お役所仕事
エメとオケヨトは、孤児院で慈愛部からの連絡を待っていた。
「エメ、"あ"曜日になったけど、連絡ってくれるのかなぁ。」
「さぁな。」
エメは、どうせ、お役所仕事になるのではないかと期待していなかった。
(私達がトウミを訪問したのが、"ら"曜日だから、週末の"さ"曜日にでも打ち合わせをするのかもしれない。
まさかお役所が休みの日(や曜日、わ曜日)に仕事をするとは思えない。
休み明けの今日、決まったことでも連絡に来るんだろうが、さてどうかな。)
やがて夕方近くになって、エメとオケヨトのツナクにトウミからメッセージが届いた。
┌───────────────────┐
│エメ君、オケヨト君、 │
│お待たせしてすまないね。 │
│孤児院への食料の支給が決まったよ! │
│支給は二週間後からになりそうだ。 │
└───────────────────┘
┌───────────────────┐
│本当だろうな。 │
└───────────────────┘
┌───────────────────┐
│エメ君、やれやれ手厳しいなぁ。 │
│神官組織全体で決定した事項だから │
│信じて欲しい。 │
└───────────────────┘
┌───────────────────┐
│はん!支給とやらが届いたら │
│信じてやるよ! │
└───────────────────┘
┌───────────────────┐
│信頼されてないなぁ。 │
└───────────────────┘
┌───────────────────┐
│あんなロネントをよこすからだ! │
└───────────────────┘
┌───────────────────┐
│それを言われると辛いよ。 │
└───────────────────┘
そのやり取りを見ていたオケヨトは、失礼なメッセージばかりを送っているエメをまずいと思って割り込みのメッセージを入れた。
┌───────────────────┐
│タ・トウミ! │
│オケヨトです。ありがとうございます! │
│心から感謝いたします。 │
│エメはこんな事言っていますがお許し │
│下さい。 │
└───────────────────┘
┌───────────────────┐
│あはは。 │
│こちらも悪かったからね。 │
│食料の支給は期待してくれ。 │
└───────────────────┘
┌───────────────────┐
│分かりました。 │
│それまでは何とかしてます。 │
└───────────────────┘
┌───────────────────┐
│申し訳ないけど、もう少しだけ │
│待っててくれ。 │
└───────────────────┘
┌───────────────────┐
│分かりました。 │
│色々とご厚意ありがとうございました。 │
└───────────────────┘
メッセージのやり取りが終わると、エメは、
「ちっ!お前は人が良すぎだよ。」
「エメが酷すぎるんだよ…。タ・トウミだって頑張ってくれたのにさ。」
「まあ、届けば信じてやるって。」
「全く…。」
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そして、トウミのメッセージにあったように二週間ほど経過すると、トウミから連絡が入った。
┌───────────────────┐
│エメ君、オケヨト君 │
│明日届くそうだ。 │
│ちゃんと届くかどうか、確認してくれ。 │
└───────────────────┘
┌───────────────────┐
│はい、分かりました。 │
│ご連絡ありがとうございました! │
└───────────────────┘
オケヨトは感謝の意を伝えた。
その連絡の翌日に、孤児院に大きな車が到着すると、運送用のロネントが、この時代特有の使い捨ての段ボールのような箱を運んできた。
「ほらっ!届いたよ、エメッ!」
「あぁ…、やるじゃないか。だが、何か小さくないか…?何日分だよ…。」
運送ロネントは荷物を置くと、受領印を求めて、ツナクの照射を求めた。
「うん?はっ?!これだけかよ?」
食料が入っていると思われる段ボールは、大きかったが二つしか無かった。
オケヨトは自分のツナクを照らして受領したことを知らせると、ツナクに表示された荷物の内容を確認した。
そこには、「食料一ヶ月分」と表示されていた。
「お、おい、これが本当に一ヶ月分か?」
大きな段ボール二つではあまりにも量が少なかった。
「オケヨト兄ちゃん、開けてみてよ~~~っ!」
「見たい、見たいっ!」
「wktk!」
「早く食べたいよぉ~っ!」
オケヨトは、子ども達に急かされるように、その箱の一つを開けてみたが、その中身を見て、一斉にがっかりした。
幼児用の粉ミルクと、それ以外は、非常食のような食事だったからだった。
オケヨトはその一つを手に取ってみたが、手の平の半分ぐらいしか無い大きさで、開けてみると何かが固まったような白い塊が出てきた。
「え~、これが食べ物~っ?」
「美味しいのかなぁ…。」
「まずそ~っ!」
エメには、來帆だった頃に見た携帯用の食料にしか見えなかった。
「はんっ!これじゃ、腹は膨れないじゃないかっ!トウミめっ!」
エメは吐き捨てるように言った。
「…これが精一杯なんじゃ無いかな…。」
さすがにオケヨトもフォローしようもなかった。
「まぁ、これで、何とか生活は出来るかもしれないしさ…。」
「本当かよ。」
エメは呆れて言うと、荷物を孤児院に入れもせず、自分の部屋へと戻って行ってしまった。
「エメ…。」
オケヨトは何も言えなくなってしまったが、年長者らしく、
「さ、みんな。これを運ぶのを手伝っておくれ。」
子ども達を使って荷物を孤児院の倉庫への運んでもらった。
その夜、オケヨトはトウミにお礼のメッセージを送った。
┌───────────────────┐
│タ・トウミ │
│食料が届きました! │
│ありがとうございました! │
│これで何とか生活が出来そうです。 │
└───────────────────┘
┌───────────────────┐
│そうか、そうか、良かったよ。 │
│君たちのことは、タ・ナレミから │
│託されているからね。 │
└───────────────────┘
┌───────────────────┐
│はい、これからもよろしくお願い │
│いたします。 │
└───────────────────┘
┌───────────────────┐
│うん、もちろんだよ! │
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エメにも、そのメッセージは届いていたが、何もコメントを入れなかった。




