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非常識ですよ

「ねぇ、拓海君。大丈夫だった?」


 小五郎の家で行っている練習の合間の休憩中、古川が拓海にそう訪ねた。

 現在拓海は椅子に座って伸びをして、古川は肩をまわして各自リラックスしている最中。

 古川の会話の内容が音楽室の出来事を指しているのは鈍い拓海にも容易に想像がついた。


「それって音楽室のことだよね?」

「うん、拓海君かなり剛君に責められてたから」

「大丈夫大丈夫。いつものことだから」


 剛が振られるのはいつものことだと拓海は心得ている。

 こんなに激高して拓海に迫る剛を見るのは初めてだったが、それもしょうがないと思う。

 次はなるべく誤解を与えない行動を心がけようと拓海は思った。


「それにしてもあの人本当に失礼でしたよね」


 タオルを首かけているこのみも拓海と古川の話に加わる。

 拓海は剛の話よりも右手に持っているアイスに目がいった。


「それよりこのみ、何でアイスなんか持ってるの?」

「それはリビングの冷蔵庫に入ってたからですよ」


 なんでもないようにこのみは言う。

 人の家の冷蔵庫を勝手にあさって怒られないかと思ったが、ここはこのみの親族の家であることを思い出す拓海。

 古川はそのアイスをものほしそうな目で見ていた。


「このみちゃん、僕達の分のアイスは?」

「ないですよ。だってこれが最後の1本ですから」


 ガクッと肩を落とす古川。このみは古川の様子など気にせず笑顔でアイスを食べている。

 その様子を見て、いつも通りの光景だなと拓海は思った。


「それよりも剛さんです。わざわざ拓海先輩に文句をいいに来るなんて非常識ですよ」

「今回は剛じゃなくて、永森君の方が問題だと思うんだけどな」

「永森君? 誰? それ?」

「あたし達が愛梨先輩と会った時ちゃらちゃらしてた人です。古川さん言ってたじゃないですか。『僕、あの人のこと苦手かも』って」

「思い出した。あの黒い女の子と一緒にいた人か」


 光の表現の仕方に若干違和感を覚える拓海。

 古川の言う通りなのだが、その呼び方でいいのか悩んでしまう。

 このみが頷いてることから、古川との間で共通認識が生まれているようなのでその解釈を訂正しない事にした拓海。

 実際顔を合わせた時に誤解を解けばいいかと、問題を先送りにするのだった。


「それで、拓海先輩はあの人のせいだと思うんですか?」

「うん。元々剛って振られるとすぐ落ち込むんだけど、こうやって人に逆切れすることってないから」


 それは高校に入学してから過去何度も剛のことを慰めてきた拓海だからこそ知りえる事実だった。

 あそこまで剛が人に八つ当たりする原因は永森にある。拓海はそう思っていた。


「そうなんだ」

「拓海先輩はその永森って人のこと、知ってるんですか?」

「俺もよく知らないんだよ。あの時初めて会ったから」

「拓海先輩、よくそんな人と一緒に行動できましたね? 感心します」

「しょうがないだろ? 剛の知り合いだっていうんだから」


 だから仲良く話していただけである。

 実際永森は光と殆ど話していたため、拓海はあんまり永森と話せていない。

 そのため、いまだに永森の人となりはわかずじまいの拓海だった。


「つまり、拓海先輩は今回の元凶はあの永森って人だと思うんですね?」

「うん。たぶん何か都合が悪いことがあって、それを隠すために俺に剛の怒りの矛先を向けてきたんだと思うけど」

「都合の悪いことって何だろう?」

「それがわかったら苦労しないんだけどな」


 いくら考えても拓海はその都合が悪いことが何なのかはわからない。

 このみと古川も同じようなことを考えていたが、誰もその結論にはたどり着かなかった。


「とりあえず今は剛の誤解も解けたし、自分達のことに集中しよう」

「そうだね。わからないことを考えても仕方がないし」

「永森さんにはあたしも注意しようと思います」


 それぞれがそれぞれの決意を胸に秘めていると、小五郎が音楽スペースへと戻ってくる。

 小五郎はため息をついてがっくりとした様子であった。


「小五郎さん、どうしたんですか?」

「実はわしが冷凍庫に入れていたアイスがなくなっててな」

「アイス?」

「このみちゃん」

「古川さん」


 小五郎がこのみの右手に持っているアイスの棒に目をやる。

 慌てて隠そうとしていたがとき既に遅し。

 小五郎がこのみのことをじっと見ていた。


「このみ、いつの間に人の家の冷凍庫を勝手に開けたんだ」

「だってここはおじいちゃんの家だから、これぐらい許してくれると思って」

「罰としてコンビニでわしのアイスを買ってきなさい。もちろん拓海君と古川君の分もだ」

「あたしの分は?」

「今食べただろう? それで充分じゃないか」

「そんな~~」


 このみが悲鳴をあげる中、拓海と古川はその様子を見て笑っていた。

 この後このみが小五郎からお駄賃をもらい4人分のアイスを買ってくる。

 帰ってきたこのみは「自分の分は自分で買いました」という不機嫌な声を共に、買ってきたアイスを食べ始める。

 拓海達は小五郎からもらったアイスを食べ、練習を再開するのだった。


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