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大丈夫だって

 拓海達が約30分間電車に揺られてやってきたのはショッピングモールのある最寄り駅。

 電車に乗っている間は永森が話を盛り上げてくれたおかげで、拓海はその場でただ笑っているだけでよかった。

 剛も殆ど話すことなく主に永森と光、時々山口が会話に入る程度だったので、口を閉ざして愛想笑いをする剛のことが少しだけ心配になる拓海だった。


「とりあえずまずはショッピングモールに行こう。映画ももうすぐ始まるから」

「剛、ちょっと聞きたいことがあるんだけど?」


 周りに聞こえないように剛の方へと歩いていき、耳元で小声で話すとムッとした剛が拓海の方を向く。

 しかしそれよりも拓海は映画のチケットを予約したのかが気になっていた。

 以前拓海は剛にチケットの予約を取るように念押しをして話し、当日券は取るのが難しいということも言った。

 仮に取ってなかったとするとこの後の予定がかなり怪しくなる。そのあたりを拓海は心配していた。


「何だよ、拓海」

「何だよじゃないよ。映画のチケットは取ったの? この前俺、予約取るように言ったけど」

「予約はしてない。これからだよ」

「大丈夫なの? 今日は休みだから当日券取れるかわからないよ」

「大丈夫だって。心配するな」


 剛はそう言うが一抹の不安を拓海は隠し切れない。

 事前に映画の情報を仕入れたが、拓海達が見る映画は上映が始まったばかりの人気の映画でもある。

 それほど人気の映画なので、早くから行ったとしてもチケットが取れると拓海は思わなかった。


「2人共、何を話してるの?」

「山口さん?」

「山口さん、何でもないから。それよりも早く映画に行こう」


 剛がそういうと先頭をきって歩き始める。

 山口達もその後ろについていき、剛のことを心配しつつ拓海もその後に続く。

 ショッピングモール内にある映画館のチケット売り場にたどり着きチケットを買おうとした時、拓海の想像通りの問題が起きた。


「えっ? 6人がけの席はないんですか?」

「申し訳ありません。次の時間は1人席ならあるのですが、6人席はないんです」

「じゃあ次の上映は?」

「申し訳ありません。6人並んで座れる所は今日はありませんね。全部予約で埋まっています」

「そんな」


 拓海としては当たり前だと言いたかったが、周りに人がいる手前何もいえない。

 剛がおろおろする中、永森が剛の横からひょいと顔を覗かせた。


「お姉さん、2人席は残ってるんですか?」

「申し訳ありません。次の上映ではありません」

「じゃあその次はどうですか? できれば2人席が3つあればうれしいんですけど」

「それならあると思います。そちらでも宜しいですか?」

「はい、みんなもそれでいい?」

「私は大丈夫」

「うちも」

「私も大丈夫です」

「じゃあ、とりあえずそうしようか」


 カウンターにいる剛に永森は何かを話しながら、2人で人数分のチケットを買っていた。

 その後4人は映画の料金を2人に払い、一旦映画館を離れる。

 その間永森と剛は並んで歩き、拓海には内緒で何かを話しているように見えた。


「じゃあこれからどうする? 午後からだから2時間ぐらい空くよね?」

「それならゲームセンターに行かない? 俺光ちゃん達とゲームしたいな」

「いいね。うちもそれ賛成」

「じゃあ早く行こう。俺もやりたいしさ」


 光の腕を取り永森はゲームセンターの方へと歩いていく。

 女の子の腕を自然に取るその光景を見て、よくそんなことが出来るなと思う拓海。

 自分がもし同じことをこのみにしたら、目を吊り上げたこのみが激高し往復ビンタされる所まで想像がついた。


「何でこんな時にこのみが出て来るんだよ」

「拓海さん、どうかしましたか?」

「いや、なんでもないよ。こっちの話」


 頭を左右に振り、雑念を払う拓海。

 ふと前の方を見ると剛と山口の話し声が聞こえてきた。


「光達行っちゃったし、私達も行こうか」

「そうだな。せっかくだからさ、俺も手をつないでいい?」

「う~~ん、それぐらいならいいよ」

「ありがとう。じゃあ行こう」


 山口から許可をもらい、喜ぶ剛。その光景を山口はしょうがないなといった視線で見ている。

 ぎこちなく手をつなぐ2人を見ながら、拓海と篠塚の2人はその場に呆然と立っていた。


「ここで突っ立っててもあれだし、俺達もゲームセンターに行こう」

「そうですね。行きましょう。あの‥‥‥‥」

「どうしたの? 篠塚さん」


 篠塚は拓海に何かを言いたそうにしていた。

 それは篠塚の様子を見ていれば拓海にもわかる。

 だが、何をいいたいかまではわからず篠塚の言葉を待つしかなかった。


「いえ、なんでもないです。気にしないで下さい」

「そう? 言いたいことがあるなら言った方がいいと思うけど」

「大丈夫です。気にしないで下さい」


 そこまで強く言われると拓海にはどうすることも出来ない。

 篠塚が何か言ってくれるまで待つしかなかった。


「わかった。だけど、言いたくなったら遠慮なく言って。俺に出来ることがあるかもしれないから」

「わかりました」

「じゃあ行こうか。剛達ももう中に入っちゃったし」

「はい」


 それから2人も剛達の後に続くようにゲームセンターへと向かう。

 ゲームセンターへと向かう拓海と篠塚の手は剛達とは違い、つながれていなかった。


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