やっぱり優美は疫病神
「不公平なんかじゃありませんっ!」
そんな反論をしてきたのは、向こう側の当事者である山内千代だった。
それにしても、随分と興奮しているようだ。
つまり、それだけのことあるってことか。
「千代ちゃん、ちょっと、落ち着いて。
先輩達に失礼だよ」
「あ、ごめんなさい。つい。
だって、あいつら、顧問の推薦が有るんですよ。卑怯じゃないですかっ」
なるほど、顧問主導というわけか。主動ならまだやりようはあるんだろうけど、どうなんだろうか?
「なんか、また純くんが解かんないこと言ってる…」
あ、どうやら、独り言が聞こえていたらしい。
「また、いつものことでしょ。
なんであんな言い方するのかしらねぇ、本当。
まあ、通訳すると、最初の顧問主導の『シュドウ』ってのは、『主』に『導く』と書く『主導』ね。顧問が中心になって、部を導いているから、部員達もその気になっている状況。結束が強く、隙が無いはずだわ。
で、後の『シュドウ』は『主』に『動く』で『主動』。顧問中心なのは変わらないけど『導く』わけじゃないから、どの程度部員達がその気になってるか判らない状況。場合によっては、つけ入る隙だってあるかもしれないってことよ」
うん、まあ、由希の言うとおりだけど、その棘のある言い方、なんとかならないか?
「でも、それなら、演劇部でも、顧問の推薦もらえば済む話だろ。それじゃ駄目なのか?」
真彦の言うとおりだ。
そうすりゃお互いに対等だ。不公平は生じない。
「それ、顧問にも相談してみたんだけど、難しいみたいでさ。やっぱり学校側としても、実績の有る吹奏楽部の方に勝ってほしいみたいなのよ」
「そうなんです。酷いと思いませんかっ!」
なるほど、事情は解った。
確かに優美の言うとおりだとすると、どう考えても分が悪い。
山内が憤るのも納得だ。
オレ達を、というか、美咲ちゃんと天堂を頼ってくるのもよく判る。
一縷の望みということなのだろう。
でもなぁ…。
やっぱり、オレ達には関係ない話だし、変に関わって、学校側の心証を悪くすべきではないだろう。
ここは、悪いけど断わるべきだな。
「判ったわ。
ここは私達の出番だね。
ね、いいでしょ。天堂くん。純くん」
はあ⁈
「ちょっと待てよ、美咲ちゃん。
状況、判ってる?」
天堂と顔を見合わせる。
やはり、天堂も困惑気味だ。
「判ってる。
要するに、公正であるべき生徒による部活動を、名誉のために私物化する悪い教師に、お仕置きしようって話でしょ?」
おいおい、マジか?
現実、見えてるのかよ。
「ここはやっぱり、『伸張る悪に天の裁きを』ってやつだよね」
あ、駄目だ。多分、なんかの漫画が没入ってる。
「ありがとうっ! やっぱり、流石は花房咲。
頼りになるわ〜っ」
「ありがとうございます、先輩。
これでこちらも百人力。
ううん、一騎当千、万夫不当。
もう絶対負ける気がしません」
「……すみません、先輩。よろしくお願いします」
優美に、山内、金田と続く、肚の内の黒い三連星。
流石は演劇部ってとこか。
……………………。
周囲の沈黙と視線が痛い。
こりゃ、断われる雰囲気じゃないじゃないか。
全く、どうするつもりだよ、美咲ちゃん。
………………。
当の美咲ちゃんは、こっちの方を見て、ただ笑っている。
………………。
「美咲ちゃんが、その気じゃ仕方がないか……」
「うん、そうだね…。まあ、やれるだけやってみようか」
結局、オレも天堂も、この場の雰囲気に押し切られることになってしまった。
はぁ…。
やっぱり、こうなってしまったか…。
本当、優美に関わると陸なことがないや。
※作中のルビには、一般的でない、作者流の当て字が混ざっております。ご注意下さい。




