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35歳バツイチオッサン、アーティファクト(美少女)と共に宇宙(ソラ)を放浪する   作者: エルリア


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35.傭兵ギルドの仕事を引き受けて

「いやー、引き受けてくれて助かった。実力者はみんな別宙域の掃討戦に出払っちまったんだ」


「掃討戦?」


「二つ先の宙域で見つかった宙賊基地の掃討ですね。巨大小惑星をまるまる基地に改装したもののようで、王立宇宙軍から傭兵ギルドに援助要請が入ったようです。法外な討伐報酬を餌に大勢の傭兵を招聘し一気にかたをつけるつもりのようですが、場所が場所ですから中々上手くいっていないようです」


各コロニーや惑星にはそれぞれ自衛組織があり周囲で悪さをする宙賊を取り締まっている。


だがコロニー内の自治もしなければならないため対外的に手が足りない部分は傭兵ギルドが引き受けバランスを取っているのが現状だ。


王立宇宙軍はコロニーや惑星の自衛範囲外を移動し、主に国同士の戦争や貴族間の紛争に介入し宇宙全体の平和を維持している。


今回もその一環なんだろうけど、圧倒的な戦力を有する王立宇宙軍が傭兵ギルドに援助を頼むなんてよほどすごい戦いなんだろう。


そりゃ武勲と金目当ての傭兵なら喜んでそっちに行くってもんだ。


「聞き捨てならない内容もあるみたいだが、相変わらず情報が早いな」


「それが仕事ですので」


「とまぁ、そんなわけで残ってるのはまともに宙賊と戦ったことがないようなひよっ子ばかり。奴らもそれを知ってか好き放題しているのが現状でな、悲しいかな小物相手にもこうやって助力を頼まなければならない現状なのさ」


「そりゃご苦労さん、とはいえ俺達は輸送業者なんだが頼む相手を間違えてないか?」


「それに関してだが輸送ギルドにはもう連絡を入れてあるんだ、向こうも仕事がはかどるから問題ないってってさ」


「くそ、ポーターさんめ裏切りやがって」


そこは所属するギルド会員を守るところだろ、なんで傭兵ギルドに貸し出すんだよ。


そりゃ宙賊がいると仕事にならないから駆除してほしいっていう気持ちはわかるけど、俺はあくまでも輸送業者っていうスタンスなんだが?


