再開
ロウアは、上空からこの恐ろしい惨状を見回して、未来で見た光景を思い出していた。
「……また僕はミスしたのか……しかし」
そう言った後、ロウアは横に居る者に後を任せた。
「……船を地上に降ろしてくれ」
「あん?降ろすってったって、何処に降ろすんだよっ!」
「僕はちょっと行ってくる」
「今、行ってくるって言ったのか?お前、その手足でどうするつもり……お、おいっ!池上っ!あぁっ!」
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ロウアは、白い船から降り立つとケセロの前に立ちはだかるように向き合って敵を睨んだ。
「サタンッ!これ以上の横暴は許さないぞっ!」
「ミカ・エルゥゥゥッ!お前ぇぇぇ、何処にいたのか分からんが生きていたかぁぁぁっ!」
ケセロは、元に戻っているロウアの手足を分析して、それを睨め付けた。
「おのれぇぇぇっっ!その手と足ぃぃ、我らの部品かぁぁぁっ!」
「ケセロッ!これで全て終わりだっ!」
ロウアは、義手と義足を使ってコトダマを切った。
<<つなぐものを切断するコトダマッ! ワ・キ・ホン・ル・ルッ!>>
<<時を動かすコトダマ ワ・イケ・カ・ミ>>
次々と放ったれたコトダマは、この場に居る人々を正気に戻し、取り憑いていた悪魔を取り除いていった。
「ギギギ……、ワレワレの洗脳装置を壊し、仲間を外したかぁぁぁっ!」
「ここから消え去れっ!お前の居る場所ではないっ!」
「お前の方が消えろっ!遅く現れし古代の神の使徒っ!」
ケセロは、言葉で誤魔化しながらロウアの周りのロネントを操って、彼に襲わせた。
「ヒャヒャヒャッ!すぐには魔法は使えまいっ!いけえぇぇぇっ!」
「しまったっ!」
しかし、ロウアがコトダマを準備できずにいると、上空から何本もの光線が光ってロネント達を次々に破壊した。ロウアは、何が起こったのか分からずにいると、シアムが降り立ったので驚いてしまった。
「シ、シアム……?!君がやったのかい……?」
「カミ……」
目の前のシアムは、レーザー銃を両手に持ちながらアイドル姿のままでモジモジとしていて、力強くロネントを倒した姿とのギャップにロウアはちょっと戸惑った。
「私だって戦える、にゃ……」
「あはは……。あっ……」
顔を赤らめていたシアムだったが、急にロウアに向かって来ると、そのまま彼を思い切り抱きしめ、その胸に顔を埋めた。
「会いたかった……、会いたかったぁぁぁ……、会いたかった、にゃ……にゃんにゃん……」
「シアム……」
危険だからここに来るなと言いたかったロウアだったが、彼女の目に涙が溢れていているのが分かって、何も言えなくなってしまった。ロウアが戸惑っていると今度は、アルが怒り顔でシアムを指差しながら降りてきた。
「やだやだやだっ!シアムってば一人で行っちゃうんだもんっ!まぁ、こんにゃろめが来たんだ、げへへ……、分かるけどねぇ~。ぐへへへっ!抱きしめちゃってさぁぁぁ、げへげへ……」
「アルちゃん、社長さん……みたい、にゃ……」
ロウアを抱きしめたままのシアムは、顔だけアルに向けると、気味の悪い笑い声の彼女にペロッと舌を出した。
「がぁっ!舌なんか出してっ!」
ロウアは、相変わらずの二人を見て何だか力が抜けそうになってしまった。そして、ふとアルを見ると、急に下を向いてしまっていた。
「アル……?」
「……そ、それにしたってぇぇ……カミィッ!何していたんだよぉ~っ!」
アルは顔を上げると今度はロウアに指を指して怒っていた。
「……ま、まぁ、色々とあって……」
「ぐ、ぐ、ぐぅぅ、……ぐぇぇぇぇ~~~んっ!やだやだやだぁぁぁっ!!バカロウアァァァッ!」
「こ、今度は泣くのかい……?」
ロウアは、怒って笑って怒って泣いてと忙しいアルに相変わらずだなと思って、頭を撫でてあげた。
「頭、撫でるなぁ……。子供じゃ無いんだぞぉ……、ぶぇぇぇぇん……」
「やれやれ……」
「……なあに?カミ君、遅かったんじゃない?」
「ア、アマミル先輩……っ!」
ロウアは、腕を組んでちょっと怒り顔のアマミルが急に現れたので慌てて頭を下げた。
「す、すいませんでした……」
「もう遅いんだから……」
アマミルは、頭を下げたロウアを見て涙目になってしまって、その顔を見られたくなかったのかそっぽを向くと上を向いて涙が流れるのを抑えた。
