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02

  ◇◇


 学校でもプールが始まった。

 子どもらはほとんどがプール大好きのようで、ととも朝の会で

「きょういちばんたのしみなこと」を発表する時に、自分から手を挙げて(普段は進んで発表なぞしないらしいが)、迷わず、「プール」の写真を指したのだと。

 その時ついでにナイスにカットされた髪を自ら指差し、「まま」に切ってもらったとアピールしたそうな。

 前の晩、暴れるととをひっ捕まえて、汗水たらしてようやくカットした髪。かなり斬新な出来ではあった。誰がみても「店の仕業ではない」と判る髪型ではあったが、まさか本人にチクられるとは……

 だんだん話が通じるようになってきて、逆に油断禁物だと思い知るヨシコであった。


 ◇◇


 お家でも庭プール解禁。


 下二人は早速着替えているが、長男はふん、と鼻を鳴らしてからプールには見向きもせず、玄関先で買物かごを伏せてそれを机に、靴をはいたまま、しかもサングラスという格好で漢字の書き取り。

 ようやくそんな幼児的遊びを卒業したのかと思いきや……

 この日は地元のお祭りで、昼打ち花火が1時間に1度鳴っており、しかもたまーに『パラシュート』が出て来るらしく、子どもは――まあ、地元ではコイツくらいだが――それが楽しみで朝からそわそわしていたのです。

 朝6時の一番花火が鳴った瞬間飛び起き、10秒後には表に飛び出していたし。

 ついには玄関先で宿題、というはめに。

 なぜサングラス? とヨシコが訊くと、仰向けで探すとまぶしいから、と。素晴らしい。


 そんな兄を横目で見ながら、とと、とと妹はひんやりプールでまったり。しばらく自分たちが浸ってから、今度は釣りなぞ。

 白色トレイを切り抜いた魚の口にクリップをはさみ、磁石を下げた釣竿を使い、のんびりと、しかししつこく遊んでおりました。


 ◇◇

 

 ヨシコの所に、手紙を書いてもってきたとと。

 ゼスチャーで、読めと言っているので拡げたらこうあった。

『おあけま ほんとひ』

「ほんとひ?」と尋ねたら、彼はうんうん、とうなずいてから去っていった。

 だから何だ~?? ヨシコはその後ろ姿に叫んだけど返事はなかったり何だり。


挿絵(By みてみん)

◇◇


 夏のある日、珍しくケイちゃんがとと寝かしつけ係となる。

 一緒に寝室に入ってからだいぶ経ってケイちゃん、なぜか無言で大笑い、腹をかかえて部屋から出てきた。

 何かと思えば。

 ととがようやく眠りについたのでケイちゃん、そっと起き上がったのだが、その拍子に「ごほっ」と咳が出てしまったのだと。

 すると、寝ているはずのととが目をつぶったまま、右手人差し指をゆっくりと口のところまで持ってきて一瞬、

「しっ、ご静粛に」

 のポーズでとまり、それからおもむろに手を脇に戻したのだと。

「はじめ、起きちゃったのかと思ってよく見たけど寝てるし、試しにもう1度咳払いしたらさ……」

 そしたらまた、右手人差し指をゆっくりと口に持ってきてまたゆっくりと戻したそうな。

 その後ヨシコがそっと見に行ったが、やはりととは熟睡の様子。

 いつも「うるさい」「しずかに」と言われているとと、こんなところで反動が出るとは。

 まあ、明日も楽しく遊んでください、とヨシコはそっと部屋を後にした。


 ◇◇


 夏休みもラストスパート。あまりにも宿題とか勉強とかしていない、とあせるヨシコ、

『くもんの小学ドリル 1年生のひらがな』を買ってみた。今さら。

 ととは喜んでやっている。

 しかし、ヨシコから指導を受ける段になると、激しく怒る。そして勝手な自主学習モードに。


『ゆび』と書くべき2マスには何を思ったか『おめ』と。

 指名と考えれば確かに間違ってはいないが……態度デカすぎでは??

 そしてかわいい『ひよこ』の、空いているまん中1マスに『ん』。ヨシコ悶絶。


 ひんことは? 一体どんな動物なんだ、ひんこ。


 やる気と正しい理解との間にはマリワナ海溝並の溝が。

 夏の終わり、ヨシコはひらがなことばのヘビー級パンチを食らいまくっていた。


挿絵(By みてみん)

 ◇◇


 新学期を前に心機一転!と思いヨシコは髪を切る、と言っても己のではなく、子どもの。

 先日の失敗もものともせず、ヨシコは果敢にもまた子どもの髪にいどむ。

 やっぱりお金が浮くのが一番の魅力ですから。


 ととを座らせ、タオルとビニルのケープを巻き付けて、とりあえず切れ味のよい紙切りでざくざくと短くしていった。

 ところが……

 あまりにも急角度でハサミを入れすぎたせいか、ところどころ地肌が……目にまぶしい状態に!

 つまり、堂々『虎刈り』でんな。

 脇でとと押さえ係をしていたケイちゃんがしんみりと

「あまりにもかわいそう」

 とつぶやくのでヨシコブチ切れてハサミを投げ捨てた。

「あ~どーせ悪いのは私ですよ」

 と開き直り、そのまま万札をぐわしと掴んで最寄の家電量販店へ鼻息荒く向かった。


 そして、ヨシコは前々から買いたいと思っていた電気バリカンをようやく思い切って買い、意気揚々と引き上げてきた。思い立ったら吉日を地で行く人です。

 刈り高さ調節アタッチメント4種とスキ刈り、刈り上げ用のそれぞれのアタッチメントがついたポピュラーなメーカーのやつ。

 本体も歯も水洗いできる、値段はこんな種類の中では平均的な4400円也。


 家に帰って早速充電。とにかくすぐにでも使いたいヨシコはせっかちさん。

 待ちきれずに、1時間ほどでととの頭に向きあい、再チャレンジ。6ミリのアタッチメントで、刈ります、刈ります……気分はアメリカはニューハンプシャー州の芝刈りおじさん(て、何やねん)。

 そしてできあがりは、すっかり丸々青々と。後ろから見ると、単に高校球児か屋台のおっちゃんのようですが、これが案外と家族に好評。

 本人は、さわり心地がよいのか、何度か手で頭をなでている。そして鏡をみせると

「あじゃ!!」

 と驚愕の叫び。

 しかし笑って何度もみているので、多分気に入ってくれたかとヨシコは胸をなでおろす。

 こんなにうまく刈れるとは……ずっと紙切りバサミで子どもの髪を刈っていたヨシコだが、こんなに手頃な価格ならば早く電動バリカンを買っていればよかった、とプチ反省。

 てなわけで、すっきり丸々とときっずなのであった。

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