「まぁそう怒らないでやってくれ、俺も無理言ってお前を借りてるわけだしそれに見合う報酬も出すつもりだ」


「基本報酬については話を聞いてる、あとは追加報酬と・・・ポーターさんからも出張費を請求するべきだな」


「そうですね、ギルド規約にも他ギルドへの出向費について記載がありますから正当な報酬として要求できます」


「まぁほどほどにな、あいつが暴れたら手が付けられないんだ」


「それはそれ、これはこれ。とにかく依頼を受けるからにはしっかり払うもん払ってもらうぞ、覚悟しとけよ」


元々引き受けることになっていた依頼だし仕事に見合う報酬を支払ってくれるのならば文句はない。


ポーターさんの裏切りはちょっと想定外だったけど、別に出張費を請求できるのならそれはそれでよし。


夢を叶えるためにはかなりの金が必要だからな、少額でもコツコツ貯めてかないと死ぬまでに達成できそうにない。


そんなわけで依頼を引き受けた俺達は諸々の準備を済ませて予定宙域へと出発した。


「作戦は?」


「何も知らない初心者輸送業者が宙域を飛行中に宙賊に絡まれる、という感じでしょうか」


「作戦なのかそれは」


「もちろんです。怪しまれないように積み荷の偽装を行っていますし、なんならトラブルと見せかける救難信号も発信します」


「最初と同じか、これで宙賊が向こうからやってくるなら傭兵も同じことしそうなもんだがなぁ」


「わざわざ丸腰のショップシップに乗って宙賊を狩る様な人が居ますか?」


いや、いるだろここに。


なんならその方法で船から燃料を含めた色々な物資を奪い取った、もとい回収したのが何を隠そうこのアリスだ。


そんなばからしいやり取りをしながら予定宙域を目指して飛行すること半日、個室で仮眠をとっていると非常アラームが鳴り響いた。


「アリス」


「予定通り獲物が餌にかかりました、現在スキャンを受けています」


「救助要請を無視してまずは獲物の確認か、露骨だねぇ。因みに向こうにはどんな風に見えてるんだ?」


「医薬品に食糧、それと少量のレアメタルでしょうか」


前者はともかく後者は宙賊ホイホイか。


レアメタルはその名の通り通常では見つからない特殊鉱石の総称で、大型艦の高性能エンジンの他にも電子部品の生産など生活に必要不可欠な道具を製造するのに用いられている。


1キロ10万ヴェロスの固定価格で取引されている為、宙賊からすれば足のつかない通貨として重宝しているんだとか。


ベッドから飛び起き情報を収集しながらコックピットへ、メインモニターに映し出されたのは聞いていたのと少々違う光景だった。


「三機って話じゃなかったか?」


「傭兵が留守にしているという情報を聞きつけ、他の宙域から小者が集まってきているようです」


「小物って言ってもなぁ、ひーふーみー、全部で六機。こりゃエドガーさんに報酬を倍にしてもらわないと」


「そう仰ると思って撮影データを両ギルドへ転送いたしました。スキャン終了、向こうから通信が入っています」


「出してくれ」


向こうからすれば飛んで火にいるなんとやら、こっちとしては小遣いが増えた感じか。


「こちらソルアレス、救援にしては少々多くないか?」


「へへ、これを見て救援と思えるなんて麻薬でもやってんのか?おぉ、可愛い子もいるじゃねぇか!助けてやるからカーゴの中身とその子を置いていけ」


「置いていくのはいいが俺はどうやって帰ればいい?」


「救命ポットに入れてやるから安心しろ」


「そりゃありがたい、ちゃんとラインに向けて射出してくれよ」


画面に映し出されたのは頬に星のタトゥーを入れた如何にもという見た目の宙賊。


なんでこいつらって揃いも揃って小汚いんだろうか。


「通信終了、二機こちらに向かってきます」


「さて、こっちも獲物の確認と行きますか」


「スキャン実行、一番積み荷のよさそうな船のみ残します」


向こうがじろじろ中身を覗いてくるのならこっちにも覗き返す権利はあるよな?


アリスが改造した広域スキャンにより各機の宙賊名と物資が次々モニターに表示される。


その動きに違和感を感じた一機が慌てた様子で反対方向へ逃げ出してしまった。


「どうだ?」


「どうやら真ん中の中型一機に物資を貯めているようですね、逃げ出したのも含めて撃退して問題ありません」


「そういう事だからイブさんやっちゃっていいぞ」


「わかりました!」


接近する二機を含めて不要な機体にマーキングが行われ、ソルアレス後方から銃座が姿を現す。


それを見て慌てて逃げだそうとする宙賊達だが、時すでに遅く先ほどのスキャンと同時にアリスのハッキングが行われ上手く操縦できなくなったようだ。


同時に六機ハッキングとか相変わらず規格外な事するよなぁ、こいつは。


「目標のエンジンを停止、続いて酸素の排出を開始します」


「せめて苦しまないようにやってやれ」


「予定変更、二酸化炭素を抽出します」


んー、それは苦しまないってことになるのだろうか。


そんなことをしているうちにに逃げ出した宙賊船がイブさんの狙撃により爆散、続いて近くの二機も連続して爆発する。


なんだろう、最初と比べると明らかに彼らに対する抵抗感というか罪悪感が無くなっている自分がいる。


『宙賊という生き方を選んだ時点で彼らは死んでいるんです』


そんなアリスの名言を思い出しながらデブリをまき散らしながら爆発する彼らの最後をモニター越しに眺めるのだった。



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― 新着の感想 ―
昔、胸に七つ黒子の漢が言ってたな『お前はもう、死んでいる』とw
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