そんなにせかさなくても
「拓海先輩、こっちのお店に行きましょう」
「このみ、そんなに服を引っ張るなって」
ショッピングモールに着くとこのみに連れられ、近くの洋服屋に連れられる拓海。
剛達をショッピングモールの入り口に置いていき、このみは拓海を洋服屋の中に連れて行かれる。
店の中に入るとこのみが色々と拓海の服を選び始めた。
「ちょっと、このみ。そんなにせかさなくても、ゆっくり見ればいいじゃん」
「ダメですよ。早く買わないとと売り切れてしまいます」
「売り切れるって、そんな在庫が少ないお店なんて普通に考えてないから」
「それより拓海先輩、このお店って結構色々な服が揃ってるんですよ。これとか拓海先輩に似合ってると思うんですが、どうですか?」
このみが拓海に渡したのはUネックのカットソー。
紺の色がを渡してくる所にこのみのこだわりが見られる。
渡されたカットソーを持ち、意外と服のセンスがいいなと拓海は思う。
「これ、結構いいな‥‥‥‥じゃなくて、剛達を置いていってどうするんだよ?」
「大丈夫ですよ。きっとすぐ追いついてきます」
「追いついてきますって、俺達の居場所なんてわかるわけないだろ?」
「大丈夫です。剛さんはきっとこういう時は目ざとく人を見つけますから」
「さすがの剛でも、無理があるだろう」
「拓海達いた。お前ら勝手な行動するなよ」
「このみの言う通りだ」
店の入り口付近であちこち見回していた剛が、拓海達の下へと来る。
後ろには悠馬と古川と篠塚の3人が連れ添って歩いてくる。
「おいこのみ、お前勝手に拓海をつれてどこかへ行くなよ」
「別にいいじゃないですか。今日は元々あたしと拓海先輩で出かける予定だったんですから」
相変わらず剛に対しては強気のこのみ。
剛もこのみには弱いようで、口をつぐみ何も言えないようだった。
「このみちゃん、みんなで今日は皆で楽しく拓海君をコーディネートしようって話だったよね?」
「そうですけど」
「ならさ、このみちゃんが拓海君を連れて1人で行動しちゃダメだとは思わない?」
「すいません」
笑顔でこのみに注意する古川を見て、拓海は古川だけは怒らすのをやめようと誓った。
それぐらい笑顔で注意する古川は恐ろしい。
「剛君も。このみちゃんが謝ってくれたんだから、もうこの話はいいよね?」
「おっ、おぅ。俺もそこまで怒ってなかったしな」
「じゃあこれで、この問題は終わりだね」
「そういえば、悠馬は? あいつ一体どこ行ったんだよ」
「そういえば姿が見えませんね。先程まで古川さんの隣にいたんですけど」
「あ~~いたいた。ねぇ、これどう? この黄緑のシャツ、拓海に似合わない?」
シャツのコーナーから戻って来た悠馬が持ってきたのは黄緑の半そでシャツ。
笑顔でそのシャツを持ってくる悠馬に対して、マイペース過ぎではないかとため息をつく拓海。
ため息をつくのは拓海だけではないようで、剛とこのみの2人も拓海と同じようにため息をついていた。
「あれ? どうしたの? 俺なんか間違ったこと言った?」
「剛、悠馬君っていつもこうなの?」
「中学時代はこうだったよ。あまり気にしないでくれ」
「悠馬さん、その服のチョイスすごくいいと思います」
「でしょでしょ。あっちにジーンズともあるから、拓海に似合うのがないかちょっと見てくるわ」
そう言うと悠馬は再び奥のほうにあるジーンズの売り場の方へと行ってしまう。
それを呆然とした姿で見ている拓海だった。
「悠馬さんって意外とノリノリなんですね」
「そうだな。何かこのみと相性がよさそう」
「相性だなんて、拓海先輩もいいますね」
「悪いが、このみのことなんて全く褒めてないからな」
照れるこのみに対して、容赦なく拓海はツッコミを入れる。
そんなことをしていた拓海だったが、横にいた古川と篠塚がいない事に気づいた。
「あれ? 陽一君と愛梨ちゃんは?」
「陽一達なら、あそこにいるよ」
「あそこ?」
剛が指差す先には古川と篠塚の2人我が服を色々と見ていた。
2人が真剣にTシャツを選び口論する姿を見ると、悠馬のことにあきれていた自分自身がバカらしくなる拓海だった。
「陽一君と愛梨ちゃんまで」
「拓海君、この白いTシャツとかいいと思うんだけど?」
「こっちの赤いシャツも拓海さんに似合うと思いますから、是非試着してみてください」
2人が見せてくるTシャツを前にしてどちらを選ぼうか拓海は悩んでしまう。
どちらの服もセンスがよく、拓海には選ぶことが出来なかった。
「古川さん、それだけだとちょっと地味すぎませんか? 愛梨先輩の方があたしはいいです」
「じゃあこっちにあるネックレスを付けてみたらどうかな? これと合わせると少しだけ派手になるよ」
「そっちを選ぶのなら、こっちのアクセサリーの方が合ってると思うんですけど」
「私はこっちの方がいいと思うんですけど」
古川と篠塚の話にこのみも加わり、本格的な拓海の服探しが始まっているようだった。
既に入り口の前にいるのは拓海と剛だけで、他の面子は全員あちらこちらに散らばっている。
拓海がため息をつくと優しく拓海の肩を叩く。
「剛?」
「まぁ、なんだ。お前も大変なんだな」
「本当だよ」
この後、拓海はこのみ達に着せ替え人形のように色々な服を着せられる。
結局この店ではほしいものは見つからず、別の店をはしごするのだった。




