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ハンバーグが食べたいです

 翌週の月曜日、学校の授業が終わると拓海は帰りの準備を始める。

 今週からテスト返しということもあり授業も午前中に終わるので、拓海としても早く学校を出て小五郎の家へと行きたかった。

 そんなことを考えていた拓海の前に剛が現れる。

 なんとなく用件がわかっていたので、拓海は無視をして帰りの準備を進めることにした。


「拓海、今日は暇か?」

「ごめん、ちょっと用があるから無理」


 いつもの調子で拓海に話し掛ける剛。

 拓海の断りの言葉を聞くと剛はすぐに不満そうな顔をした。


「最近拓海付き合い悪いよな」

「ちょっと最近忙しいから。悪い」

「まぁ、週末空いてるなら別に俺はいいんだけどさ」


 剛はそういうとつまらなそうにクラスの後ろの方へと歩いていき、別の友人に話しかけていた。

 拓海は悪いと思いつつも鞄を持ち、このみの待つ昇降口へと早足で向かう。

 昇降口へ行くとそこには退屈そうにスマホをいじるこのみがいた。


「ごめん、このみ。待った」

「別に待ってませんよ。それよりもお腹が減りましたね。あたしの気分的にはハンバーグがものすごく食べたいです」

「おごらないよ、おごらないぞ、おごらないからな」

「三段活用で否定しないで下さい」


 不機嫌に頬を膨らませるこのみに対して、予め釘を刺しておく。

 今日のお昼ご飯をおごると拓海は今度の週末剛達と遊びに行けなくなる。

 そのため、さすがに今日はお昼ご飯をこのみにおごるわけにはいかなかった。


「でもハンバーグを食べれる所なんて、ファミレスしかないよ」

「だからいつもの所に行きましょうよ。またデラックスショコラパフェも一緒に食べたいです」

「おい、このみ。本当に俺におごらせるわけじゃないよな?」

「大丈夫です。実はおじいちゃんから拓海先輩とお昼食べるって言ったらお金をくれたので」


 笑顔で財布から万札を見せるこのみに対して、拓海はため息をつく。

 現金よりも食欲の方がこのみには優先なのだと思う拓海。

 このみの様子を見て、彼女の頭の中はお昼ご飯を食べた後、すぐに夕食のことを考えているのではないかとさえ思った。


「なら大丈夫か。今日は持ち合わせがあまりないから正直助かった」

「ついでにいいますと、拓海先輩の分も入ってますので。古川さんと3人で食べてきてくださいって、おじいちゃんが言ってました」

「小五郎さん」


 小五郎がこのみにお金を渡した時のことを思うと申し訳ない気持ちになる拓海。

 今日小五郎の家で会った時、素直にお礼を言おうと思うのであった。


「後でこのみのおじいちゃんにお礼を言わないとな」

「はい」

「とりあえず自転車置き場に行こうか。自転車を取ってこないとファミレスにすらいけないし」

「そうですね。それでは早速行きましょう」


 拓海はこのみをつれて自転車置き場へと向かう。

 自転車置き場から自転車を持ってきた2人はそのまま正門の方ではなく、裏門の方へと向かっていった。

 既に校庭では部活を行っている所もあり、歩いている途中に何人かの生徒ともすれ違う。

 暗く普段は誰も使用しない裏門に近づくにつれ、このみの表情が険しくなっていった。


「拓海先輩、こっちは正門じゃないですよ。何で裏門に行くんですか?」

「行けばわかるから。とにかく今は俺についてきて」

「えっ?」


 眉間に皺を寄せるこのみを薄暗い雰囲気の裏門まで誘導すると、そこには確かに古川が立っていた。

 周りをきょろきょろと見回しており、制服を着ていなければ不審者に間違えられてもおかしくはない。

 いまだに辺りを見回し、まるで誰かに見つからないように警戒しているようにも見えた。


「ごめん、少し遅れて」

「拓海君。こっちこそ場所を急に変更しちゃってごめん」

「いや、別に。正門も裏門も対して距離は変わらないし」


 古川の言う通り裏門には殆ど人がこないが、正門に行くのと距離は大して変わらない。

 なんとなく古川自身のことを理解してきた拓海は、何故古川がここを選んだのかその気持ちもよくわかった。


「古川さんは何で裏門にしたんですか? 正門から堂々と帰ればいいのに」

「それは莉緒の奴がいるからだよ」

「莉緒先輩ですか?」

「このみ、本田さんは何部に所属してると思う?」

「確かサッカー部のマネージャーを‥‥‥‥あっ、わかりました。グラウンドでサッカー部が練習を始めていたからこっちに場所を変更したんですね」

「そう、サッカー部が外で練習してたからこっちに場所を変更したんだよ。本田莉緒と会わないために」

「うん。さっき莉緒がグラウンドでサッカー部の練習を見てたから、人通りの少ないこっちにしてもらったんだ」


 古川が本田莉緒のことを避けていることは知っていたので、サッカー部が外にいる時点でこちらに場所が変更になることは大体予想できた。

 誤解は解けたというのに、相変わらずこのみは不機嫌そうな表情を崩さないでいる。


「だからごめんね、橘さん。いきなり裏門に場所を変更しちゃって」

「そんなことどうでもいいんです。このみはお腹が空いたので早くハンバーグが食べたいです」

「こらこのみ。古川君の要望もちゃんと聞かないとだめだろ」

「ハンバーグなら僕いいお店知ってるんだけど、そこに行かない?」

「いいの? このみの我侭に付き合ってもらわなくても今日は古川君の食べたいものでいいけど?」

「僕は元々何でもよかったから。拓海君達が食べたいものでいいよ。それよりも案内するから僕についてきて」

「わかった。このみもそれでいいよね?」

「はい。ハンバーグが食べられるならこのみはどこでもいいです」


 このみの承諾を貰い、古川と一緒にハンバーグがおいしいというお店へと向かう。

 古川が自転車を持っていないということで、拓海達はその道中歩いてそのお店に向かうことになるのだった。


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