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妄想はいにしえの彼方から。  作者: 大嶋コウジ
ドッペルゲンガー少女 シイリ
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それぞれの不安

シアムが次に目が覚めたのはベットの上だった。


「ア、アルちゃん…、あっ、それにイケガミ兄さん…。」


ロウアは二人にライブに誘われていて、会場で応援していたのだった。


「大丈夫?シアム?」


ロウアはシアムを心配していた。

歌っている姿は会場から見ていたが、いつもと様子が違っているのが分かったからだった。


「歌っているとき、顔色があんまり良くないのが分かって心配していたんだ。」


「う、うん…、わ、私、その…、怖くなってしまって…。」


「怖くなった…?」


シアムはいきさつを説明した。


「お、おう…、それで何か変だったのかぁ…。

ごめん、怒ったりして…。」


シアムの様子がおかしかった理由が分かって怒ったことを謝った。


「ううん、良いの…。私の方こそお話ししなかったから…。ごめんね…。」


「イケガミ、何か分かる?」


「それでか…。

さっきから小さいな女の子があそこにいるんだよね…。」


ロウアはシアムの話を聞いて、小さな少女が近くにいる理由が分かった。


「な、なんだとっ!!!」


「ひっ…。」


シアムは身体をちぢこませてしまった。


「ここの病院で亡くなった人だと思ってた。」


「イケガミ…、何で言わないんじゃ。てか、怖いんだけど…。」


「いや、だって、いちいち言うわけには…。

二人は有名だからいつも色々と呼び寄せてるしさ。

いつも通りというか…。」


「イ、イケガミィ~、さらっと怖いこと言ったな~っ!

やだやだやだ~~~っ!」


「でも二人とも光が強いから、いつも跳ね返しているよ。

すぐに逃げていっちゃうんだ。耐えられなくなってね。」


「そ、そうなのか…、でも何だかなぁ…。まあいっか…。」


アルは相変わらずさっぱりしていて、気にしても仕方ないといった感じだった。


だが、シアムは酷く怯えていた。

ロウアは申し訳ないことをしたと思った。


「…ちょっと、彼女に話してみるね。」


ロウアは、シアムの背後にいる少女に話しかけてみることにした。


「…ん?あ、そうなの。」


アルとシアムは、独り言のように誰かと話しているロウアを見るしか無かった。


「…でも、彼女驚いちゃってるよ。」


しばらくして、ロウアが説明を始めた。


「えっとね、あの子は、シアムの妹として生まれる予定だったんだけど、シアムのお母さんの病気で生まれることが出来なかったんだって。

未練が残って天国に帰ることも出来ないで彷徨っていたみたい。

シアムが有名になってきたから少し嫉妬してしまったみたい。」


「は、はい、にゃ…。」


事情が分かったとはいえ、見えない霊体がそばにいるというのでは怖くて仕方が無い。

シアムは不安そうな顔をしていた。


(今度は妹…。)


ロウアは霊体の少女と話をしながら、シアムの未来世である良子のことを思い出していた。


(あの時は本人が生まれることが出来なかったんだよなぁ。)


(イケガミ、どう思うんだよ。)


魂のロウアは、ロウアからシアムの未来世の事は聞いていたのだが、この少女の霊体についてはよく分からないと思った。


(う~ん、何か意味があるような気もするけど、今は分からないなぁ。)


(どするん?シアムが怖がってるぜ?)


(そうだね…。)


シアムは黙って下を向いて、怖がっていた。


「だから、生まれたくて仕方が無かったって事?」


アルがロウアの補足をした。


「そうみたい。」


「…私、どうしたら…。」


「大丈夫だよ。待ってね。」


ロウアはシアムの不安を取り除くのと、少女を天国に導くため、両手で文字を空中に切った。


<<導きのコトダマ タタヤユ・キ・ヤッ!>>


「キターッ!イケガミの必殺技っ!!」


「…まぶしい、にゃ…。」


すると天井から光がシアムの後ろに差し、一人の少女が天に導かれていった。

ロウアは導きを終えた。


「これで大丈夫だよ。

彼女は天国に戻っていたよ。

というか必殺技って…、誰かを殺すような技じゃ無いんだけど…。」


「じゃあ、アレは何なのさ…。」


アルはロウアの使うコトダマを説明しろと迫った。


「霊力と言葉の力を使った…魔法というか、魔術というか、超能力というか…、技というか…。」


「やっぱり、技なんじゃないかぁ。」


「技というか、何というか…。」


「何だよぉ…。はっきりしないなぁ。」


(あははっ!アルは俺と同じ意見だな。)


(……ちぇ。)


アルとロウアがコトダマについて話していると、少女についてシアムが質問をしてきた。


「イケガミ兄さん、でも、どうしてあの子は私のところに?」


「それは分からないなぁ…。。

今までもいたと思うけどね…。

でも、もう大丈夫だから。」


「う、うん…。

ありがとう、イケガミ兄さん…。」


「ありがと、イケガミ。」


「僕の仕事だからねっ!」


「シアム、良かったね。」


「うんっ!」


「今日は不安だろうから、久々にシアムの家に泊まろうかなぁ。」


「うん、うんっ!!ありがとうっ!」


「本当は私よりも"イケガミ兄さん"の方が嬉しいんじゃ?ニヤニヤ…。」


「(カ~ッ)アルちゃんっ!!にゃ、にゃにを言っているのにゃっ!!」


「あぁ、猫語になったっ!

少し元気になったかなぁ。

それにしても分かりやすい。」


「にゃん…。」


ロウアは、少し考え事をしていた。


(さっきの子、本当に天国に戻れたのかなぁ…。)


(ん?何でだよ?お前の魔法で助けてやったんだろ?)


(よく分からないけど、胸騒ぎがするんだよね。)


(気にしすぎだぜ。さっき、あの世の光に包まれていたのを俺も見たぜ?)


(そうだけど…。)


「…ガミ…?イケガミ…?お~いっ!」


「……。」


「お~いっ!」


「……えっ?」


「今の話聞いていなかったのか。」


「え?何?ごめん…。」


「シアムがね…。」


「アルちゃんっ!!」


「…モゴモゴ。」


シアムが急いでアルの口を押さえるが、ロウアは意味が分からなかった。


「え、えへへ、イケガミ兄さん、何でも無いですっ!

ロウア君と話をしていたんだよねっ!」


「あ、あぁ、そう…、何かごめん…。」


口を押さえられてアルが怒っているが、ロウアはこれ以上何も突っ込まなかった。


「シアムったらっ!…ま、良いけどさぁ~。」


「帰ろうよ、ねっ?」


「そだね。帰ろっか。」


シアムの体調も問題無いと医療ロネントが判断していたのでシアムは退院となった。

アルはシアムと一緒にシアムの家に向かった。


だが、シアムは妹として生まれたかったという少女の声が未だ残っていた。


「お姉…ちゃん…、私…、生まれたかった…。どうして…、お姉ちゃんだけ…。

お母さんを独り占め…して…ずるいよぅ…。。

ずるいよぅ、ずるいよぅ…。」


"ずるい"という言葉が頭の中でこだまするように聞こえていた。


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