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35歳バツイチオッサン、アーティファクト(美少女)と共に宇宙(ソラ)を放浪する   作者: エルリア


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76.傭兵ギルドに呼び出されて

「それじゃあ補給よろしくな」


「お任せください」


 宙賊をしこたま撃墜した後、燃料と弾数が心もとなくなった俺達は一度コロニーへと戻ることにした。


 もちろんローㇻさんがいるので入港時にジャミングをかけるのを忘れない。


 でもあまりやりすぎると目をつけられてしまうので帰港できるのも後1~2回が限界だろう。


 そうなる前に他所の宙域へ移動するか、最悪の場合は軍にお願いして補給するよりない。


 まぁ、宙賊から奪うっていう手段も残されているけどこれは本当に最後の手段だなぁ。


「お一人で大丈夫ですか?」


「ローラさんの件もあるし、何かあった時に戦える人が居ないと困る。最悪の場合俺を置いて出発しても構わないからな」


「もしもの場合はそうさせていただきます」


「どうぞお気をつけて」


 アリスとイブさんに見送られてソルアレスを離れたその足で向かうのは傭兵ギルド。


 宙賊を倒した報奨金を受け取りに行く予定だったのだが、帰港と同時に呼び出しを受けてしまった。


 呼び出される理由はなんとなくわかるけれどもいくらなんでも早すぎじゃないだろうか。


 別に悪い事をしたわけじゃないんだしむしろ褒められるべきだと思うんだが。


 因みにローラさんは先の戦闘でとどめを刺されたようで起き上がれない状態らしく、現在メディカルポットに入って簡易治療中だ。


 俺もやばかったが気合で何とかやり過ごした感はある。


「お、来たなエース」


「誰がエースだって?」


「お前だよお前、いやお前んとこのあの乳のデカい姉ちゃんか?」


 傭兵ギルドへ入るなりウォルターが親し気な感じで話しかけて来る。


 これで会うのは三回目、エドガーさんを知っているという共通のネタはあるけれども、ここまで親しく話しかけられる理由は無いんだが・・・まぁいいか。


「まぁどっちでもいいだろ。それで呼び出しってのは?」


「呼び出しなんて人聞きの悪いこと言うなよ、俺はただ話があるから早めに顔を出せって言っただけだぜ」


「そんな風には聞こえなかったがな。てっきり他の傭兵から苦情が上がってるのかと思ったが、違うのか?」


「確かにそういう話も上がってるが人の功績を妬むやつの話なんて無視すればいい。それよりも大事なのはお前の出した結果だよ。宙賊船撃墜数18隻はうち所属の傭兵の中でナンバーワンの実績だ、コロニーもお前のことを高く評価してる」


