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妄想はいにしえの彼方から。  作者: 大嶋コウジ
その発展は誰がためか
180/573

お役所仕事

エメとオケヨトは、孤児院で慈愛部からの連絡を待っていた。


「エメ、"あ"曜日になったけど、連絡ってくれるのかなぁ。」


「さぁな。」


エメは、どうせ、お役所仕事になるのではないかと期待していなかった。


(私達がトウミを訪問したのが、"ら"曜日だから、週末の"さ"曜日にでも打ち合わせをするのかもしれない。

まさかお役所が休みの日(や曜日、わ曜日)に仕事をするとは思えない。

休み明けの今日、決まったことでも連絡に来るんだろうが、さてどうかな。)


やがて夕方近くになって、エメとオケヨトのツナクにトウミからメッセージが届いた。


┌───────────────────┐

│エメ君、オケヨト君、         │

│お待たせしてすまないね。       │

│孤児院への食料の支給が決まったよ!  │

│支給は二週間後からになりそうだ。   │

└───────────────────┘

    ┌───────────────────┐

    │本当だろうな。            │

    └───────────────────┘

┌───────────────────┐

│エメ君、やれやれ手厳しいなぁ。    │

│神官組織全体で決定した事項だから   │

│信じて欲しい。            │

└───────────────────┘

    ┌───────────────────┐

    │はん!支給とやらが届いたら      │

    │信じてやるよ!            │

    └───────────────────┘

┌───────────────────┐

│信頼されてないなぁ。         │

└───────────────────┘

    ┌───────────────────┐

    │あんなロネントをよこすからだ!    │

    └───────────────────┘

┌───────────────────┐

│それを言われると辛いよ。       │

└───────────────────┘


そのやり取りを見ていたオケヨトは、失礼なメッセージばかりを送っているエメをまずいと思って割り込みのメッセージを入れた。


    ┌───────────────────┐

    │タ・トウミ!             │

    │オケヨトです。ありがとうございます! │

    │心から感謝いたします。        │

    │エメはこんな事言っていますがお許し  │

    │下さい。               │

    └───────────────────┘

┌───────────────────┐

│あはは。               │

│こちらも悪かったからね。       │

│食料の支給は期待してくれ。      │

└───────────────────┘

    ┌───────────────────┐

    │分かりました。            │

    │それまでは何とかしてます。      │

    └───────────────────┘

┌───────────────────┐

│申し訳ないけど、もう少しだけ     │

│待っててくれ。            │

└───────────────────┘

    ┌───────────────────┐

    │分かりました。            │

    │色々とご厚意ありがとうございました。 │

    └───────────────────┘


メッセージのやり取りが終わると、エメは、


「ちっ!お前は人が良すぎだよ。」


「エメが酷すぎるんだよ…。タ・トウミだって頑張ってくれたのにさ。」


「まあ、届けば信じてやるって。」


「全く…。」


-----


そして、トウミのメッセージにあったように二週間ほど経過すると、トウミから連絡が入った。


┌───────────────────┐

│エメ君、オケヨト君          │

│明日届くそうだ。           │

│ちゃんと届くかどうか、確認してくれ。 │

└───────────────────┘

    ┌───────────────────┐

    │はい、分かりました。         │

    │ご連絡ありがとうございました!    │

    └───────────────────┘


オケヨトは感謝の意を伝えた。

その連絡の翌日に、孤児院に大きな車が到着すると、運送用のロネントが、この時代特有の使い捨ての段ボールのような箱を運んできた。


「ほらっ!届いたよ、エメッ!」


「あぁ…、やるじゃないか。だが、何か小さくないか…?何日分だよ…。」


運送ロネントは荷物を置くと、受領印を求めて、ツナクの照射を求めた。


「うん?はっ?!これだけかよ?」


食料が入っていると思われる段ボールは、大きかったが二つしか無かった。


オケヨトは自分のツナクを照らして受領したことを知らせると、ツナクに表示された荷物の内容を確認した。

そこには、「食料一ヶ月分」と表示されていた。


「お、おい、これが本当に一ヶ月分か?」


大きな段ボール二つではあまりにも量が少なかった。


「オケヨト兄ちゃん、開けてみてよ~~~っ!」

「見たい、見たいっ!」

「wktk!」

「早く食べたいよぉ~っ!」


オケヨトは、子ども達に急かされるように、その箱の一つを開けてみたが、その中身を見て、一斉にがっかりした。

幼児用の粉ミルクと、それ以外は、非常食のような食事だったからだった。

オケヨトはその一つを手に取ってみたが、手の平の半分ぐらいしか無い大きさで、開けてみると何かが固まったような白い塊が出てきた。


「え~、これが食べ物~っ?」

「美味しいのかなぁ…。」

「まずそ~っ!」


エメには、來帆だった頃に見た携帯用の食料にしか見えなかった。


「はんっ!これじゃ、腹は膨れないじゃないかっ!トウミめっ!」


エメは吐き捨てるように言った。


「…これが精一杯なんじゃ無いかな…。」


さすがにオケヨトもフォローしようもなかった。


「まぁ、これで、何とか生活は出来るかもしれないしさ…。」


「本当かよ。」


エメは呆れて言うと、荷物を孤児院に入れもせず、自分の部屋へと戻って行ってしまった。


「エメ…。」


オケヨトは何も言えなくなってしまったが、年長者らしく、


「さ、みんな。これを運ぶのを手伝っておくれ。」


子ども達を使って荷物を孤児院の倉庫への運んでもらった。


その夜、オケヨトはトウミにお礼のメッセージを送った。


    ┌───────────────────┐

    │タ・トウミ              │

    │食料が届きました!          │

    │ありがとうございました!       │

    │これで何とか生活が出来そうです。   │

    └───────────────────┘

┌───────────────────┐

│そうか、そうか、良かったよ。     │

│君たちのことは、タ・ナレミから    │

│託されているからね。         │

└───────────────────┘

    ┌───────────────────┐

    │はい、これからもよろしくお願い    │

    │いたします。             │

    └───────────────────┘

┌───────────────────┐

│うん、もちろんだよ!         │

└───────────────────┘


エメにも、そのメッセージは届いていたが、何もコメントを入れなかった。


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