02
ようやく体調も普段通りになったころ、また病院へ。
今度は、特別児童扶養手当というものをいただくため、二年ぶりにIQ検査を受けることに。
一昨年ととの診断をして下さった臨床心理のスズキ先生より、田中ビネー式のテストを受ける。
若い女性のスズキ先生は、ヨシコにも同席していいですよ、と椅子を勧めてくれた。
そこでヨシコがみたのは……吉本新喜劇も真っ青なショーだった。
まず、スズキ先生は男の子の絵を出した。
「ととちゃん、これととちゃんにそっくりだね」
うんうん、とうなずくとと。その時点でヨシコにはすでに悪い予感が。
「さあ、この子の目はどれか、先生に教えてね」
そこでとと、すかさず「うきっ!」と叫ぶと、自分の腹をめくり上げて何故かヘソを見せていた。ヘソは心の目?
「じゃあ、この子の足は?」
と聞かれたら自分の脚をぴんとあげてみせた。こちらは100点満点の50点てところか!
ヨシコはいつの間にか息を詰めて成り行きを見守っていた。
次なる試練。手のひらサイズのかわいいワンちゃん人形と、これまた可愛い車のおもちゃ。
そして拡げられたのは、のび太でも住んでいそうな街の俯瞰図。
「ととちゃん、ワンちゃんと車、どこでも好きなところにおいてみてごらん」
先生にそう言われて渡されたふたつのおもちゃを、とと、神妙に地図上の道路に乗せる。
そこまではよかった。しかし、どちらも地図上の交差点の少し手前、しかもそれぞれ交差点に進入するように北と西とに配置。
母にはすでに、先が読めていた。
とと、片手に車、片手にワンちゃんを持って
「ぶーん、あんあんあん」
と両者の魂が乗り移ったかの雄たけびとともに動かし、交差点のど真ん中でがつんと衝突させた。
「あーーりぇーーーー」
ごていねいにワンちゃんははるかかなたへふっ飛ばされていった。
次の試練にもワンちゃん登場。3つの小箱が出てきて、ワンちゃんがそのうちの一つに入れられた。
先生が覆いをかけてゆっくり5秒数えてから覆いを外し
「ワンちゃんはどこでしょうか」
と尋ねる。
すると、ととはなんと伏せたままの小箱をテーブルの上ですばやくシャッフル。
これはまるでインチキ手品師の手さばき。あまりにも速く、そしてあまりにも華麗。
そして、左端をぱっと持ち上げ、自分で「ぶー」とブザー音、次に右端をぱっと上げ、また「ぶー」。
最後にもったいぶったまま、まん中をうやうやしく持ち上げ
「ピンポンピンポーン」
とひとこと高らかに当たりを宣言した。
こんなそんなが続き、ようやくお終いにスズキ先生はにっこりしながらヨシコに告げた。
「そうですね……ギリギリいいところまで行ったんですが、測定不能でした」
一昨年の「ただの測定不能」よりやや進歩したかも、ヨシコは自らにそう言い聞かせ、ととを連れて病院を出た。
家に着くとケイちゃんがもう仕事から帰ってきていた。
「なんだよ、遅かったな今日」
「うん……」
特別扶養手当の更新、ということばがなかなか出てこなくて、ヨシコはものうげに答える。
「とと、病院で知能検査を受けてきたよ……『冒険野郎お世話代』もらうために」
ケイちゃんは着替えながら首をひねっていた。




