元神官達
数週間もするとミミはすっかり孤児院に慣れてしまった。
「コラコラッ!裸で走らないのっ!!」
「わ~~~っ!!ミミおばさんが追いかけてくるぅ~~っ!」
「ミミィおばちゃんが来るぅぅぅ!!」
「おばさんじゃないって何度言えば良いの、もうっ!!ミミお姉さん、でしょっ!
じゃなくて、風邪引いちゃうでしょっ!!」
「ミミィッ!べぇ~~っ!」
「あははははっ!!」
「コラ~~ッ!」
ミミが、子ども達の食事や、部屋の掃除などでも、生き生きと働いているのが誰の目にも分かった。
目にも輝きが戻り、少し頬もふっくらとした。
その様子をエメとオケヨトは嬉しそうに見ていた。
「すっかり、元気になったな。」
「うん、そうだね。エメ、ありがとう…。」
「ん?気にするな。子どもの面倒を見る従業員が欲しかっただけだって。
だけど、もう少し女性の従業員がいても良いかもな。」
「そ、そうだね。ミミさんにも良い人がいないか聞いてみるよ。」
「あぁ、それは良い考えだ。」
この後、ミミに相談して、エメを孤児院に連れてきたミミの元同僚だった黒い肌の元神官も従業員として働くことになった。
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黒い肌の元神官が初めて孤児院に訪れた日…。
「ミミッ!あなたすっかり良くなって…。うぅぅ…。本当に良かった…。ヒック…。」
元女性神官達は互いを抱きしめた。
「もう、泣かないでっ!」
「あなただって泣いているじゃない…、ふふっ。」
「エメ君のお陰よ。彼ったらすっかり社長さんなのよ。」
「知っているわ。当たり前じゃないっ!」
「そうね。あははっ!彼のお陰であなたもお仕事できるんですものね。」
「家計の助けになるし、子どももこちらで預かってもらえるし、助かるわ。」
「(ちっ!子どもか…。)」
ミミは同僚が自分の子どもの話をしたので思わず舌打ちしてしまった。
「い、今、舌打ちしたわね…。酷い顔だったわ…。久々に会ったというのにすごいわ、あなた…。」
「そ、そんなことするわけないじゃ無い…。」
「ぷっ、あははっ!」
「あはははっ!」
だが、そんなことも心のしれた二人には何てこともなく、昔からの続く二人だけの会話の一部だった。
「あなたも結婚すれば良いのに。」
「ま、また唐突に…。しかも、結婚なんて…、簡単に言ってくれるわね…。」
「オケヨト君なんてどうなのよ。」
「バ、バカなこと言わないでっ!いくつ離れていると思っているのよっ!」
「若い男の子なんてうらやましいわっ!」
「バカにしてっ!」
「ふふっ!」
「もうっ!ふふふっ!!」
「また、お酒でも飲みに行きましょう。」
「うんっ!うんっ!」
元神官達は、互いを見つめ合って、かつての友情を分かち合った。
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また別の日には、ミミの元先輩だった神官本部のトウミが定期的な打ち合わせのために孤児院に現れた。
「ミミ君…、戻ったんだね…。あぁ、良かった…。ラ・ムー様…、ありがとうございます…。」
「タ・トウミ…、お久しぶりです…。お見舞いに来て下さった時は…、ごめんなさい…。」
トウミがミミの見舞いに行ったとき、神官の関係者は顔を合わせるのも嫌だと言って面会を断ったのだった。
「いやいや…、君には酷いことをしてしまったから…。本当にすまない…。
今頃謝っても許してくれないだろうが…。」
「ううん、もう、気にしていないんです。私も嫌ならすぐに辞めてしまえば良かったんです。」
「すまない…、あの時、君の気持ちにすぐに気づくべきだった…。我々の落ち度だよ…。
こんな事言える立場では無いかもしれないが、神官組織を恨まないで欲しい…。」
「恨みなんて…。私が弱いばかりに…、ご迷惑をおかけしたと思っています。」
「そうか、ありがとう…。
しかし、ロネントの配備は未だ続いている…。
あの頃に比べたらいくらか賢くなっているが、それでも人間の神官にはとてもじゃないがかなわないよ…。
上層部は一体何を考えているんだか…。」
ミミは壊れているロネント見つめると
「そうですか…、こちらのロネントはあの状態です…。」
と言った。
「そうだな…、だが、ここはもう代替えのロネントは、必要ないだろう…。君もいるしね。」
「ふふっ、ありがとうございます。会社も順調ですし。」
「我々もこの会社からお布施を沢山頂いているんだよ…。
身寄りの無い子どもを沢山、ここで面倒を見てもらっているし…。
すっかり立場が変わってしまった…。」
「なるほど…、だから子どもが増えているんですね。」
「私もエメ君には頭が上がらなくなってしまった。すごい子どもだったんだね。」
「えぇ、えぇ…。本当に…。彼に会えて本当に良かったと思っています。」
「我々では君を救えなかった…。
神官とは一体何なんだと思うよ…。あまりにも形骸化しすぎている。」
「そんな…。この国を支える大事なお仕事ですよ。」
「そう言ってもらえると、助かるよ。」




