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35歳バツイチオッサン、アーティファクト(美少女)と共に宇宙(ソラ)を放浪する   作者: エルリア


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99.戦闘データを蓄積して

「なかなか頑張った方じゃないか?」


「そうですね、特に最後のはローラ様の追撃とイブ様の狙撃に対して3分も逃げ続けたわけですから上々と言えるでしょう。そのおかげで彼らの簡易基地の場所も確認できました。」


 宙賊を利用した例の無人機の性能テストは想像以上の結果で終了した。


 最初の一機を撃墜した後はものすごい速度で鹵獲予定の二機目に接敵、船をハッキングしつつ遠隔操作でミサイルを撃ち込み三機目を撃破。


 アリス曰く無人機という中継機を経由することで通常よりも楽にハッキング出来たのだとか。


 中の空気を抜きつつ四機目をロックオンしたところでイブさんの狙撃により目標を喪失、わずか数分で三機を行動不能にした実力はすさまじいものだ。


 なにより通常の攻撃手段とは別にハッキングという電子攻撃を併用することで通常の二倍の戦力を生み出せるのは反則もいいところだろう。


 まぁ、本来はハッキング用の中継器に使うという発想はなかっただろうけど使えてしまえるだけの機能を有していることは確認ができた。


 無人機としての実力もそれなりにあるし機動力も申し分ない、こんなものが世に出てしまったら・・・と危惧したシップメーカーの考えもわからなくもないところだな。


「鹵獲した船はどんな感じだ?」


「現在イブ様が制圧に向かっていますが、全員意識を失っていますのでまず問題はないかと。中の清掃が終了次第お宝の回収に参りましょう」


「場所はここから四時間ぐらいね、ちょうど工業コロニーに行く途中にあるからついでに回収して目的地までは二日ってところかしら」


「宙賊8機の撃墜に加えて中型船の鹵獲、更にはここを行き来していた被害者たちからせしめた物資の回収・・・これだけでいくらになるんだろうなぁ」


 星間ネットワークデータによると、宙賊の報酬が110万程になる。


 加えて今回鹵獲した船の中に残っていた物資と宙賊がしこたまため込んでいるお宝を加えれば500万ぐらいはいくんじゃないだろうか。


 もちろんあくまでも推定なので行ってみたらゴミだったなんて可能性はあるけれど、いくら汚れているとはいえ少なくとも中型船で200万はあるだろうから300万以上は確定だ。


「マスター、この無人機を届けた分の報酬を忘れていますよ」


「そういえばそうだったな。とはいえ、一度はやばくて廃棄した船に大金を払うとは思えないんだが」


「それに関してはこちらに考えがあります」


「やばい話じゃないだろうな」


「非合法なことは致しません、あくまでもスマートに取引をする予定です」


 アリスは自信満々な顔で言うけれども、そもそものブツが非合法なだけに本当にスマートにいくかははなはだ疑問だ。


 とはいえせっかく手に入れたものだけに金になるのであればいくらでも構わないというのが本音のところ、なんせ船を大きくするのに四桁の金額が動くだけに金はいくらあっても困らない。


「あ、イブちゃんが戻ってきたわよ」


「了解、アリス向こうの掃除は任せた」


「お任せください」


「出発は掃除が終了してから、それまではのんびりしよう」


 宙賊船から戻ってきたイブさんにも事情を説明して、アリスの掃除が終わるまではしばしの休憩。


 各々が思い思いの時間を過ごし迎えた翌日、見違えるほどに綺麗になった宙賊船を引き連れて彼らの簡易基地へと向かった。


 中にいた船員がどうなったかって?


 それは聞かないお約束だ。


「おー、これは中々」


「ゴミもたくさんありますが思った以上にレアメタルがありますね、おそらくどこかで換金してきたのでしょう」


「キャッシュだと足がつくが現物はその心配がないからな、しかしよくまぁこれだけ貯めたもんだ」


 期待半分、あきらめ半分で向かった宙賊基地に積み上げられていたのは大量のレアメタル。


 金額にしておよそ1000万程はあるだろうか、物資は少なかったものの換金する手間が省けたので非常にありがたい。


 他にも医薬品や電子部品などもしまってあったのでしっかりと回収しておく。


 諸々を鹵獲した船に積み込み、積んであったゴミを置いておく。


「では予定通り爆破いたします」


「弾薬がもったいなくないですか?」


「下手に残して別の宙賊に使われるぐらいならつぶしてしまうほうが間違いありません。それに、この無人機の性能を確認するにはうってつけの的ですので」


「お前の目的はそっちか」


「シップメーカーが市場に出すのを躊躇うほどの火力、見たくありませんか?」


「まぁ、気にはなるな」


「この結果が今回押収したレアメタル以上になるかもしれません、頑張らせていただきます」


 いや、頑張るのは無人機だと思うぞ。


 そんなことを考えつつ、メインモニターに注目する。


 真ん中には宙賊基地、そこにゆっくりと無人機が近づいていく。


「ウェポンシステム起動、全システムオールグリーン。マスターご指示を」


「やっちまえ」


 合図と同時に無人機から強い光がはなたれ、メインモニターがホワイトアウトする。


 画面は真っ白なのに聞こえてくるのは轟音、しばらくしてモニターが回復したその先にはオレンジ色の花をいくつも咲かせながら爆発する宙賊基地の姿があった。


 別に爆薬がたくさん仕掛けられているとかそういうわけじゃない、単純に装てんされていたすべての弾薬をぶち込んだ結果がこれだ。


 宙賊を追いかけるのにそれなりに弾薬を使用したのにまだこれだけ残っているとか・・・そりゃなかった事にもしたくなるよなぁ。


「・・・すごい」


「これはちょっとやりすぎじゃないかしら」


「やりすぎってレベルじゃないぞ、むしろこいつ一機でコロニーぐらい落とせるんじゃないか?」


「この結果から考えると十分可能かと」


「そりゃ公表できるはずもない。なんだよこの今できる最大火力詰め込みましたみたいなのは」


 まるで子供が考えた最強兵器みたいな結果、アリス曰く非合法な弾薬などは使われていないだけまだマシなんだとか。


 軍の装備ともなると反物質系のやばいやつもあるらしく、それを使ったらもっとすごい結果になっていたそうだ。


 それでも通常火器でこの結果、もしこれを宙賊が拾って起動しようものならとんでもないことになっていたことだろう。


 もし本当に表に出せないから廃棄したっていう理由なのであればこれ以上無責任なことはないだろう。


「・・・なぁアリス」


「なんでしょう」


「本当にスマートな取引をするんだよな?」


「もちろんそのつもりです。私達は彼らが落としたものを回収して持って行きしかるべき報酬をもらうだけです。まぁ、その際に今回確認できた戦闘データを一緒に提出して我々が拾わなかった場合についてご説明するつもりではいますが」


「それ、説明じゃなくて脅しじゃないのか?」


「はて、何のことでしょうか」


 こいつ、絶対穏便に済まさないつもりだ。


 最初から何となく違和感を感じていたけれどこれをもっていって向こうが喜ぶはずがない。


 むしろせっかく手放したものが帰ってきて、しかもその戦闘データを勝手に取られてそれをネタにゆすられるとかこれがヒューマノイドのすることか?


 ただでさえ関係各所に目をつけられているのに、このうえシップメーカーにも目を付けられるとかマジで勘弁願いたい。、俺はただ平和に旅をしたいだけなんだがうちのヒューマノイドはそれを許してくれないようだ。


 任せとけという感じでドヤ顔をするアリスを見て、盛大なため息をついてしまった。

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