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35歳バツイチオッサン、アーティファクト(美少女)と共に宇宙(ソラ)を放浪する   作者: エルリア


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121/139

121.久々な人を迎え入れて

 ソルアレスが生まれ変わってから二日。


 仕事のため、ノヴァドックから少し離れた宙域で待機していると一隻の船が近づいてきた。


 所属は隣のコロニーに属する民間護衛会社、だが実際は・・・まぁ世の中色々あるんだろう。


「来たな」


「来ましたね」


「一見するとただの護衛会社、その実態は宇宙軍のシャドーカンパニーか。表立って行動できない宇宙軍の代わりに色々とするためには必要なんだろうけど、そこまで隠れてすることがあるのか?」


「下手にそこをつつくと身を滅ぼしますよ?」


「わかってはいるんだが・・・なんだかなぁ」


 俺みたいにまっとうに生きている人間からすると、後ろめたいことをわざわざする理由がわからない。


 もちろん組織が大きいから色々と弊害があるという事は理解しているけれども、そもそも彼女が移動するのにここまでする必要があるのだろうか。


 やってきた船がソルアレスに船体を横付けしハッチに移動用のチューブを固定、空気を注入して疑似的な通路をつくる。


 こちらのハッチを開放すると同時に向こうのハッチも開放され、見知った顔がふわりと飛んできた。


 こちらのハッチに手をかけると向こうの船に向かって敬礼し、何事もなかったかのように乗船してくる。


 船内の重力制御が働き華麗に着地、流石慣れているだけのことはあるなぁ。


 普通の人はこの無重力と重力の切り替えに戸惑う人が多いんだけどこの人がそうなるはずもないか。


「ようこそソルアレスへ、ナディア中佐」


「お久しぶりですねキャプテントウマ」


「このような形でお会いするとは思っていませんでしたが、お元気そうで何よりです」


「社交辞令は結構、すぐに話を進めたいので案内してもらえますか?」


「かしこまりました。どうぞ奥へ、皆も待機しています」


 ハッチを閉めると自動でチューブが外れあとは向こうの船が勝手にやってくれるだろう。


 そのまま通路を抜けてコックピットへ、途中の扉が気になるのか少し首を動かして確認をしていたけれど、軍人なのでもしもに備えての癖みたいなものなのかもしれない。


 最後のハッチを開放してコックピットに到着、さも当たり前のように中へ入るとわずかに頭を下げた。


「遠路はるばるようこそお越しくださいました」


「歓迎どうも。話を始める前に一つお伺いしたいのですが、こんなに大きな船でしたか?」


「人が増えて手狭になったこともあるからコロニーで拡張工事を頼んだんだ。つい二日前に戻ってきたばかりだから綺麗だろ?」


「ふむ、あのサイズの船をここまで大きくするとなるとかなりの費用が掛かったでしょう。でもそうですね、我々があれだけ支払ったんですから出来て当然、こちらでも色々としているようですし支払えて当然です。しかし、そんなに稼いで一体何をするつもりですか?」


「まぁでっかい夢があるんだよ」


「それが犯罪でないことを祈ります。話がそれましたね、時間もありますから早速話を進めましょう。まずは例のゴーストシップを利用した犯罪組織の動きについてですが直近の状況を教えてください」


 相変わらず仕事命のナディア中佐、ここに来るまでかなりの長旅だったはずなのに挨拶もほどほどに早速仕事を進めたいようだ。


 ここで立ち話をという感じでもないので、一度キッチンへと戻りそちらで打ち合わせをすることにした。


 向こうがその気なら断る理由もないという事で早速ここまでの進捗と今後の流れについて共有、途中ローラさんが入れてくれた香茶をいただきながらも、気づけばあっという間に二時間が経過していた。


「・・・とりあえずこのぐらいでしょうか」


「この短期間によくぞここまで資料をまとめましたね。貴女の素行はさておきこれだけ仕事のできるヒューマノイドは中々いません、今後あのようなことをしないと誓うのなら仕事を回してもいいのですが」


「生憎とマスターの相手が忙しくその時間を作れそうにありません」


「彼の?」


「ご存じの通り私達がいないと何もできない人ですので、お気持ちはありがたいのですが辞退させていただきます」


「俺をディスって仕事を断るのは止めてもらえないか?そりゃみんなに比べると出来ることは少ないが・・・いや、なんでもない」


 結局打ち合わせに参加したのは俺とアリスの二人だけ、ローラさんは操縦をイブさんは新しくなった火器管制の調整に行ってしまった。


 アリスとナディア中佐に比べれば俺の仕事量なんて微々たるもの、出来ることと言えば多少回る口を使って相手と話をする程度だ。


 前職で厳ついれんちゅとやりあっていたからだろうか、この前のルークさんもそうだけど少々の事でビビることはない。


「もっとも、あのような事をしでかすような相手を近くに置く気にはなりませんが」


「それは残念です」


「まぁ、もう終わった話ですし今回の件で水に流すという約束ですから。ですがそれも極秘作戦が成功したらの話です、ゴーストシップそのものの動きはどうなのですか?」


「これまでと変わらずランダムに出現しては目立った動きはなく移動を繰り返すだけのようです。こちらもチャンネルを変えながらアタックしていますが今の所はまだ侵入するに至っていません」


「技術の単一化による弊害ですか。軍ではハッキングなどの事態を想定していくつかの規格を混ぜながら運用していますが、使われているパーツの元をたどれば一つの技術です。だからこそこの間のようなことが起きるわけですが、全体の運用を考えるとこれをかえるのはなかなか難しいでしょうね」


 現在世界中で稼働している数多の機械はそれぞれの規格で製造・運用されている。


 だがその機械を形成するパーツ一つ一つを考えるとほぼ共通のものが使用されているといっていいだろう、それゆえにゴーストシップをハッキングしようと工夫をしてみても結局同じ電子部品を介してしまうので攻略するに至っていないというのが現状だ。


 これを解決する方法を見つけなければ軍による掃討作戦を実行することができない。


 これに関してはアリスにかかっているのでなんとしてでも対処法を見つけてもらわなければならないわけだが・・・、まぁ何とかなるだろう。


 その時だ、打ち合わせをしていた食堂にコックピットから緊急の連絡が飛んできた。


「会議中ごめんなさい、急ぎお伝えしたいことがあるんだけどいいかしら」


「何かあったのか?」


「ゴーストシップが近くに出たらしいんだけど・・・どうする?」


「すぐに向かって頂戴!」


「了解、10分で着くからそれまでにコックピットに集まってね」


 グッドタイミングというかバッドタイミングというか、本物を見られるという事でナディア中佐のテンションは一気に上がりまるで玩具を貰った子供のように急いでコックピットへと走って行ってしまった。


 その様子を見て思わずアリスと二人で苦笑いを浮かべてしまう。


 はてさて現物を見てどういう反応を示すのだろうか。


 小さくため息をついてから、先を行くナディア中佐を追いかけて俺達もコックピットへと向かうのだった。



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