表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
35歳バツイチオッサン、アーティファクト(美少女)と共に宇宙(ソラ)を放浪する   作者: エルリア


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

133/139

133.流れてくる噂に耳を傾けて

「水不足?」


 立ち寄ったコロニーで積み荷を売却した翌日、久々に1日オフを取ろうという事になり朝からカフェでモーニングをいただいているとアリスから思わぬ通信が入ってきた。


 思いもしなかった単語に思わ宇イヤホンを耳の奥に押し込んでしまう。


 目の前には水の入ったグラス。


 水には氷が浮かび、回すとカランと良い音を立てる。


 ピュアウォーターとまではいかないが不純物が取り除かれて処理された一般的な飲料水、これが無くなることはまずないと思うんだがなぁ。


「ネットワーク上の書き込みを見つけただけですが、信憑性は高いと思われます」


「理由は?」


「三つ先のコロニーにて再処理プラントが故障したとの報告を確認、まだ世間には公表していないようです。それを受け極秘裏に大量の処理水を積んだ輸送船がコロニーへと向かっていましたが宙賊の襲撃に合い立往生、今はまだ一般生活に影響が出ているほどではありませんがそれも時間の問題かと」


「ふむ、つまりはただ水を運ぶだけでそれなりに儲けが出る可能性があるのか」


 水は生活必需品、っていうか生きていくのに必要不可欠な物。


 本来であれば再処理プラントでほぼほぼ再利用できるので不足することなんてないはずなのだが、今回みたいなことが起きると大きな問題になってくる。


 ただの水、されど水。


 これを運ぶだけで喜んでもらえてさらに儲かるとなれば・・・悪くない話だ。


「いっその事ピュアウォーターだけでもいいかもしれませんよ」


「水不足にかこつけて高い水を売りつけるってのはちょっとなぁ・・・。まぁ、普通の水を売りに行く時点であれだけどさ」


 今までも不足している物資を相場よりも高い値段で売ってきてるんだから今更な感じはあるけれど、流石に生活に支障が出るレベルの品、しかも生活必需品をここぞとばかりに売りに行くのはちょっと違う気がする。


 とはいえコロニー全体の水を運ぶことなんていくら大きくなったソルアレスでも不可能、それならばアリスの言うように金持ちに水を売った方が気持ちは楽かもしれない。


「再処理プラントの復帰には時間がかかりそうか?」


「一応調べてはいますが具体的にどういう故障が起きているかまではわかりませんでした」


「つまり持って行ったもののすでに修理が完了しているというリスクもあるわけか」


「大型の輸送船を手配している時点で大事なんだろうけど・・・よし、ピュアウォーターでいくか」


「ではそちらに関しては手配をしておきます。それではマスター、よい休日を」


 デバイスの通信が切れカフェの喧騒が戻ってきた。


 イヤホンを外して小さく息を吐き、氷が解けてしまった水を一気に飲み干す。


 特に気にせず飲んでいるこの水が無くなるのは非常にまずい状況、とはいえ俺一人では解決できる話でもないし不確定要素が強いのでどこででも販売ができるピュアウォーターを運んで様子を見よう。


 手配はアリスがしてくれるし、折角のオフなんだから今日ぐらい仕事の事を考えないように・・・。


「なぁ聞いたか?」


「何を?」


「この先で輸送船が宙賊の襲撃に合ったらしいが何故か放置されたんだってよ。噂じゃヤバイ物を運んでたんじゃないかって話だぜ」


「ヤバイってなんだよ」


「そりゃ宙賊が手放すぐらいだからよっぽどのもんだろ。停止させるのにエンジンとかをぶっ壊したらしいから動くに動けないし、かといって下手に助けに行ったら・・・ってなやつさ」