「評価ねぇ、貰うもんもらえたらそれで十分だけどな。補給が終わったらまた出るからとりあえず今回の分までを清算してくれ」


 評価されても懐が温かくならないのなら意味はない。


 あまり長居もできないのでもらえるもん貰ってさっさとソルアレスに戻りたいところだ。


 呼び出しというのは予想通り撃墜数の件についてらしく、苦情はあるけれどどちらかお言うと好意的な意見が多くコロニーから直接褒めるようにというお達しがあったらしい。


 てっきりローラさんの件で色々と言われるんじゃないかと思ったがどうやら杞憂に終わったようだ。


 今回の撃墜数に加えてコロニーの評価とやらを加えた稼ぎはざっと340万、ライエル男爵からもらった報酬を除けば今までで一番稼いだことになる。


 ヤバいな傭兵、こんなに短時間でここまで儲かるのか。


「まぁこんなもんか」


「大金もらっといてその反応かよ」


「いや、嬉しいのは嬉しいがこれっぽっち船をいじったらすぐだろ?」


「まぁ、確かにな」


「それよりも、これだけ倒してもまだコロニーからは出航禁止令が出たままなのか?」


「どうやらそうらしい。全体の数は減っても西側の連中はまだ健在だろ?まったく、何しに群がってるんだか」


「何か情報ないのか?例えば軍が手助けしてくれるとか」


「あればここまで苦労してないっての。軍だって直接コロニーが襲われでもしないと重たい腰は上げないだろう、あいつらはそういう連中なのさ」


 この言葉を100%信じるわけじゃないけれど今の所あの情報は誰にも伝わっていないようだ。


 つまり餌としての価値は十分あるという事、今のところ俺達が撃墜数でナンバーワンらしいのでもう少し実績を積めば嫌でも噂が広まるだろう。


「薄情な奴らだな」


「まぁ俺達からすれば稼ぎのネタを取られなくて済むけどな。それにだ、この短期間でこれだけ撃墜したんだ、ことが終われば軍からお声がかかるかもしれないぞ」


「俺が軍に?」


「宙賊の撃墜数はコロニーも軍も誰でも確認できるからな。結構あるんだぞ、傭兵上がりの軍配属」


 コロニーはともかく軍も今回の撃墜数を確認できるのか。


 それはなおさら頑張らないといけなくなってきたな。


「ふーん、まぁ興味ないけど」


「本業は輸送業だもんな、お前は」


「そういう事。それじゃあまた面白いネタが入ったら教えてくれ」


「了解、死ぬなよエース」


「まだやってないことが山ほどあるんでね、死ぬつもりは無いさ」


 表向きは興味ないという顔をしつつ傭兵ギルドを後にする。


 本当はこのままソルアレスに戻るつもりだったんだが、この前の件もあるので再びローラさんの家へ向かった。


 扉は壊れたままだが強引に閉じられており、規制線は張られていない。


 どうやら警備も不在の様だ。


「アリス」


「よく見えますよ、マスター」


「監視カメラか、前まであったか?」


「いえ、前はありませんでした。設置したのは・・・申し訳ありません痕跡が消されているので確認できませんでした」


 後ろを振り返ると監視カメラがこちらを向いていた。


 手を振ると左右に揺れて合図をしてくる。


「映像の解析は?」


「設置後誰かが来たような様子はありません。今の映像もリアルタイムで切り替えていますので設置した何者かにバレる心配はないでしょう」


「了解、さっさと終わらせて戻る」


「どうぞお気をつけて」


 アリスの事前調査によると近隣住人は事件の後から不在にしているようで多少粗い事をしてもバレる心配はなさそうだ。


 ドアを引っ張るも変形しているせいでびくともしないので、持参した棒をドアの隙間に差し込んでテコの原理を使い強引に開ける。


 ギギギギと嫌な音を立てながらもなんとか人一人は入れるぐらいの隙間を開けることができた。


 部屋の中は先日イブさんと荷物を回収した時同様荒されたまま、とりあえず足りない日用品などを回収しつつ問題の旦那の部屋へと向かう。


 確か物取りを装って強引に荒されたって話だったが、確かにここだけ異様に物が散乱している。


 ローラさんから聞いた通りベッド横の戸棚を開けてみるも中身は空っぽ、その後も旦那の痕跡を見つけるべく色々探してみたけれどコレ!というものは見つからなかった。


 まるで初めからいなかったかのような不自然さ、ここまで個人情報が見つからないことなんてあるか?


「ここまで何も見つからないと違和感しかないな」


「ローラさんの話では結婚して七年、特に怪しい事はなかったそうです」


「職場は同じなんだっけ?」


「そうですね、データベース上には登録があります」


「それもアリスみたいに捏造されたものだとしたら?」


「可能性は否定できませんが・・・おっと、誰か建物に近づいています。すぐに離脱を」


「離脱って簡単に言ってくれるぜ全く」


 慌てて家を出て強引に扉を閉めてそのまま階段へ、エレベーターが昇ってくるのを確認して急ぎ階段を下りていく。


 ふぅ、危機一髪だった。


「誰だ?」


「わかりませんが家の前を確認しています。フードをかぶっているせいで顔認証は失敗、常にカメラを背にしていますのでここに設置していることは知っているんでしょう」


 途中の階でわざと待機、アリスから情報を得ながら再びそいつがエレベーターで下に降りるのを待ってから上に戻る。


 結局そいつは扉の前で何かを確認して去っていったようだ。


 一体誰が何のためにやってきたのか、まさか俺が探偵もののホロムービーみたいなことをする日が来るとはなぁ。


「エアカーに乗って去っていきました、もう出ていいですよ」


「まったく何だったんだ?」


「わかりません、ドアに何か変わった様子はありませんか?」


「変わった様子・・・なるほど、これか」


 アリスに命じられるがまま壊れた扉を下から上に確認、するとさっきまでなかった物を発見した。


「どうしました?」


「ドアの上部にテープが張ってある」


「なるほど、誰かがマスターと同じ事をすると痕跡でバレるやつですね」


「つまりさっきの奴はここにまた誰かが来ると予想しているってことだよな」


「間違いなくローラさんが戻ってくると読んでいるんでしょう。逃げ出したのは確実、コロニーからの出入りは入管で管理していると思い込んでいますのでコロニー内に隠れていると思っているんでしょう」


「まったく面倒な事になってるなぁ」


「ですが情報を渡せばそれも軍が片付けてくれると信じましょう。もうすぐ補給が終わります、お早いお帰りを」


「了解」


 探偵の真似事はここまでだ。


 例の情報を渡せば後は軍か何かが対処してくれるはず、俺はしがない輸送業者だからそういう面倒事には関わりたくない。


 さて、その情報を渡すべくもうひと頑張りと行きましょうかね。

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