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35歳バツイチオッサン、アーティファクト(美少女)と共に宇宙(ソラ)を放浪する   作者: エルリア


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29.普通より高く納品(売りつけ)して

 ディジーをラインから連れ出した翌日。


 初日の夕方にエドガーさんから怒りの連絡は入ったものの、上手くやり過ごしたという事だった。


 公安はディジーの行き先を掴んでおらず、職場である傭兵ギルドがかくまっていると思ったようだけどこれまた不発。


 不思議なのはその際何故探しているかという部分には言及されなかったそうだ。


「つまり公安は麻薬事件を隠したがってる?」


「そりゃそうだろ、自分のシマでよからぬものが流通しているとなったら管理者のライエル男爵になんて報告すればいいんだ?」


「ふむ、つまりあの人にチクれば最悪何とかなる・・・わけじゃないか」


「うやむやにできなくなるからな。とはいえ公安も無茶は出来なくなるからあとは流れ次第だろ。ともかくこっちは知らないで押しとすからな、自分の尻ぐらいい自分で拭けよ、ディジー」


「セクハラですよ!」


「いや、言葉のあやだって」


 ともかく完全に道は閉ざされたわけじゃなさそうなので、ラインの状況についてはエドガーさんにも調べてもらいつつ、こっちは引き続きアリスにネットワークを調べてもらうことになっている。


 そうなると俺達にできる事は殆ど無い、なのでディジーとイブさんには輸送ギルドの仕事を手伝ってもらう事にした。


「これが卸先リスト、左が通常の納品分で右が余剰分。アリスの話じゃどこも在庫が少なくなっていて特に納品する三社は余分に補充したがっているらしいからその都度売りつけるんじゃなくてまとまった数をオークション形式で販売しようと思う。問題は同時に声をかけないと文句を言われるってことなんだよなぁ」


「そこで私たちの出番という事ですね」


「向こうは俺達が納品しに来ることは知っているから、入港後事務所の部屋を借りて同時に商談するつもりだ。完了次第そのままハンガーから積み荷を持って行ってもらえば手間も省ける、ディジーはともかくイブさんは慣れてないと思うが、やれそうか?」


「ここに書かれたものを渡して、少しでも高く買ってもらうだけですよね?」


「まぁ、そんな感じだ。納品分以上を要求されたらオークション形式で販売する旨を伝えて一室に集合、あとは先方同士でやり合ってもらうだけだ。その間に俺は別の二社に声をかけて別の仕事を終わらせる、オークション後は別途代金を受け取って残りをハンガーから出してもらってくれ。護衛はイブさん、交渉系はディジー、得意だろ?」


 ギルドで受付が出来るんだから最低限の折衝能力はあるはず、今回はアリスの力を借りれないからな、自分達で何とかするしかない。


 その日は打ち合わせで一日がつぶれ迎えた翌日。


 予定通りコロニーへと到着した。


「こちらソルアレス、輸送ギルドの依頼を受けて物資を持ってきた」


「ようこそソルアレス、ギルドから話は伺っています三番ハンガーに進入してください」


 自動アナウンスに従い三番ハンガーへ、見た所公安が待ち構えている様子はない。


 操縦に関してはイブさんが出来るようなので誘導に従い無事に着艦、さてここからが本番だ。


「それじゃあ各自予定通りよろしく。」


「わかりました!」


「上手くできるかわからないけど、頑張ります」


 ハンガーから外へ出てそのまま事務所へ、隔壁が開く瞬間が一番緊張したけれど待ち構えられている様子はなかった。


「ようこそお越しくださいました」


「歓迎どうも、とはいえさっさと終わらせたいからさっさと仕事にとりかかろう。こっちは三人、そっちも三人それぞれ納品リストを持ってきているから確認の上代金の支払いを頼む」


