モブキャラって意外と物語の進行に関与したりするんですよね
本来モブキャラとは物語の内容に影響を与えない背景的キャラクターのことなのですが、ラノベや漫画の影響か最近では影の薄いキャラのことをいうっぽいですね。
因みに語源である英語の『mob』には『野次馬』『無秩序な群衆』『暴徒』といった意味があるそうです。[Google 参考]
「どこが影が薄いんだよ!」「目立ち過ぎだろ!」とツッコミを入れたくなる語源と比べてみると、最早カタカナの『モブ』は和製英語といってよいのかも知れませんね。
三人組の男に絡まれたオレ達はゲームセンターを後にすることにした。
本当ならもう少しいろいろとやりたいことはあったんだけど、再びあいつらと顔を合わせたらと思うと面倒だし仕方がないよな。
時刻はまだ3時近く。
う~ん、これからどうやって過ごそう。
本当に今日のデートは予定が狂い捲りだ。
「あれ? もしかして男鹿先輩じゃないですか?」
「「えっ?」」
突然掛けられた声に思わず間抜けな声を上げてしまったオレと高階。
いや、だって今のオレは化粧をしてる状態だし、それをまさかいきなり正体で呼ばれるなんて思わないだろ?
「やっぱり男鹿先輩だ。
こうして化粧をしてるってことは、もしかして今日はこの近くでライブですか?」
うん、間違いなくこいつはオレを男鹿純と認識して声を掛けてきている。
でもオレの方はこいつに見覚えがないんだよな…。
そいつの容姿は……。
う~ん、ちょっと説明に困るな。
小柄で地味な雰囲気の、なんていうかこうパッとした特徴ってものが無い少年で、強いて挙げるなら特徴の無いのが特徴ってことになるのか?
要するに典型的なモブ、少年Aって言葉の相応しい記憶に残らないタイプなわけで、お陰で誰だか全く思い出せない。
「あの…、もしかして先輩のお知り合いの方ですか?」
脳内の記憶を探るオレに高階が尋ねてくる。
まあそうだろうな。オレに判らないんだから当然高階に判ろうわけもないか。
「ライブとか言ってるしSCHWARZのファンってところかな」
多分そんなところだろう。彼は名もなきSCHWARZのファンAくんだ。
「間違いじゃないですけれど、その言い方は酷いですよ男鹿先輩。
そりゃあ確かに地味で目立たないかも知れないですけど、それでも名もなきモブAはないです」
ヤバ、どうやら例によって本音が口から零れていたようだ。この癖、最近直ってきたかと思ってたんだけどな…。
「いや、悪い。でもどうしても思……。
ああーっ! お、お前っ、黒瀬かっ⁈」
「はあ…。やっと思い出してくれましたか。
そうです。黒瀬です、先輩」
呆れたというよりも諦念の溜め息で応える黒瀬。
でもな──。
「いや、なんていうか、お前の場合女装のときのインパクトってのが強くてな」
そう、女装の華やかな姿のイメージが強過ぎて普段の地味な男のイメージが記憶に残らないんだよな。乖離が極端過ぎだ。
傍らでは高階も思い出したのか申し訳なさそうに……でも黙ってるのな。なんか最近高階が強かになってきてる気がする。
「ああ、それよりもさっきの質問だけど今日はオフだ。そんなわけでせっかくの休みだし偶にはと高階と気晴らしに出歩いてるところだよ」
といっても、これはオレが思い立ってというわけじゃなく高階に誘われてなんだけどな。まあ、高階も美咲ちゃんの促されってことらしいけど。
というわけでこれは周囲に気遣われての休養ってわけだ。
「あっ、そういえば噂になってましたね。男鹿先輩が高階先輩がデートするって」
…こいつもかよ。どんだけ拡がってんだよ、この噂。……って…。
「ちょっと待て。噂ってどの程度拡まってんだ? まさか学校の外までってことは…。
いや、それよりもネットとかで拡散してないだろうなっ⁈」
マスコミとかに知られるのもマズい。香織ちゃんの裁判を抱えてるオレが他の女の子とデートしてるだなんてスキャンダルもいいところだ。
慌てるオレの言葉に高階もおろおろと落ち着きを失くす。事態のヤバさに気づいたようだ。事の発端だけに責任を感じているんだろうな。
「多分大丈夫だと思いますよ。噂といっても学校の中だけみたいなんで。
そりゃあ絶対とは言いきれませんけど、でもその場合もっと騒ぎになっているんじゃありませんか?」
対する黒瀬からは軽い応えが返ってきた。
だがその言葉には納得できる。
黒瀬じゃないけどその場合マスコミが騒がないわけがないし、オレ周囲からも制止が掛かるはずだ。
うん、確かに黒瀬の言うことは理に適っている。
「悪い、高階。今日はここまでだ」
だけど今日のデートは中止だ。
確かに黒瀬の言葉には納得だが、それでも警戒はするべきだろう。今さらな気もしないではないけど…。
「本当にすまない。
オレもよく考えるべきだったんだ。今はこんなことが許される時じゃないって」
そう時期が悪過ぎた。
いや、そもそも香織ちゃんがこんな時にこんなことをするべきじゃなかったんだ。
「……そう…ですね。私もよく考えるべきでした。
先輩とのデートに浮かれ判断を誤った私のミスです」
うっ、しくじった。こんな言い方をすれば高階が自分を責めるのは少し考えれば解ることなのに。
「いや、そんなことないって。だって高階は美咲ちゃんに頼まれてオレを誘ったんだろ、だから高階は悪くない。そんな風に自分を責めないでくれ」
慌てたせいで今度は美咲ちゃんが悪者っぽくなってしまったけど決してそんなことはない。鬱ぎ込むオレを元気づけようとしてのことなんだから誰も悪くなんてないんだ。ただ時期が悪かっただけだ。
「高階としてはせっかくのデートをオレの勝手な都合でキャンセルするわけだから不満があるかも知れないけど、そこは他のことで穴埋めするから我慢してくれないか?」
とはいえやはりなんらかの穴埋めは必要だろう。ただでさえ不義理な真似をしているわけだし、それくらいの誠意はみせないとな。
「解りました。
その代わり、次にお誘いしたときは……期待しても良いですよね」
「ああ、任せとけ。次こそは今日みたいな失敗はしないからさ」
なんとか高階の説得は成功したようだ。
でもこんな時に次のデートの約束ってのは…。
……本当強かになったな高階。
ともかく、今から事務所で今日のデートの影響について調査だ。
面倒なことになってなきゃいいけど…。
※前書き等にある蘊蓄は、あくまでも作者の俄な知識と私見によるものであり、必ずしも正しいものであるとは限りません。ご注意ください。




