだよ、彼が助けてくれたんだよっ!」
「お父さんっ!それってホント?シイリちゃんがっ?!」
「僕もシイリに助けられたんだよ、シアム」
「えっ!カミもか、にゃ?」
イツキナとシアムは、母親の胸で眠っている赤ん坊のシイリが何をしたのだろうと思った。
「シイリ……、ありがとうね……。君はやっぱり家族だよっ!」
シアムはそう言うとシイリを抱きしめてあげて頬ずりをした。
「もうさ~、何なんだよ、この赤ん坊はっ!俺はビックリだぜ」
ホセイトスは、そう言うと事の経緯を話した。




