とと五歳・幼稚園もおしまいだねの冬 01
とと画・鳩時計がお知らせします。あ、三時でした。
とと、近頃の進歩で著しいものは、やはり「感情表現」であろうか? とヨシコは分析する。
言いたいことを身振り手振りで伝えようとするのも増えてきたし、自分の名前に入っているひらがなの『と』を書いたり、数字が読めるようになってきたり。
しかしなんといっても一番は、『怒り』をちゃんと相手に伝えるようになったことか。
ばしっと何かを叩きつけ、
「~だいっっ!!」
とか何ごとかどなって、ドアをばしんっと閉めて外に出て行く。
でもそのドアに少し隙間ができると、ちゃんと閉め直す。あいかわらず几帳面なととであった。
◇◇
卒園式も近くなってきたある冬の休み、大きなお寺に行った時のこと。
参道を走っていてなぜか急に足がもつれて、とと、みごとにこけてしまった。
もちろん大泣き。
人目もあるのでヨシコは励ましながら、さあ、おきてあるこうね! と明るく声をかけていたが、一向に泣き止まない。
うんざりと脇に立ち尽くすヨシコ、しかしふと見ると、なぜかととは泣きながら拾った小枝で地面に何か描いている。
まず横に長い丸描いて、上に角らしきもの(しましまもある)、タレ目に線状の涙まで。
すごいのは胴体と、針金のような腕もあり、ちゃんと腰に手をあてている。
どうも鬼(しかも泣いている)の絵らしい。
ここまでできた時、とと、急に立ち上がって両手にジャリを一杯すくい、絵に向かってばら撒き始めた。
(これって、もしかして……節分のマネかっ? しかも……心の中の泣き虫鬼を退治……??)
確か節分の日に、幼稚園で先生がそんな話をしたとかしないとか。
心の泣き虫鬼を退治したらしきととは、急にけろっとしてまた歩きだした。
それからのととは、無事、鬼を退治できたせいか些細なことで泣かなくなったとさ。
……なんてことは、あるわけなかった。
◇◇
卒園式の練習もそれなりにがんばってますよー、と園の先生。
それなりに、ってドレナリニ? 気になりつつも子育てにはいつも半力以下投球のヨシコ、とりあえずそれは当日のお楽しみとすることに。
そしてついに入学準備。ランドセルならキャメルかな、などと言っていた夫婦ではあったが、スクールバスで通学する場合に案外固いランドセルは座席につく時ジャマになりやすいので、リュックが妥当という学校側の見解を受け入れ、止むなくランドセルを諦める。
その代わり、学習机はひとつ新しいものを購入した。
ととはいつまでもいつまでも、寝る時間になってもその新しい机にすがりついてそのうつくしいスベスベの木肌をなで回していた。




