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妄想はいにしえの彼方から。  作者: 大嶋コウジ
ハーメルンの笛
529/573

二束三文

 ロウア達の見つけた街、ムー大陸の首都から北東に位置する街は、数百年前に商人達が首都を目指すために作った宿から徐々に広がって出来た。その場に根を下ろした商人達も多く、住人達はお金に敏感であり、しかも、ツナクが使えなくなっても自分達でフリーマーケットを開いて何とか生活するほどの商人根性が根付いていた。


 そんな街の腹ぺこ少年達三人は、お腹を満たすものを探して街中を探索していた。街を歩き回ったところで何も転がっておらず、退屈も相まって次の行動を決めかねていた。彼らは直前までは普通の生活をしていたためか、しっかりとした服を着ていて、互いにお腹を押さえて空腹に耐えかねていた。


「腹減ったなぁ……」

「ゴミ捨て場は何も無かったねぇ……」

「どうする?家に帰る?」


 するとリーダー格の一人があることを思いついた。


「外に行ってみようぜ、何かあるかもしれないっ!」


 この街は、盗賊達から財産を守るために大きな壁に囲まれていた。その壁を越えて行こうという提案だった。


「はぁ、外はヤバいだろ」

「怒られちゃうよ」


 他の二人は反対したが、子供らの興味と空腹はそんなことどうでも良くなっていて、結局、外に行くことになった。


「誰も居なかったな」

「へへ、ラッキー」

「外に出るのって久しぶりだなぁ」


 街の門には護衛がいるはずだったが、それどころじゃ無くなったのか、誰もおらず子供らは簡単に外に出られた。彼らは、あまり期待せずに街を出たのだが、壁に沿って少し歩いたところで、それを見つけて狂喜乱舞した。


「おい、見ろよ!」

「おぉっ!!あれなんだっ?!すげ~~~っ!」

「ヒャ~~~ッ!!!!!」


 それは、街の入口の壁の横に動かずに横たわるように置いてあった。

 物珍しいものを見つけて、興味を示さない子供はおらず、彼らも早速、巨人族退治ゲームのキャラクターである"守護者"に駆け寄った。


「なんでここにあるんだ?」

「これってゲームのキャラクターだよね?」

「だよね。お兄ちゃんがよくやってた奴だなぁ」


 彼らは、ゲーム内のキャラクターが実在することに驚きつつ、それを叩いたり、動かしたりした。しかし、それは全く反応がなかった。


「全然、動かねぇ」

「んだね」

「他のロネントと同じだね」


 すると、リーダーは、早速あることを思いついた。


「よしっ!こいつをさ、分解して売ろうぜっ!」

「それだ~~っ!」

「えぇ、誰かのものじゃ?」


 盗みは悪いことだと理解していたが、それ以上にお腹を満たすものが欲しかった彼らは、誰が置いたとも知らないロネントを持っていってしまおうとした。だが、すぐに巨大すぎるそれを自分達だけで持って行くのは無理だと気づいた。


「む、無理じゃんっ!」

「持って行けないよぉ~」

「そ、それならさ……」


 一人が提案したのは、それを分解してしまおうということだった。それしかないと悟った子供らは、守護者をあっという間に分解してしまった。このキャラクタはメイキングを前提にしているため、各部のパーツはボタン一つで取れてしまうように作られていて、子供らでも簡単に分解できた。


「まずは足から持って行こうぜ」

「そうだね」

「ねぇ、演算装置、もらっていい?」


 一人は演算装置をもらうことを願ってそう言った。


「えぇ~、一番高く売れそうじゃね?」

「そうだよ、ずるいよっ!」


「いいじゃん。うちのロネントで使えるかどうか試したいんだ」


「どうせ動かないか」

「試しても無駄だと思うよ~」


 各地にいるロネントは、ケセロが破壊されてから全く動かなくなってしまっていたので、演算装置だけを持っていっても使い道はないと判断されて、他の子供らもまあ良いかとなった。


「演算装置ってどこにあるんだ?」

「背中かな」

「ここだよ、きっと。お兄ちゃんがよく作っていたから教えてもらったんだ~」


 少年は守護者の頭をパカッと外すと、筒状の物体を引っこ抜いた。それは我々の時代で言えば缶コーヒー程度の大きさと思えば良いだろう。


「へぇ~、これが演算装置ってやつなのか。案外小さいな」

「演算装置って初めて見たかも。ロネントを動かす頭みたいなもんなんでしょ?」

「そうそうっ!やった~っ!」


 彼らは演算装置を抜き取ると、守護者の足をそれぞれ持って街に戻った。魂が演算装置に宿っているなど微塵も感じること無く、彼らは、ロネントの足を抱えて、くず鉄を集めている業者に持って行った。

 しかしながら、結局、ロネントの足など何の役にも立たないので二束三文の金を渡されてあっち行けと言われるだけだった。


「んだよ、こんなもんか……」

「腕とか胴も残っているけど……もう良いよね……」

「僕はこれがあれば良いや~」


 彼らは残ったエメの身体はどうでもいいやとなって、家に帰ってしまった。


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