エメ商会、社員募集中!
エメ達は、自分が始めた業務を「エメ商会」と名付けて正式な会社として、神官組織に申請した。
「これで立派な会社になったねっ!」
オケヨトは正規な会社となって嬉しかった。
だが、エメは不満そうだった。
「これで税金を納めないといけなくなったぜ。」
「セイキンってなんだい…?お布施だって…。
利益をもらうんだから、納めるのは当たり前だろ?」
「ちっ、布施か、言いようだな。ま、良いけどさ。」
「そうだよ、僕らだってこのお陰で生きてこれたんだから。」
「……。」
会社を興すぐらい、オロヘネアとストウフの販売事業は順調であり、その売上によって、孤児院の家屋もかなり増強されていた。
以前は数名で一つの部屋を使っていたが、年長者は一人部屋になっていた。
年少組、幼年組の部屋も十名ぐらいで一部屋だったが、今は四人で一部屋となっていた。
エメは自室で朝から、現在のPCのキーボードのような入力デバイスを使って、空中に浮かぶモニターに向かいながら、ツナク上に何かをせっせと作っていた。
「よしっ!求人広告はこれでいいかなっ!」
少し前から、作業員が足りなくなってきたので、エメは、求人広告のページをツナク上に載せて、ロネントが原因で仕事を失った人々を探し始めたのだった。
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正社員募集!
ロネントで仕事を無くしたあなた!「エメ商会」で働きませんか?
未経験・初心者の方でも全く問題ありません!
弊社の従業員が丁寧にお教えします。
業務:掘削作業、暖房機の制作
勤務地:み・ふ・ふいと(国道"い"号線からすぐの場所です。)
月給: ひふと・ととと≡!
勤務時間:こ ~ とや
残業無し、週末祝日は、完全な休日です。
応募資格:年齢とい以上
とにかくお金を稼ぎたい人向け!
あなたのやる気をお待ちしています!
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※ 作者注
勤務地:
ムー文明では大陸をX方向とY方向で区分けしています。
「み・ふ・ふいと」→ ムー大陸 3 - 2 - 250番地 ぐらいの意味です。
タクシーのナビに入力すれば勝手に到着します。
月給:
ひふと・ととと≡→ 120,000 金額単位
1≡ = 1円 相当
勤務時間:
こ ~ とや → 9時から18時
応募資格:
年齢とい以上 → 15歳以上
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エメは早速オケヨトに求人募集のページを見せた。
「エメ、お金を稼ぎたい人向けって書いてあるけど、給料が安くない…?
僕らが働く時の月給ぐらいじゃないかな。」
「そうか?大丈夫だろ?」
「危険な業務というのも書いた方が…。」
オケヨトが言うように、幸い大けがには至っていないが、火傷を負う子どもも少なからずいた。
「いや、いいんだって。んなこと書いたら人が来なくなるって。
それよりも、今の仕事を子ども達にやらせ続けるわけにもいかないだろ?」
「そうだけど…。」
「人が集まったら組織も見直さないとな。」
「どうするんだい?」
「年長者は、俺の直下に置いて、リーダーとして社員を管理させる。
そうだな、一人あたり5人ぐらいが限界だろうな。
オケヨトは会計をやってくれ。お前なら安心して金をまかせられるからな。」
「うん…。ひ、人集まるといいね…。」
オケヨトは、集まると良いと言ったが、孤児院に大人を集めるのはあまり良いことだと思っていなかった。
だが、エメ商会の名前は有名になっていたのと、噂通りロネントによって仕事を失った人々も多くいて、完全な買い手市場だった。このため、従業員をやりたいという人からの応募が殺到した。
しかし、無職の人が集まったためか、善良な人もいたが、ガラの悪い人も多くいた。
オケヨトは集まった人への説明会の後、エメに耳打ちするように、
「エメ…。あ、あの人、顔に傷があるよ…。目つきもちょっと怖いんだけど…。
子ども達が心配だよ…。変な影響を受けないかって…。」
と不安を訴えた。
「オケヨト、お前の言いたい事は分かる…。最初は仕方ない…。
年少組から下のちっこいのは仕事場に近づけないようにしよう。」
「うん、そうだね。ありがとう。」
「だけど、こんな人が集まるんだ。買い手市場って奴だから、改善していくはずだ。」
「なるほど。」




