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ハイタッチ~私とバンド活動しませんか?  作者: 一ノ瀬 和人
結成 そのバンドの名は‥‥‥‥
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早く始めてください

 拓海は周りを見渡し、全員が首を縦に振ったのを確認した。

 全員の演奏準備が完了したことを確認して、拓海は一息つく。

 拓海はこの時、このみ達と過ごした夏休み中のことを思い出していた。

 新しくバンドメンバーに入った剛や悠馬達のこと、孝明や真里菜と本当の意味で関係が修復したこと。

 そしてこのみや古川とは合宿等を通して今まで以上に仲が深まったこと、その全てのことに関して拓海は全員に感謝をしている。

 だからこそ、このステージの演奏を成功させたい。

 自分の我侭に付き合ってくれたバンドメンバー4人だけではなく、今まで加藤拓海という人間と関わってくれた人達にこの演奏を届けたかった。


『拓海先輩、ぼーっとしてないで早く始めてください』

「わかってるから、マイクを通して余計なことを言うなよ」


 このみの話を聞いて、観客達がドッと笑う。

 特に前方で見ている観客の笑い声が当たり一面に轟いていた。

 原因としてはこのみのマイクだけでなく、拓海自身の声も前方の人達に届いていたのだと拓海は思う。

 自分がやらかした失態を恥ずかしく思いながら、拓海は気を取り直してギターを構えることにした。


1(ワン)2(ツー)1(ワン)2(ツー)3(スリー)4(フォー)


 合図を言い終えると、拓海はギターを鳴らし自分のソロパートを弾き始める。

 合宿前不調だった時のようなミスを今の拓海はしない。

 序盤の演奏である拓海のソロパートと同時に、このみも歌い始めるのだった。


『あんなんでこんなんで――――――――――――どうしたら――――――――――――』


 序盤の拓海のソロが終わった所で、剛達もそれぞれのパートを演奏していく。

 剛達の演奏も完璧に近い出来となっており、各自が練習通りの成果が出ていた。


『逃げていく―――――――――ふいて―――――――――』


 そしてサビに入り、拓海も他の楽器に負けないようにギターを弾いていく。

 特に古川の演奏だけでなく、このみの歌にも負けないように頑張る拓海。

 演奏というよりはそれは戦いに近く、先頭を走る2人に拓海は負けたくなかった。


『――――――――――――ないんだ』


 1番のサビが終わり曲が2番に入っていく。拓海が問題視していた所は2番が終わった後の間奏部分。

 そこが練習の時は上手く弾けなくて拓海が悩んでいた所であり、唯一この演奏で不安に思っていたところでもある。

 このみの方をチラッと見ると歌い終わりの間奏の所で、手拍子を求める動きをする。

 それに呼応してお客さん達も一緒に手拍子をしてくれていた。

 観客の手拍子が拓海にとって力となり、必死に両手を動かしていく。

 なんとかその部分を無事に乗り切ると、再びこのみの歌が入る。


『太陽が笑う――――――――――――涙を拭いて――――――――――――』


 サビの終盤に入りそこまでをこのみが歌い終わると、再び間奏に入る。

 間奏に入った所で、今までステージの中央で歌っていたこのみが突如拓海の所に歩いてくる。

 そして拓海の隣に立つと拓海の顔を見て笑顔を見せるが、演奏に必死な拓海はそれ所ではない。

 この時拓海が思ったことはただ1つ、曲が終わったらこのみに一言文句を言ってやろうと思った。


『君だって僕だって―――――――――誰だってそれだって―――――――――』


 歌っている最中、拓海の隣でリズムを取りながら歌い続けているこのみ。

 その歌は拓海のリズムを取っているように見えて、非常に頼もしい。

 改めて拓海はこのみの歌の上手さに驚く。それと同時にこのみの歌の上手さに助けられている部分もあると拓海は思った。


『――――――――――――今日は晴天です』



 曲が終わるのと同時に観客席が湧くのが拓海にはわかる。

 それと同時に自分達の演奏が成功したことを拓海は実感する。

 拍手をしてくれるお客さんには頭が下がる思いだが、拓海にはほっとする前にすることがある。

 自分の目の前でうれしそうに顔をほころばせ、観客席に手を振っているこのみ。

 そのこのみに対して、何故自分の所に来たのか注意をしなくてはならない。

 そうして拓海は先程ギターを弾いていた右手を離し、このみの肩に手を伸ばすのであった。

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