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近頃のとと。
少しずつ単語が増えてきた。
「まま~」(あいかわらず『ありのまま』のまま、と同じ発音)も多用するようになったし。
トイレで「まま~! かに!」というのはトイレにサワガニが出没して襲われているので助けて、という意味ではなく、紙がなくなったよ、との呼びかけ。
朝ご飯の時は、じいちゃんばあちゃんも同居ということもあり、一応ご飯とパンを両方用意しているヨシコ、子どもらにどっち食べたい? と時々聞く。
しかし、この頃のととは、
「パン食べる? それともご飯?」
とヨシコが聞くと、必ずといっていいほど
「かりー」
と応える。我が家で一番カレーを愛する人間である。
ヨシコ、日曜の晩はととのためにカレーを鍋一杯作るように。まあ、そうすると月曜の朝起こしやすいという利点があるが。
「カレーだよ」と言うとととはすぐ目がさめるので。
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夏休みも終わる頃、ヨシコは子どもらと『非常食試食会』と銘打ち、火を使わずに食べられる食糧でランチとしゃれこんだ。誰だ、単なる手抜きだとゆー奴は。
ととの学校は広域校ということもあり、予想される大地震の警戒宣言等が出された時がたまたま授業中だった場合、保護者が迎えに行くまで最低3日分の食糧と水とをめいめいが用意しておくのが決まりだった。そして 春休みと夏休みの二回に、期限が切れそうなものを各々入れ替えることになっていた。
学校に預けてある、朝昼晩と一食ずつプラ袋に入れてリュックに詰めてあるものをいったん持ち帰って中身を全部取り出して、日付をみてはまた買い替えたものを詰め直す。案外面倒な作業ではあるが、もしものことを考えて手抜きはできないことでもあった。
学校で避難生活を送りながらさっと食べられる、ということで火を全く使わないという想定でメニューを考えねばならない。しかも、自閉や知的障害、身体障害など各々の状況に合わせて各家庭は食品を吟味せねばならないので、メニュー決めは非常に難しい。
夏休みの面談時に抜いてきた食糧は、カレー、プリッツ、クラッカー、ツナ、レトルトの冷たいジャガイモスープ、天丼の具、などなど。
ととは、カレーと堅焼プリッツは喜んだものの、後はあまりお好みでない様子。
兄と妹もそれぞれ好き嫌いがあり、シーチキン、カレー、プリッツがまず売り切れ、その後は味の薄いブルボンのクラッカーがジリジリと売れていった。
冷たいジャガイモのスープは少しオシャレな味で、兄はお気に入りのようだったが、そうたくさんは要らんという感じ。
アルファ米だと水をかけただけで食べられるらしいのだが、今回は手に入らずご飯ものがあまりない。なのでどんぶりの具も塩けが多いということもあってあまり人気なし。
学校の先生お勧めなのが、あんこの缶詰だと。ぼた餅とか食べること考えれば、おかずにあんこも考えられるな~、と妙にヨシコは納得。
いつも非常食詰替の時にヨシコは想像しては哀しくなる。三日の間、これらのクラッカーとかレトルトとかをボソボソとついばんでいる憐れなととの姿が目に浮んでしまって……
「おかあちゃん早く迎えに行くからね~」と心で叫ぶヨシコ、本当に、災害時に家族が離れ離れにならぬことを祈るのみであった。