 隔壁の向こうで出迎えてくれたのはずんぐりむっくりした中年のオッサン、その後ろには長身イケメンと大人しそうなメガネっ子が控えている。


「それじゃあ二人とも後はよろしく、なんて呼べばいい?」


「ハインツとお呼びください」


「それじゃあハインツさん、仕事の時間だ」


 わざわざ代表して挨拶するぐらいなんだからこの中では一番偉いんだろう、イケメンにはイブさんをメガネっ子にはディジーをつけてそれぞれが用意された個室へ。


 振り分けは、まぁ適当だ。


「改めましてハインツです、この度は依頼を受けていただきありがとうございました。最近は中々こういう依頼を受けてくださる方がおらず困っていたところです」


「トウマだ。ポーターさんの紹介で引き受けたんだが、最近はそうらしいな」


「皆さんより稼ぎのいい仕事を選ばれているようで近隣のコロニーには目を向けてくださらないのが悲しい所、私共も出来る限りの事はさせていただくつもりです。これからもどうぞよろしくお願い致します」


 お互い年も近そうなのでそこまでへりくだる必要はないと思うんだが、これがこの人のやり方なんだろう。


 狙いはもちろん追加で持ってきた物資、とりあえず次の仕事も待ってるしサクッと終わらせるか。


「こっちがうちの物資目録、必要分はコンテナに名前を書いてあるから適当にもっていってくれ。荷物の受け渡しが完了次第支払いを頼む」


「・・・確かに、では早速搬出させていただきます」


「俺は別件の依頼があるからこれで失礼するが、他に何かあるか?」


「失礼ながら船に乗っている物資が随分と多いようですね、他にどこかへ売りに行く予定が?」


「いや、大量に買い付けたら安くしてくれるっていうんで買い付けた在庫品だ。他の依頼分を差し引いてもそこそこあるから別のコロニーに売りに行くつもりだったんだがそれだけ仕入れてまだ必要なのか?」


「先ほども申しましたように中々物資を運んでくださる方がおらずコロニーの在庫も品薄でして、もしよろしければそちらも買わせていただけませんか。もちろん、相場より高く買わせていただきますので!」


 予想通りというかなんというか、あえて依頼以外の目録を見せたら目の色を変えてアプローチを仕掛けてきた。


 まぁそれぐらいひっ迫しているってことなんだろうけど、生憎と俺達も安売りするつもりはない。


「まぁ高く買ってくれるっていうのなら吝かじゃないが・・・他の二人がなんていうかな?」


「仮に名乗りを上げても売りよりも高い金額は出せません。所詮二人はコロニー内でも中堅、わが社のような大手程の財力はないでしょう」


「それは向こうに確認してからだ。イブ、どんな感じだ?」


「先方が追加物資を要求している」


「ディジーは?」


「こっちも残りの物資が欲しいんだって」


 ここまではシナリオ通り、おそらく向こうも同じことを考えているだろうから最悪三等分でも文句はないだろうけどそれじゃうちの儲けが少なくなる。


 折角初めての納品依頼だやるからにはガッツリ儲けたい。


「ふむ、おとなしく三等分してもいいんだがここは一つオークション形式でってのはどうだ?」


「と言いますと?」


「一番高い条件を出したところに余った物資を全部進呈しよう。それには現金だけでなく他の物資を使った支払いでも構わない。買ってくれるなら帰りは空荷だ、それはそれで勿体ない話だからな。イブ、ディジー悪いがそういう事にしたからあとは任せていいか?」


「畏まりました」


「オッケーでーす!」


 こっちに主導権があるときは有無を言わせず話を進める方が良い、掃除夫の時もそうだったけど何をするかこっちが決めていい時はガンガン提案した方がオプション系も付きやすかったし実際やると客も喜んでいた。


 逆に提案が少なかったりすると後で文句を言われることが多かったので、こっち主導で出来るときは一気に持って行った方がお互いにスタートラインを同じにできる。


「ってことだから買い付けを希望する場合は向こうの部屋に集合してくれ。それじゃあ、俺はこれで」


 後は彼女達がどうにかしてくれるだろう。


 仮に高く売れなくても最低限利益は出るようにアリスが買い叩いてくれているから問題はない。


 あっけにとられるハインツさんを残し、俺は残り二社への納品に向かうのだった。

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