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35歳バツイチオッサン、アーティファクト(美少女)と共に宇宙(ソラ)を放浪する   作者: エルリア


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77.予想外の相手に怒られて

 補給を終え再びコロニーから出発。


 西側は依然として宙賊で溢れており、小規模集団を撃破しすぎたせいか警戒されてそこそこ大きな塊で動くようになってしまった。


 一部群れないやつらがいる程度で今回はあまり数を稼げないかもしれない。


「ふむ、それでも北側にはポツポツいるな。軍の基地が近いってのに命知らずな奴らだ」


「不用意に手を出さなければ攻撃してこないことを理解しているんでしょう」


「あそこから片づけますか?」


「そうだな、一隻ならローラさんにそこまで負担はかけなくて済むだろう」


「畏まりました、まずはコロニー北部へ移動します」


 メディカルポットに入ったことで比較的体調が戻ったローラさんだが、まだ本調子ではないので今も部屋で休んでもらっている。


 一隻を追い回すだけならそこまで船も揺れないし、最悪アリスにエンジンを停めさせるという荒業がつかえるので比較的容易に対処できるはずだ。


 コロニーを出てまっすぐ北上、3D地図で北上というのはちょっとあれだがZ軸的にはそこまで差が無いのでまぁいいだろう。


 そのまま飛行する事30分程、軍事基地とコロニーの中間ぐらいの位置で目標とは違う船を発見した。


「・・・なんだあれ」


「停泊していますね」


「こんな何もない宇宙のど真ん中で?寝てるのか?」


 仮に寝ていたとしても最初に得たベクトルで進み続けるのがほとんどで、完全に停止することは珍しい。


 考えられるのは待ち合わせか、はたまたこの間の漂流船のようなものなのか。


「熱源はありますからエンジンは稼働しています」


「ハッキングは?」


「試していますがオフラインにしているようで接続できません」


「どう考えても怪しすぎるだろ」


 星間ネットワークに接続できる環境であえてネットワークに接続しないことなんてありえない。


 メインモニターに表示されている光点もネットワークとの接続から把握できているのであって、突然現れたこの船はオフラインなのでもちろん表示されていない。


 何をするにもネットワークを経由する世の中でそれをあえて拒絶するという事は何かやましい事をしているのと言っているようなものだ。


 まぁ故障しているという可能性もゼロじゃないけどそれなら救難信号的なものを出すはず、それすらしていないという事は間違いなく前者だ。


「さて、どうするよ」


「一見すると民間船にも見えますが、通信してみますか?」


「返事があれば民間人、無ければ・・・ってな感じで判断できるか」


「機械の故障で返事が出来ないという可能性は?」


「んー、それなら尚の事救難信号を出さない理由が分からない。」


「それもそうですね」


「ではもう少し近づいて通信を飛ばします、マスター後は任せました」


 相手は民間人かはたまた宙賊か、どちらにせよいけばわかるさ。


 発見した船の規模は中型、知識の無い俺にはどこのシップメーカーかを当てることはできそうにない。


 まぁその辺はアリスがやってくれるだろう。


 肉眼で船を視認できる距離まで近づいても逃げる様子はない、ってことは前者なのか?


