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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。

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火グマは目から人を喰う

掲載日:2026/02/15

 逃げ場はいくらでもあるはずだった。


 開かれた外の公園だ。

 夜とはいえ、ただまっすぐ走れば人通りのある国道に出られるはずだった。


 しかしまるで何かの結界でも張られているかのように、僕らは走っても走っても、公園の外に出ることができない。


 後ろからあいつが迫ってくる気配がする。


 カナが泣き叫んだ。

「どうして!? どうして外に出ることができないのよ!?」


 ユーイチが大声でカナを叱りつける。

「ばか! そんな大声出したらあいつが……」


 遅かった。


 ユーイチの体が、みんなの見ている前でメラメラと燃えはじめた。

 あっという間に炎に包まれ、地面の上を転げ回るユーイチを助けようとする者は誰もいなかった。


 茂みを揺らして、そいつの巨体が姿を現す。

 不気味に赤黒い三日月が、そいつの背に浮かんでいた。


 僕らは悲鳴をあげるしかできなかった。

 ただ夜の公園でたむろしていただけなのに、どうしてこんな目に遭わないといけないんだと、たぶん誰もが思っていた。


 三日月を背にして、巨大な火グマが咆哮する。

 その目が赤く光り、僕らを捕らえた。


「落ち着け……」

 みんなの行動を統率したのは、タクヤだった。

「走ると追ってくる。ヒグマに出遭った時は落ち着いて、自分をおおおきく見せることが肝心なんだ。向こうもじつはこっちを怖がっている」


 さすがは物知りのタクヤだ。

 みんなの信頼も篤く、取り乱して駆け出したりするやつはいなかった。

 茂みの上に仁王立ちになる火グマと向き合って、しかし誰も視線を合わせたりはせず、相手を刺激しないように気をつけながら、四人で固まってゆっくりと後ずさる。


 相手がヒグマなら、賢い行動選択だといえただろう。


 しかし、それはヒグマではない。


 火グマという名の、モンスターだった。


 火グマの目が、赫々と光った。


 タクヤが大声を上げ、その体が炎に包まれた。

 それを合図のように、みんなが恐怖を振り絞って絶叫する。


 火グマの両目がおおきく開いた。

 まぶたに生え揃った牙が、みんなを食い散らかしていく。

 大声で泣き喚くカナは真っ先に喰われた。


 残ったのは僕と、ユーコだけだった。


 腰を抜かして地面にへたり込み、みんなを喰らう火グマをただ震えながら見つめるだけの彼女に、僕は言った。


「どうしたの? 熊を殺すのはかわいそうって、いつも言ってたじゃん?」


「い……、いやぁっ……!」

 かわいいユーコの顔じゅうが汚い液だらけだ。

「ハルト! あいつをやっつけてよ!」


「やっつけられるのはキミのほうだよ」

 優しく、僕は彼女に言ってあげた。

「知ってるんだ。ユーコ、キミ、タクヤと寝たんだよね?」


 驚いた顔をこちらに向けるユーコに、僕は溜飲を下ろした。

 僕のことを愛してるとか言っておいて、そんなことをした彼女は、死んで当然だ。


 ユーコは言った。


「そんなこと……! 今はどうでもいいじゃん! 早くあの熊をやっつけて!」


「グリちゃん」

 僕は火グマに言った。

「この女、食べちゃっていいよ」


 グリちゃんがこっちを向いた。

 僕が育てたかわいいその顔を、こっちに向けた。

 咆哮をあげるその口の中に、歯は一本もない。

 その代わりに牙ばかりが生え揃った目をかっ開くと、ユーコに頭から噛りついた。


 下半身だけになり、壊れた噴水みたいに赤い血をあげるユーコを、僕はうっとりと見つめた。


 これでもう、思い残すことはない。


 僕はグリちゃんに最後の命令をした。


「今まで服從させて悪かったね。さぁ、食べてもいいよ、僕のこと」




シロクマシロウ子さまよりネタ出しをいただきました


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― 新着の感想 ―
瞼に生え揃った牙とか、食べにくそうっ!? 何故そんな罰ゲームのような食べ方をしなくてはいけないのか……………。瞼なんてちっちゃいのに。 可哀想なグリちゃん。 でもユーコの上半身を丸っと食べたという事は…
 熊の方が人間よりも手懐け易かったという皮肉。(苦笑)
ここみしゃま………… 名前出して頂きまして大変光栄です。ʕ•ᴥ•ʔ で、なんか凄いネタ出したかのように響くレベルの作品を生んで下さり、誠にありがとうございますm(_ _)m ヒグマならぬ火グマ、グリち…
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