「爆弾でも積んでんのかねぇ」


 折角のオフ、仕事の事を忘れてゆっくりしようと思ったのに横で話し始めた若い男二人組の会話が気になって仕方がない。


 恐らくはアリスに聞いた話と合致するんだろうけど、中身がやばい物だってのは初耳だ。


 さっきの話じゃただの処理水って話なのにそれがどう転んでそんな話になってしまったんだろうか。


 宙賊としても折角捕まえた輸送船の中に売れるかもわからない水が積んであったら放置するしかないだろうけど・・・どうも気になるなぁ。


「アリス」


「なんでしょう、さっきの件でしたらまだ調べている最中ですが」


「水を積んだ輸送船なんだが、本当に処理水なのか?」


「と言いますと?」


「タイムリーな感じで噂話が聞こえてきたんだが、やばいやつを積んでたから宙賊が放置したんじゃないかってことになってるぞ」


「ふむ・・・こちらで把握している内容とは違いますね。噂ですから途中で中身が変わるのはよくある話、とはいえ火のない所に煙は立ちませんからもう少し詳しく調べてみます」


「悪いな」


 アリスが言うように噂に余計なものがついただけかもしれないけれども、下手に顔を突っ込んで面倒なことになっても困る。


 今は情報が多い方がよさげなので俺は俺で調べるとするか。


 ってな感じでオフを返上して傭兵ギルドへ。


 生の情報を仕入れるならやっぱりここだろう。


「いらっしゃい」


「情報が欲しいんだが、輸送船を襲撃したって話知ってるか?」


「最近噂になってるやつだな。三つ先のコロニーに物資を運ぶはずが途中で襲撃されて行動不能になったってやつだろ?噂は盛り上がってるが実際に輸送船を見たってやつはいないって話だ」


「そうなのか?」


「色々と情報が錯綜している段階だがぶっちゃけどこの宙賊(バカ)がやったかってのもわかってない。大型の輸送船を航行不能にしたとなればそこそこの装備がなきゃ難しいが、この辺にそんな装備を持ってるやつがいるって話は聞かねぇなぁ」


 傭兵のライセンスを出して受付で情報を仕入れるも最初に聞いていた話とまったく違う。


 こっちには輸送船が襲われたなんて話は正式に着ていないし、そもそもこの宙域にそんなことができる宙賊はいないっていう話だ。


 長年宙賊を相手に商売している傭兵ギルドの宙賊情報に間違いはないはず、となるといったい誰がそんな噂を流したんだって話にもなる。


 どこに行っても何を聞いても確定情報がない。


 アリスが裏を取っているからいずれ詳細は分かるんだろうけど、なんとも不気味な感じだ。


「仮にどっかのバカがやったとして、それを放置すると思うか?」


「わざわざ手に入れた戦利品を放置するって?そりゃありえない話だな。たとえエンジンが停止したって中身をぶちまければ何隻かで引っ張っていけるし、それを売ればそこそこの儲けにもなる。ぶちまけられないような中身だったのかはたまたそんなもの存在してなかったのか。案外俺達みたいなのをおびき寄せるエサなのかもな」


「噂話を信じてふらふら出てくるような奴がいると思うか?」


「この宙域はそこそこ平和だからなぁ、傭兵にはいなくても怖いもの見たさの民間人ならなくはない」


 なるほど、それには一理ある。


 さっきの若者みたいに噂話を信じて宙域を飛行、そこを宙賊に襲われて身ぐるみはがされる感じか。


 あながち再処理プラントの件も金に目がくらんだ俺みたいなやつをおびき寄せるための餌っていう可能性もゼロじゃない。


 もしそうだとしたら宙賊にしては中々狡猾な手を使うじゃないか。


 それこそ普通の宙賊じゃ思いつかないやりかた、どこかの誰かが裏で手引きしていると考えるべきだろう。


「また何かわかったら教えてくれ」


「了解、気をつけてな」


「あぁ、そっちもな」


 ただ水を販売するだけと思いきや何やらきな臭い話になってきたぞ。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