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35歳バツイチオッサン、アーティファクト(美少女)と共に宇宙(ソラ)を放浪する   作者: エルリア


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48.メディカルチェックを受けさせてもらって

「メディカルチェック?」


「折角だから受けてみてはどうだ?妻の一件もあるし私も今日受けるつもりなのだが、折角なら一緒に受ければいいジャックが何とかしてくれる」


「本当は飛び込みなんて受けてないんだけど、ライエルとパトリシアの恩人だからね。自分では健康だと思っていても案外わからないこともあるから、もちろん費用は彼が出すから問題ないよ」


 メディカルコロニーにてゴミ捨てや荷物の運搬、仕入れなどを行いながら時間を潰しているとライエル男爵から思わぬ提案を受けた。


 なんでもパトリシア様の一件を受けて自分も病気が無いか心配になったようで、ジャック先生の勧めもあり検査を受けることにしたらしい。


 そこに俺達が返ってきたものだからそのままの流れで誘われてしまったけれど、あれって確かものすごく高いんじゃなかったっけ。


「それはありがたい申し出なんだが・・・すごく高いんだ・・・ですよね?」


「まぁ遺伝子検査もするから一人50万ぐらいかなぁ。」


「なら二人で100万、それで健康かわかるのであれば安いものだろう」


「ほら、彼もこういっているし受けてくことをお勧めするよ」


「っていってるけど・・・イブさんどうする?」


 彼女の場合はちょっとイレギュラーっていうか、出自も何もかもわからないだけに個人的には受けておくほうがいいとおもうけれど、逆に受けないほうが変なことにならない気もする。


 アリスの方を見るも特に気にしている様子はないのでとりあえず本人のレスポンスを待ってみるか。


「折角なので、お願いします」


「わかった、枠は開けているから一時間後にもう一度来てくれるかな」


「了解です」


「それでは私は行ってくる」


 思わぬ展開になってしまったが100万もする検査がただで受けられるのならばやらない理由はないだろう。


 なんせ天涯孤独の身、この先自分に何があるかわからないがせめて病気だけは避けたいところだ。


 一度船に戻って着替えて来てから再び集合、検査と言っても医療用ポッドの中に入って色々と調べられるだけなのでそこまで難しい検査ではない。


 それで50万?とか思ってしまうが、検査項目が多いとどうしてもそうなるんだろう。


「それでは採血しますね」


「はい」


「ちょっとチクッとしますよ~」


「え?」


「ふふ、冗談です。大昔は痛かったらしいですけど今は無痛針ですから」


 担当してくれた看護師がそんなおちゃめなことを言ってくれている間に採血は終了、そのまま医療用ポッドに入ると正面のポッドにはイブさんが入るようだ。


 検査用の薄いシャツを着ているからか胸のふくらみがなかなかすごい事になっている。


 アリスとは・・・おかしいな、なんで寒気がするんだろうか。


 ポッドのせいで顔しか見えないがこちらに気づいたのか笑顔を向けてくれる。


 凄いだろ、あの笑顔とあの体で宙賊をガンガン撃ち落とすし傭兵ギルドの教官をバッタバッタとなぎ倒すんだぜ。


 人は見かけによらないというけれど、マジで何者なんだろうなぁ。


 もしかするとそのルーツが分かるかもしれない大事な検査、出てきてほしいような出てきてほしくないような複雑な気持ちだ。


 検査自体はそこまで時間がかかる物ではなく、ただポッドの中から周りを見ているだけで終了してしまった。


 これで50万・・・いや、何も言うまい。


「お疲れ様、結果は後日直接送るけどもし何かあった場合は僕が直接説明するから」


「つまり先生に呼ばれたらヤバいと」


「まぁそうなるね。でもここにいる以上悪い所はすべて治してあげるから安心していいよ」


「そりゃ心強い。それじゃあ先生、ありがとうございました」


「ありがとうございました!」


 先生にお礼を言ってソルアレスまでイブさんと二人並んで歩く。


 そういえばアリス無しで歩くのは傭兵ギルド以来か。


「だいぶん生活にも慣れたみたいだな」


「おかげさまでトウマさんとアリスさんのおかげです」


「俺達は何もしてないさ、むしろ助けられてばかりだからなぁ。宙賊もそうだし今日だってあの重たい荷物を運んでもらってものすごい助かった。これからもよろしく頼む」


「あの、それなんですけど・・・」


「ん?」


「本当に一緒に居ていいんですか?ご迷惑とかじゃないでしょうか」


 突然立ち止まり思いつめたような顔でこちらを見るイブさん、突然どうしたんだろうかと思いながら取り合ず廊下の端へと移動する。


 いつも明るく元気な印象だけにこんな風に泣きそうな顔をされたらどう反応すればいいか困ってしまうんだが。


 彼女は彼女なりに色々と考えながらここまで過ごしてきたんだろう。


 自分の出自が分からない、分からないからこそこうやって医療ポッドに入って検査することで何かが分かるのかもしれないと思っているのかもしれない。


 でもそれで悪いことが見つかったら?なんて不安になってしまったんだと勝手に推測してみる。


「さっきも言ったように世話になっているのはこっちの方だ、むしろイブさんに抜けてもらったらすぐに宙賊の餌食になるからな!むしろいてもらわないと困る」


「でももしこれで変な病気とか見つかったら・・・」


「それならジャック先生に治してもらえばいい、先生も言ってただろ?ここにいる限り悪い所はすべて治してもらえるって。むしろ俺の方が心配だけどな、来年には・・・36!?駄目だ考えるんじゃなかった」


 この年になると腰に肩に痛いところは増えて来るし、腹回りだってアリスにこき使われるようになって多少ましになったとはいえまだまだ大きいまま。


 イブさんに鍛えてもらっているからもう少し絞れる予定ではあるけれどその保証はどこにもないわけで。


 はぁ、世知辛い世の中だ。


「トウマさんならまだまだ大丈夫ですよ」


「そう言ってくれるのはイブさんだけだよ。アリスに言わせたら・・・」


「私がどうかしましたか?」


「うぉ!いつの間に」


 突然目の前に現れたアリスに思わず変な声が出てしまった。


 いったいいつからそこにいたんだ?


「帰りが遅いので迎えに来ました。イブ様、カーゴのコンテナを少し奥に動かしたいのですがお願いできますか?マスターのあのお腹ではなかなか難しいので」


「悪かったな腹が出てて!」


 ほら、こういう所が容赦ないんだよこのアーティファクトヒューマノイドは!もっとイブさんを見習え!


 そんな俺の怒りのこもった視線を背中で受けてもアリスは全く反応なし。


 はぁ、考えるのもバカらしくなってきた。


「ま、何かあったら先生が何とかしてくれるさ」


 来年には36、四捨五入すればもう40。


 その年になれば体にもがたはくるし、それこそ腹回りだって出てきてもおかしくない。


 だがそれが普通だろう。


「マスター、早くしないと置いていきますよ。イブさんだけにやらせるつもりですか?」


「へいへい」


「まったく困った人です」


「ふふ、そう言いうアリス様は楽しそうですよね?」


「はて、何のことでしょう」


「なんでもありません。これからもよろしくお願いします、アリスさん」


「こちらこそよろしくお願いしますイブ様」


 なにやら二人が楽しそうに話をしている、何を言っているまでは聞こえなかったがイブさんも元気になったみたいだしそれでいいか。


 ジャック先生の話じゃパトリシア様ももうすぐ退院できそうな感じらしいしこのコロニーにいるのも残りわずか。


 それまでにもう一稼ぎできるかどうか考えておくかな。

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