救出前
ロウアがシイリを助ける少し前の事だった…。
霊界お助けロネント部の部員が、もう一人のシアムを探した後だった。
ロウアが家についてしばらくすると、魂のロウアが話しかけてきた。
(だけど、もう一人のシアムって誰なんだろな?)
(分からない、本当にドッペルゲンガーなのかな。)
(とっへる…って言いにくいな。お前の言葉は時々濁った発音をする。)
(ドッペルゲンガー事態は、僕の国の言葉じゃないよ…。
ただ、言いにくいのは分かる気がする。
ナーガル語は濁音がないからね。
逆に僕からするとすかすかしたように聞こえるんだけど…。)
(なんだよ、スカスカって。)
(締まりが無いというか、何というか。)
(んだよ、それ。流暢に話しているって言えよ。)
(ごめん、ごめん。悪口みたいになってしまった。)
その時、ロウアの家にメメルトやって来た。
(イケガミ様…。イケガミ様…。)
(あっ!メメルトさん。何かありましたか?!)
(もう一人のシアムさんが見つかりました。)
(えっ!)
(先ほど、シアムさんの家の前にいました。
本当にシアムさんそっくりでした。
服が破けてしまっていて、何だか可哀想な姿…。)
(な、何かあったのかな…。)
(それと…、彼女はロネントだと思います。)
(えっ!ロネントだって?)
(えぇ…、分かるんです。私と同じです…。
私が宿ってしまった用務員ロネントと同じだと思います…。)
(まさか、あなたと同じように宿ってしまったと…。)
(はい…。何だか可哀想…。
イケガミ様、どうか彼女を助けてあげて下さい。)
(分かった。)
(私は、もう一人のシアムさんに着いていきます。)
(うん、分かった。ありがとう。
探す前にシアムにも話しておこう。
そうだ。ロウア君も連絡係になってよ。)
(あん?仕方ないな。んじゃ、俺もメメルトに着いていくぜ。)
(ありがとうございます。ロウア様。)
(お、おう?俺はロウアで良いぜ?こいつみたいに神官様じゃないからな。)
(…いや、僕も様は外して…。)
(いえいえっ!とんでもないっ!
お二人は私にはかろうじて見えるぐらいの光に満ちた方です。
お役に立てるだけで光栄です。)
メメルトから見るとあの光りの柱の中にいた女性のように、イケガミとロウアは輝いて見えた。
(あっはっはっ!俺はそんなにすごいのかっ!)
魂のロウアは、どうだと言わんばかりに高笑いをした。
(いや、どこが…。)
(んだよ、調子に乗るところだろ、ここは。)
(はぁ~、全く…。
…とにかくメメルトさん、もう一人のシアムをお願いします。)
(はいっ!)
(俺様にも何か言えって。)
(はいはい、頑張って連絡してくれよ。)
(んだよ、雑だな…。ま、いいや、行こうぜ。)
(はい、よろしくお願いいたします。)
こうして、メメルトがもう一人のシアムを追跡し、魂のロウアが連絡係となった。
一方、ロウアはシアムに連絡を入れた。
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│シアム? │
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│い、イケガミ兄さん!! │
│どどど、どうしました、にゃ! │
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│えっと、もう一人のシアムが見つかっ │
│たみたい。 │
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│えぇ! │
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│どうやらロネントに宿った君の妹さん │
│だったようだ。 │
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│えぇ!! │
│でも、あの時、イケガミ兄さんが助けてく│
│れたのに…。 │
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│うん、だけど、あの後、ロネントに │
│宿ってしまったようなんだ。 │
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│宿った?メメルトさんみたいに? │
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│うん…。 │
│…あぁっ! │
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│どうしたんですか? │
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│もしかしたら、君似のロネントがまだ │
│君の家に残っていて…。 │
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│それに宿ってしまったと…。 │
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│うん、多分…。 │
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│……。 │
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│彼女は今迷っているはず…。 │
│ロネントと切り離してもまた戻ってしま │
│うかも。 │
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│…はい。 │
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│だから君の家に連れて行こうと思う。 │
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│…え? │
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│ロネントは怖いかもしれないし、君を │
│怖がらせた子だけど、彼女を一緒に助 │
│けて欲しいんだ。 │
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┌───────────────────┐
│は、はい…。 │
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│だから、この話を家族にも話しておい │
│て欲しい。 │
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┌───────────────────┐
│家族にですか? │
│お父さんとお母さんに…。 │
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│そう…。彼女は生まれることが出来ず、 │
│あの世で彷徨っていた。必要なのは家族 │
│の愛なんだ。 │
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│そう…、そうですね。 │
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│ご両親が理解してもらえるか分からないけ│
│ど…。 │
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│大丈夫です。私たちを助けてくれたイケガ│
│ミ兄さんからのお話ということであれば!│
│それに家族ですもんね。 │
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│助かるよ。ありがとう! │
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│はい、にゃ! │
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│これからあの子を助けに行ってくる。 │
│また連絡するね。 │
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│はい、にゃ! │
│頑張って、イケガミ兄さん! │
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┌───────────────────┐
│ありがとう! │
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