「通信飛ばします」


「さて、何が出て来るか」


 通信を飛ばし呼び出し音がコックピットに響く。


 3コール、4コールなっても返事はない。


「ダメだな」


「灯りはついていませんがエンジンは稼働しています。ですがかなりの消音タイプですね、熱源もほぼ確認できません」


「こっちは善意でコンタクトを飛ばしているのにそれを無視されたらスキャンしても怒られないよな?」


「まぁ、普通に行けば」


「よし、スキャン実行」


「どうなっても知りませんからね」


 普通なら何かしらのコンタクトを取ってくるはず、にもかかわらずそれを無視するってことは無視する理由があるんだろう。


 俺は何も知らないから全て善意で行ってる、それで怒られる筋合いはない。


 内部を確認するスキャンを実行、すると突然耳をつんざくようなガリガリガリという異音が船内に響きわたった。


 あまりの音に思わず耳を塞いでしまうがそれでも残響音が耳に残っている。


「何事だ!」


「スキャンを妨害する電波を受信しました。よほど調べられたくないようですね」


「なぁ、アリス」


「なんでしょう」


「普通、宙賊がこんなことできるか?」


「出来る出来ないで言えば出来ますが、ジャミング装置だけでもかなり高額ですしそもそも設置する意味が分かりません」


「つまり、民間人でも宙賊でもないってことは・・・」


「こちら宇宙軍第八部隊、君たちの行為は軍への敵対行為に該当する。今すぐ所属を述べよ」


 再びガリガリという音が聞こえてきたと思ったら、予想外の相手から強制的に通信が飛ばされてきた。


 ここに来て第三の選択肢登場、よくよく考えればエンジンとかオフラインにしているとことからそういう可能性も十分あったよなぁ。


「こちら傭兵ギルド所属ソルアレス、キャプテントウマだ。通信を飛ばしたが反応が無い為トラブルの可能性を考えスキャンしただけで決して軍に敵対するつもりは無い」


「へぇ、お前がキャプテントウマか」


「ん?俺を知ってるのか?」


「宙賊討伐作戦における現在のエースだろ?こんなところで油を売ってないでさっさと西に向かったらどうだ?」


 最初はかなり厳しい口調だったのに俺の所属を伝えた途端にフランクな感じに切り替わった。


 相変わらず顔は見えないけれど、少なくともものすごく怒られている感じではなさそうだな。


「北にいる宙賊を狙いに来ただけだ、作戦の邪魔をしたなら謝る」


「悪いがそいつは俺達の獲物だ、他をあたってくれ」


「そりゃ悪かった」


「お前の腕なら他の奴らでも大丈夫だろ?」


「邪魔して悪かった、失礼するよ」


 まさかの軍関係者だとは思わなかったが、お咎めなしの感じなのでさっさととんずらするとしよう。


 アリスに合図を出して急ぎ反転し船から距離を取る。


 一隻だけの宙賊船を狙う宇宙軍、しかも見つかりにくいようにオフラインにして熱源も最低限に抑える特別仕様の船。


 あの宙賊が一体何を握っているというのだろうか。


「やれやれ、まさか軍関係者の船だとはな」


「でもよかったですね、下手に北の宙賊を追いかけていると別の意味で怒られたかもしれません」


「確かに、明らかに奇襲するための船だもんな」


 イブさんの無線を聞き納得してしまった。


 下手にあそこで直行して撃墜しようものなら何を言われたかわかったもじゃない。


「宇宙軍第八部隊、今調べていますが公式には無い部隊ですね。確か前にダウンロードした資料の中にあったような気がします」


「あー、知りたいけど知ったらめんどくさそうだから何も言わないでくれ。とりあえずこの場を離れて別の宙賊を狙おう、俺達を認知してくれていることが分かっただけでも大収穫だ」


「ここからですとやはり西ですね、少し数は多いですがどうしますか?」


「私は大丈夫です!何隻いても倒してみせます!」


「とはいえローラさんが・・・」


「私の事は気にしないでください」


「ん?ローラさん!?」


 後ろを振り返るとそこには部屋で休んでいるはずのローラさんの姿があった。


 顔色はまだ悪い感じだが、その目に何か強い意志のようなものが見える。


「休んでなくて大丈夫ですか?」


「何もわからず横になっているほうがつらくて、もしお邪魔でなかったらお手伝いさせてもらえませんか?一応15年オペレーターはやってきましたし、船の操作もできるつもりです」


「それは助かるが・・・」


「それでは操縦をお願いします。そうすれば私も別の作業に集中できますので、よろしいですねマスター」


「本当に出来るんだよな?」


「多分・・・いえ、出来ます!」


「よし、それじゃあ任せた」


 なんだかよくわからないがアリスが任せていいと判断したのなら大丈夫なんだろう。


 最悪彼女が裏で操縦するという事も出来るだろうし、逆に本当に操縦できるならハッキングとかそっちに専念してもらえる。


 本人もただ乗せてもらっているだけが申し訳ないと言っていらしいので、これで少しでも酔いにくくなるのならいい事だ。


 オペレーターシートにアリスが、空席になっていたパイロットシートにローラさんが座る。


 ローラさんは感慨深げに操縦桿を握ると大きく深呼吸するのが見えた。


「目標西側宙域、最大船速!」


「最大船速!」


 ローラさんの復唱と共にソルアレスが急加速。


 あ、これヤバいかもと思う間もなく、俺はパイロットシートに押し付けられるのだった。

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― 新着の感想 ―
この世界の女性は、優秀な人が多いのかに?最後の2行だけで、既にヤバい女性っぽいw
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