リトルキッスと初めてのドラマ撮影 -偶然が結んだ縁-
撮影が始まった。
今のところ順調といっていい。
まずは、高村秀一郎 役の成田隆盛さん。
彼は結構いい人で、オレ達主役の中で最年長ということでか、いろいろと相談にのってくれたりして、頼りになる先輩である。
オレも今ではすっかり仲良くなり『隆さん』なんて呼ばせてもらっている。
次に、美咲ちゃん。
美咲ちゃんは、漫画好きで原作のファンでもあるらしくテンションが高い。
やる気満々なその姿が、周りの士気をも高めるといった、そんな相乗効果が現れている。
そして、天堂。
なんなんだこいつは。
オーディション以来、何気にハイスペックなやつだと思っていたが、それがここでも発揮された。
与えられた役を、実に見事に熟すのである。
ただ、その役に成りきっているのか、それとも、もともとのせいなのか、本番以外でもやたらとオレに絡んできて、なんとも鬱陶しいのが難なんだが。
いや、洒落じゃなくって。
問題は、千鶴さんだ。
但し、オレにとってだが。
何が問題かと言えば、ひとつは新曲の件。
以前の曲がヒットしたせいか、それに味を占めてしまったようで、また新たに曲をと言ってくるのだ。
そして、もうひとつ。
今の話に協力すれば、オレ『早乙女純』と『JUN』の間を取り持ってやるとか。暇さえ有れば、そんなことを言ってくるのだ。
当然、否定をしてるのだが、素直になれだのなんだのと。
だから、素直に嫌だと言っているってのに。
だが、それでも撮影は順調なのだ。
いや、この言い方だと誤解が有るか。
単にオレの心の問題だし、ってこの言い方も大袈裟か。つまり、その程度の問題しか無いってことだ。
撮影は進む。
エキストラとなってくれたこの学校の生徒達も協力的だ。
その中心はこの学校の演劇部。
その中に見た顔があった。
えっ、みさ姉?
オレの従姉妹の男鹿操(高校二年生)だった。
こっちの方の学校と聞いていたけど、まさかこの学校で、しかもエキストラとして会うことになるとは思いもよらなかった。
みさ姉達、演劇部の面々は、出番の地味なエキストラながらも、その演技は真剣で、熱の入ったものだった。
ただの通行人とかその程度の役だというのに。
特に、みさ姉の意気込みは、オレから見れば異常だ。
美咲ちゃんが尋ねてみると、
「うちの従兄弟に、芸能界入りするのがいたり、アイドルが友達だってのがいたりで、結構身近に思えて。
だったら、私にだってチャンスは有る。っていうか、今がそのチャンスでしょ。
だったら熱が入るのも当然ってものよ」
だとか。
そうやって監督だとかにアピールしたいらしい。
外から見れば簡単そうだが、入ってみると結構大変なんだぞ。知らないから言えるだけだ。
日々、美咲ちゃんを見ていれば、よく理解出来るってものだ。
まぁ、気持ちは解らないでもないが。
「ええっ⁈ そ、それって…、もしかして純くんとお兄さん?」
「操さん。その従兄弟って、もしかすると純って名前じゃないですか?」
「そういえば、あの子の名前も男鹿だったわね」
美咲ちゃん、天堂に千鶴さん。どうやら、オレ達の関係に気づいたようだ。まぁ、当然といえば当然か。
「へ? なんで咲ちゃん達が純のこと知ってるの?」
一方、みさ姉は気づいていない。
「そりゃ、今、千鶴さんが言ったように、名字が同じ“男鹿”だし」
「えぇ〜〜〜っ!」
オレの説明で、ようやく理解をしたみさ姉。
「へぇ、そんな偶然って本当にあるんだ」
というわけで、隆さんの言う偶然が結んだ縁により、美咲ちゃん達(早乙女純を含む)とみさ姉は親交を持つこととなったのだった。