「ふあぁぁぁっ!アマミルが泣いてるっ!ありえんっ!」
イツキナもいつの間にかこの場に居て、そんなアマミルをバカにした。
「バカねっ!私が泣くわけ無いでしょっ!アルちゃんのもらい泣きよっ!」
「やっぱ、泣いてんじゃんっ!」
イツキナに突っ込まれてアマミルは、フンと鼻息を荒くするとまたそっぽを向いた。
「だけど、カミ君っ!君が消えたって聞いたらさ~っ!私ら心配したんだからなぁっ!」
「イツキナ先輩もすいませんでした」
ロウアは、イツキナにも頭を下げ、そして顔を上げると別のロネントが二人に襲いかかって来ていたので声を上げた。
「イツキナ先輩、危ないっ!」
「へへ~ん、カミ君、見てろよぉぉぉっ!」
しかし、イツキナは、ふふんとするとコトダマを切り出した。
<<カサ・ヤ!>>
「どかん、どかん、どか~んっ!いぇ~いっ!」
イツキナも自分達に襲いかかってくるロネント達をコトダマで破壊してしまったので、ロウアはまた驚かされた。
「は、はぁ~……、本当にコトダマ使えるんですね……」
「てへっ!まあねぇ、君のまねごとだけどねぇ。でも、私が神官達にコトダマを教えたんだぞっ1」
「な、なるほど……」
「カミィしゃまっ!私達もいますよっ!」
ツクとマフメノもロウアのそばにやって来ていた。
「ツクも元気そうで良かったっ!」
「カミィしゃまが遅いってアルしゃまが怒っていましたぁっ!」
「あははっ!ごめんね。で、そちらの方は?」
ロウアは見慣れない屈強な男を誰だろうと思った。
「えぇ~っ!僕だよ、マフメノだよっ!忘れちゃったのかい?僕だって心配していたんだよっ!」
「はぁっ?!マフメノッ?!嘘でしょ?!」
「本当だよ、ちょっと変わっただけだろ?」
「いや、ちょっとって……別人みたいじゃないか……。しゃべり方も変わってるよね……。しかし……」
ロウアは、そう言いながらも彼の顔に見覚えがあったので別の意味で驚いていた。
「君はKさんだったんだね……。髪の毛で顔が隠れていたから今まで気づかなかった……」
「だ、誰だよ、Kさんって」
マフメノは誰のことを言ってるのか分からず、首をかしげた。
「ほら、んなことより、女王様のお出ましだぞっ!」
「ふふふっ!ビックリ、あの子がが今の女王様なんだぞぉ~っ!」
イツキナとアルは、そう言うと荘厳な衣装を着たホスヰを両手でキラキラさせて迎えた。
「あうんっ!カミお兄ちゃんっ!会いたかったぁ~~っ!」
ホスヰは、降り立つとそう言いながらロウアの足下に抱きついた。
「あら、ホスヰちゃんモードだったか~」
イツキナはホスヰのままだった女王にちょっとずっこけた。
「ホスヰっ!その姿……、君に相応しい姿だね」
「えへへっ!」
ロウアに褒められたホスヰは、照れ笑いするとミクヨに身体を預けた。
「……あ、ちょっと変身でっすっ!」
ロウアは、ホスヰの身体に十二使徒の一人が宿るのが分かった。ホスヰは合掌して、頭を下げて顔を上げた。するとその顔はすでにミクヨに変わっていた。
「……ミカ・エル、神話の神よ。ご降臨いただきありがとうございました。そして、私をお救いくださったことを感謝申し上げます。お礼が遅れて申し訳ございませんでした……」
「い、いやいや……、その人は自分でもよく分からないのですよ……。ケセロも言っていましたが誰なんですか……その人は……」
ミクヨの感謝の言葉だったが、ロウアはとぼけたようなことを言ったのでアルは思わず笑ってしまった。
「ぷっ!やだやだやだっ!ほら、シアムゥ、これがカミィだよっ!エロカミィだよっ!」
「うん、カミだ、にゃっ!」
「そうね、カミ君ね」
「カミ君だなぁぁ、ホントに君らしいぞ」
「あうんっ!あうんっ!」
アルの言葉に部員達が同意すると自然と笑いが起こった。ロウアは何だかバカにされたような気持ちになった。
「なんだかなぁ……。僕はエロじゃ無いよ……」
「あははっ!」
「ふふふっ!」
「やだやだっ!」
「にゃにゃにゃっ!」
「あうんっ!」
「えへへっ!」
「ははっ!」
部員達は、成長した面も見せたが、互いに昔のままだと思った。それは、かつての部活そのものだった。再び、彼らは再び、ナーカル校の霊界お助けロネント部に戻った。




