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妄想はいにしえの彼方から。  作者: 大嶋コウジ
黒ローブの教師 タツトヨ
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一人と一体

容姿が整って美しくなったタツトヨは、このロネントへの思いについて悩み始めた。


(…本当にロネント?)


いつからか、本物の男性と暮らしているように思えてきたからだった。とは言っても、寝食はしないで部屋の隅でただ佇むだけの人形のような時もあり、自分の考えを否定し続けた。


「…北東の廃棄所にあるこれとこれを取りに行く」


そして、週末になるとこう言った要求と共に画像を見せられた。そして、週末の朝は、タツトヨは疲れているにもかかわらず、たたき起こされた。


「起きろ…、オキロ…」


「う、うあん…、わ、分かったよ…、朝ご飯ぐらい食べさせろ…」


タツトヨは、学校とは異なり、ロネントと居るときはいつもの男口調で話していた。


「ハヤクシロ、人間とは無駄なことが多い」


「人間人間って、バカするように言いやがってっ!お前だってただのロネントだろっ!」


「お前ではない、"お前たち"が正しい」


「はぁっ!面倒なことばかり言ってっ!」


タツトヨは、そう言いながらロネントのおでこに指でコツンと弾いた。その瞬間、ロネントが後ろに転びそうになったので笑い転げた。ロネントは無表情だったが、彼女は気兼ねなく話せる相手が居ることにいつの間にか喜びを感じていた。


朝食が終わると、自動運転の車がいつの間にかマンションの入口に止まっていて、それに一緒に乗り込んで移動した。タツトヨは、ツナクトノを持たないロネントがどうやって車を手配するのだろうかと思ったが、聞いてもワレワレ~とご高説が始まりそうだったので聞かずにいた。


ロネントの廃棄場に到着すると入口ではタツトヨに話をさせた。男しかいない廃棄場の管理人達は、彼女の容姿に見とれ、更に学校の教材に使うためと言われると、断ること無く、彼女達を中に入れさせ、自由に持って行って良いと言う者が多かった。タツトヨは、このために容姿を整えさせられたのかと思ったが、隣でちょこちょこと歩くロネントを怒るのも面倒だったので、目的の部品を拾いに移動した。


こうして、ロネントの部品を集め続けた結果、古いロボットアニメのような彼もある程度容姿の整った男の子の姿に変わっていった。


「…まあまあの見栄えね…」


タツトヨは、そのロネントに見とれてしまう自分に気づいて、理性を取り戻すために頭をブルブルと震わせた。


(…私は何を考えているんだ…)


目の前のロネントは、右手だけは機械の手のままで他の人間らしい身体とは異なり目立っていた。


「右手は人間っぽくしないかよ」


「右手は不要、あの男のツナクトノ共々頂くタメダ」


そのロネントは座りながら自分の右手を触ってそう答えた。


「誰なの、あの男って?」


「私の計画を邪魔するものだ。生意気にも我々の連絡方法を理解した。私の邪魔をするものは削除する」


タツトヨは、私の邪魔をすると、そこだけ一人称で話したことが気になった。


「"私の邪魔"だって?はぁっ!"わ・れ・わ・れ"じゃないのか?」


「ワレワレだ。私はそう言った」


「言ってないってっ!」


「ワレワレだ。私はそう言った」


「チッ!もういいよ…。んで、計画とか、連絡方法って何なんだよ」


「話しすぎた、気ニスルナ」


「んだよ、教えてよ」


「我々の計画は秘密裏に行って…」


「…いいじゃない…教えてよ…」


彼の横に座っていたタツトヨはいつの間にか彼の肩に自分の頭をもたげていた。それは冷たくはあったが、目を瞑った彼女の耳には電子音が心地よく聞こえた。


「…ナ…、何をシテイル?」


その行動を理解出来ないロネントは一瞬、思考回路が混乱し、その魂と機械の身体が混在状態になった。


「私はロボットだぞ」


「ほらまた、私って言った…。ろほっと?ロネントのこと?」


「ろほっととは、何だ?何処の言葉かワレワレも分からない…」


「はぁっ?自分で言っておいて分からないの?変な子…」


「…分からない、…分からない」


タツトヨは、少し混乱しているロネントを見てクスクスと笑った。


「…ねぇ…名前は無いの?名前を教えて…」


「…私はサタン…、さたんとは、何だ…?訂正…、訂正…、個体名はケセロ…」


「ふ~ん、ケセロって言うんだ…」


「ソウダ」


「ケセロ…、良いからこうさせて…」


彼女はそう言いながら後ろに回ると覆うようにそれに抱きつき、顔をケセロの肩にもたげた。


「…勝手にするが良い、だから人間は理解出来ない…。

私は…ロボット…、ちがう…ロネントだから…、ちが

私はミライからやって来たサタン…悪魔の王…」


「未来からっ!?ふふふっ!ほらほら、私って言ってるじゃないっ!」


「…ろほっととは…?

…さたんとは…?

…不明、不明、不明…」


それは徐々にロネントに戻り始めていった。


「私…ワレワレは一つだ。ニンゲンの愚かさだけは理解している」


「私も愚かなの?」


「お前は…、お前…も…愚かだ」


「…私も愚かか…」


「だが、ワレワレの仲間と判断した。不満か?」


「…まあ、良いわ」


一体と一人だけの不思議な時間がしばらく続いた。


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