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妄想はいにしえの彼方から。  作者: 大嶋コウジ
ハーメルンの笛
533/573

乗っ取り作戦 その一

 エメがホヒと漫才をしている間、ホロは、学習用の子犬型ロネントがちょこんと座ったままで止まってしまったので、残念がっていた。


「あ~あ、さっきはちょっと動いたのになぁ……」


 ホロは、指でちょこちょこと触ったり、頭を撫でてみたりと様々な事をしてみたが、やっぱり一向に動かなかった。仕方ないと、彼が諦めかけたところ、いとこのホヒからメッセージが届いた。


┌───────────────────┐

│ホロ!                │

└───────────────────┘


 ホロは、彼が引き籠もりが酷くなったと聞いていたので、そのメッセージに驚きつつ返信した。


    ┌───────────────────┐

    │あ!ホヒお兄ちゃんだ!!       │

    │元気になったんだね!         │

    └───────────────────┘

┌───────────────────┐

│そ、そんなことより、すぐ逃げるんだ! │

└───────────────────┘

    ┌───────────────────┐

    │逃げる?!どうして?         │

    │何から逃げるの?           │

    └───────────────────┘


 ホロの言うことは最もだった。わけも分からず逃げろと言われても戸惑うだけだった。


┌───────────────────┐

│エメって奴が来なかったか?!     │

└───────────────────┘

    ┌───────────────────┐

    │エメ?それって誰だい?        │

    │お母さんに誰か来たのか聞いてみるよ  │

    └───────────────────┘

┌───────────────────┐

│ちょ、ちょっと待て          │

└───────────────────┘

┌───────────────────┐

│ホロ?ホロ?どうした?返事しろ!   │

└───────────────────┘


 ホヒが待てと言ったが、そのメッセージは読まれなかった。ホロは母親のところにすっ飛んでいったのだった。無論、母親に誰か来たかと、尋ねても聞いても誰も来ていなかった。


    ┌───────────────────┐

    │ホヒ兄ちゃん。あ、ごめん。最後のところ│

    │見てなかった             │

    │お母さんに聞いたけど、誰も来ていな  │

    │いってさ~              │

    └───────────────────┘

┌───────────────────┐

│ち、違うんだ             │

└───────────────────┘

    ┌───────────────────┐

    │違う?誰かが来るんじゃ無いの?    │

    └───────────────────┘

┌───────────────────┐

│あ~~、もう!!           │

│そいつは大悪党なんだ!        │

└───────────────────┘

    ┌───────────────────┐

    │だ、大悪党?!            │

    │大悪党が来るの?!          │

    └───────────────────┘

┌───────────────────┐

│と、ともかく逃げろ!         │

│その場から逃げるんだ!        │

└───────────────────┘

    ┌───────────────────┐

    │えぇ~っ!              │

    └───────────────────┘


 ホヒは、自分と同じ目に遭わないようにするため、慌ててホロに連絡を入れたのだったが、実はそれは遅きに失していた。


"おい、ホロッ!さっき言ったとおりだったろ?"


「うん、ホヒ兄ちゃんからメッセージが届いたよ~。逃げろとか言ってた。どうしたんだろうね。しかも、君がだいあくとーとかって。そんなことないのにね」


"はぁ~、あいつは今は混乱しているんだ。しばらく静かにしてやってくれ"


「うん、そうだねっ!でも、元気になったみたいで良かった」


"バカ、元気になったかもしれないが、混乱しているんだ。さっきも言った通り、あいつの言うことは無視するんだ、良いな"


「うん、分かったよ、エメ。君はホヒ兄ちゃんのしんゆーなんだもんね」


"そうだ。俺は、あいつの親友だから、あいつをすご~~く心配しているんだ。だから、先にお前に声をかけたんだ。さあ、メッセージを閉じて俺の言うことを聞くんだっ!"


「うんっ!」


 エメはすでにホロの家をハッキングしていて、子供部屋の音声装置を使って彼に色々と吹き込んでいた。エメは、遙か昔、孤児院で子供らと一緒に過ごしたので、子供の扱いには慣れていて、子供の純粋で素直な気持ちを悪用していた。


"良いか、そのロボット犬の演算装置を家政婦ロボットに差し込むんだ"


「ろほっと?!それってなんだい?」


"あ~、ちげーわ。慌てちまった。ロネントだっ!家政婦ロネントに装着しろっ!家政婦ロネントが、お前の家にもいるだろ?"


「うん、いるよ~っ!動かなくなってるけどっ!でもどうして装着するの?」


"ふっふっふっ!良いか~、よ~く聞けぇっ!それに装着するとなんと家政婦ロネントが動き出すんだ~~っ!!"


 エメは、家政婦ロネントであれば、人間型なので子犬型よりも動きやすいし、話しも出来るだろうと思った。その身体でロウアの様子を探ろうと考えた。


「え~~っ!すごいっ!すぐにやるよ~、エメェッ!」


 エメの言葉でホロは目を輝かし、物置部屋に移動した。エメこと、子犬ロネントも彼の後を追った。どうやら、犬の習性がプログラミングされているのか尻尾を振りながら喜んでいる仕草をしていて、エメはそれが嫌だったが諦めてお座りをするとホロに話し続けた。


"あぁ~、うん、確かにここにありそうだな"


 エメが廊下のカメラから覗くと物置部屋の入口にそれらしい姿が見えた。


「うん、お母さん自慢のロネントなんだっ!」


"はぁ?自慢の?よく分からんが、まあ良いや。早く引っ張り出すんだ"


「分かった~っ!」


 ホロは、物置部屋から自分よりも大きな動かなくなった家政婦ロネントを何とか引っ張り出した。


「ふ~~、重いなぁ……」


"良くヤッタぞ。あぁ、充電切れだな……"


「ここにあったからね」


 エメが早速、ハッキングしようとしたが、暗い部屋にあったためか、それは充電がすでに切れていて、出来なかった。


"よし、まずはそいつを日の光に当てて充電するんだ"


「じゅうでん、じゅうでんっと」


 ホロはそう言うと、廊下から指す光にロネントを当てて充電した。


「重いよぉ……」


"よしよし、そしたら、背中の演算装置の蓋を開けるんだ"


「うん」


 ホロは言われたとおり、ロネントの上半身の服をまくり上げると背中を出した。


"はぁ、ちゃんとブラまで付けてるぜ……。ん?!や、やべぇ……。こいつの母親か……"


 すると、物置小屋で物音がするので何があったのかと、ホロの母親がやってきたのだった。


「ホロ?何をしているの?そんな古いもの持ち出して。もうすぐご飯だよ」


「え~っとね、この子を動かすんだっ!」


「えぇ?動かす?本当かい?!」


「お母さんのお気に入りだったロネントだよねっ!」


「そうだけど。もう動かないはずだよ?」


「そんなこと無いよっ!エメがそう言ったもんっ!」


「エ、エメ?」


 エメは、ホロが自分の名前を出してしまったので、やばいことになって来たと焦った。彼は、ホヒの対策はしていたが、彼の母親の対策はしていなかったことを後悔した。


「……それは誰なの?」


「ホヒ兄ちゃんの親友だって~っ!」


「はぁ、ホヒ君の?」


 声を出すと母親に疑われてやりづらくなると思って、エメは黙るしか無かったのだが、すると今度は、母親のツナクトノにメッセージが届き始めた。


┌───────────────────┐

│おばさん!ホヒです!         │

└───────────────────┘


 エメはホヒの奴めと腹を立てたが、どうしようもなかった。


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