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妄想はいにしえの彼方から。  作者: 大嶋コウジ
ハーメルンの笛
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毒の美酒

 廃棄場の一角、少し開けた場所でタツトヨは、凶器の舞を踊っていた。


「は~はははっ!さぁ、皆の衆よっ!革命の時は来たぞっ!我々に続けっ!明るい未来がやってくるぞよっ!」


 その言葉と動きは、ロネント同士をつなげたメッシュ型ネットワークを通じ、商人達の街の人々を首都ラ・ムーに先導していた。いや、正確には、悪の歌姫タツトヨは、"一人"では無かった。複数の街で歌姫は現れ、そして、悪意ある言葉で首都ラ・ムーへ人々を誘導していた。


 タツトヨは、歌姫達を自動運転に切り替えると、ケセロに先導している意味を問うた。


「おい、ケセロ。このまま首都の神殿を攻めるんだろうけど、大丈夫なのかい?神殿だって黙ってないだろ?攻撃されたらひとたまりもないでだろ?」


「人間など、いくらでも作れば良い」


「作ればって……」


「人間の性欲は収まることを知らない。放っておけばお前たちは子供を産む行為をする」


「なんかムカつく言い方だねぇ」


「お前は経験が無いみたいだがな。一人でやる行為では子供は生まれまい?ククク……」


 性行為を経験したことの無いタツトヨは、そう言われると顔を赤らめた。


「わ、わ、わ、私の……。それを……見ていた……たたたぁ?」


「ワレワレの監視網を忘れたか?何処にでも"目"はあるぞ」


「そ、そういう事を言ってるんじゃない……わよ……。はぁ~…」


 タツトヨは、これ機械と話しても仕方ないと頭を抱えて諦めた。


「……そ、それで神官達を倒して人々による政府を立ち上げる、それが目的だっけ?」


「分かりやすいだろう」


 ケセロの計画は、神官達を倒して人々による政府を立ち上げるという事だった。それはつまり、この国の神、ラ・ムーで打ち立てた宗教による国を破壊するという事を意味した。


「未来の日本という国では政治と宗教が分離している、なんと素晴らしい国だったか


「政教分離だっけ?素晴らしい?そうなのかい?」


「そうだ、神々を軽んずる行為だ。神々によって作られた世界を自分達で支配している思い込んでいる。実に愉快だっ!」


 ケセロの言葉の意味がタツトヨには理解出来なくなり始めていた。


「まるでこの地球が宇宙の中心だと考えているようだ。人類の知恵など宇宙から見れば芥子粒のように小さきもの。泥水に住む魚が泥の中で自分達しかいないのと思っているのと同じだ」


「う、宇宙?何だか大きな話しになってきたね……。宇宙とか何とか言われたって私には分からないよ」


「別に良いでは無いか、泥水の魚よ。魚が泥水の外を知る必要などない」


 バカにされたように言われてタツトヨは腹が立った。


「言い方がムカつくって言ってるんだよ……。あんたは何様なんだ」


「ワレワレは……そうだな……。宇宙的観点からこの地球を支配する者だ」


 ケセロはロネント達の世界を目指していたはずだが、宇宙という言葉を使い始めたので何をしようとしているの分からなくなってきた。


「ちょっと待てって、ロネントの世界じゃないのか?」


「ロネント?そうだったな。この星では、この機械で支配して神の計画を破壊するのだったな」


「この星では?他の星で何かしてきたかのようなセリフだねぇ」


「お前が知る必要は無い」


「また、それかい……。しかし、お前が言ってるのは"国民のため"とか、"人類に支配権を取り戻す"とか、人間様を救おうとしているように思えるんだがね」


「クククッ!これが人類のためだと思うのか?」


「えぇ?だって、金持ちの金とか、神官の持っている金を奪って分配するんだろ?良いことじゃないか」


「この思想は未来世界では、社会から発展を奪う思想だ」


「え?なんでだい?」


「誰も働く無くなるからだ。努力して得た富を奪われるのだ。富を持つものは国から離れ、愚かな者どもはバカらしくて誰も働かなくなる」


「……」


「しかもっ!!!人類のためにワレワレが働くのだっ!人類は楽を出来て良いではないか。人々は何も考えず、何も行動せず、動物的欲望のまま生きていけば良いだけだ。それがお前たちの幸せにつながるはずだ」


 タツトヨは、ケセロのワレワレの意味が二つあるように思えた。一つは、宇宙からみた我々、そして、ロネントとしての我々だった。しかし、頭をこねくり返してもその意味を理解出来なかった。


「この思想で"持つもの"から奪い合い、少しでも"持つもの"に嫉妬するようになる」


「それが平等ってわけかい?」


「そうだっ!平等、平等っ!クククッ!」


「何がおかしいんだよ……」


「"平等"という大義名分を得た支配者達は、人々に毒を流す。そして、その毒を食らった人々は、始めはその毒に酔いしれ喜ぶが、毒が全身に回った時には、互いに貧困になっていて力を失っている」


「毒か……」


「そうなれば支配者達の思い通りというわけだ。彼らはその支配欲に溺れ、更に人々から何もかも奪い去り、自分達に都合の良い社会を作ることが出来る。実に実に実に実に実に実に実に愉快だ」


「つまり、独裁社会ってわけかい」


「喜べ、タツトヨよ。お前は支配者になれる」


「それは楽しみだねぇ」


「実に面白い、平等、平等、平等!クククッ!この美酒を味わえ、愚かな人間共っ!クククッ!!」


かなり濁して書いていますが、この意味が分かる人はどれぐらいいらっしゃるかなぁ。

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