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35歳バツイチオッサン、アーティファクト(美少女)と共に宇宙(ソラ)を放浪する   作者: エルリア


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113/139

113.予定よりも早く仕事を再開して

「こちらが今回ご用意した輸送船になります。中型船の中でも最大規模、輸送能力にのみ特化しておりますので正直なところ乗り心地はあまりよくありませんがその分速度と積載量に特化しております。如何でしょうか」


 ノヴァドッグに到着して五日、予定よりも一日遅れで代替の船が到着した。


 エドさんの案内でゼルファス・インダストリーのドッグに案内された俺達の前に現れたのはずんぐりむっくりとした灰色の船、ソルアレスと比べると明らかに雰囲気は違うけれど用途を考えるとどうしてもこんな風になるんだろう。


 大昔、こんな感じの生き物が海という場所を泳いでいたと何かのホロ番組で見た覚えがある。


「ビッグホエール級輸送船、現存しているとは思いませんでした」


「ご存じでしたか」


「大開拓時代に製造された輸送船の一種で荷物を運ぶことにだけ特化した究極系です。よくこの時代に残っていましたね」


「知り合いにこういうのを集めている人がいましてね、無理をいって回してもらいました。名を白鯨というようです、可愛がってやってください」


「あー、手配してもらっておいてなんだが途中で壊れたりしないだろうな」


「その心配はないでしょう、この時代の船は構造がシンプルで早々の事では壊れません。その代わり現在では当たり前となっているオートパイロットやバランス制御機能がついていませんので操縦の腕がかなり重要視されますが・・・大丈夫でしょうか」


 大丈夫でしょうかと言われても、これしか要望をかなえる船が無いんだからやるしかないだろう。


 ひとまず船内に入りアリスには電子系ローラさんには操縦系を確認してもらう。


 その間に俺とイブさんでカーゴ内を点検、大丈夫だとは聞いているけど穴があって酸欠になりましたとかは勘弁してもらいたい。


「外側はあれだったけど中はかなり綺麗だな、これならかなりの荷物を積み込んでも問題なさそうだ」


「今までの十倍ぐらい積んでも大丈夫そうです」


「規模感がおかしくなりそうだが、幸いそれをかなえるだけの仕事はあるらしいから忙しくなるぞ」


「今回は狙撃関係で活躍できませんのでこっちでがんばりますね」


「期待してる。あとでキャロルさんが来るから彼女と二人でここを管理してくれ」


「わかりました!」


 点検は30分ほどで終了、アリス達の方も特に問題はなかったようだ。


「いかがでしたか?」


「問題なさそうだ、ソルアレスの修理が終わるまで責任もって使わせてもらう」


 手配したものの心配だったんだろう、問題ないと聞いてエドさんがホッとした顔をした。


 今日からこいつが俺達の相棒、期間限定とはいえその間はしっかりと管理しないとな。


「よろしくお願いします。早速今日から?」


「あぁ、ハルヴェリア副主任に仕事を頼まれているんだ」


「おや、もうハリアから仕事を?」


「知り合いなのか?」


「彼女を輸送ギルドに紹介したのは私なんです。あの子ももう副主任、年は取りたくないものですねぇ」


 まさかエドさんとつながっているとは思わなかったが、これなら安心して仕事が出来そうだ。


 エドさんとはここで一度別れて早速船を動かし輸送ギルド用のドッグへと移動を開始、最初こそ左右に揺れて大変だったがそれもすぐにコントロールするあたりさすがローラさんだな。


「どんな感じだ?」


「見た目通りの馬鹿力だけど嫌いじゃないわ、オートパイロットしか使ったことのないおこちゃまには使いこなせないでしょうけど、私の手にかかればこんなものよ」


「さすがローラさん、この船は当時から乗り手を選ぶと言われていましたが全く問題ありませんね」


「そうでしょ?もっと褒めていいのよ?」


「しばらくはこいつが俺達の相棒だ、可愛がってやってくれ」


「オッケー、任せといて!」


 本当は熟練飛行を行いしっかりと慣らしてから仕事を開始する予定だったんだけど、到着が一日遅れてしまったのとハルヴェリアさんからいきなり緊急依頼をぶち込まれてしまったので引き受けてすぐの出発になってしまった。


 本当は断ってもよかったんだけど、今後を考えたら恩を売っておくほうが色々と都合がいい。


 ローラさんもこの感じだしアリス達も了承してくれたので急ぎ目的のドッグへと移動した。


 突然やってきた骨董品(アンティーク艦)に周りの船が距離を取りながら飛行しているのが中々に面白かった。


「ようこそ輸送ギルド専用ドッグへ今日はどうぞよろしくお願いします。


「よろしく頼む、しっかしこんな船で来ても驚かないんだな」


「驚きはしますけど、ちゃんとお仕事してくださるのであれば船の見た目は関係ありませんから。むしろ依頼を引き受けてくださって感謝しかありません、突然の依頼でしかも相手がお得意様なものですから断るのも難しくて」


「こっちとしてもいきなり大役を任せてもらえるぐらいに信頼してもらっているわけだからな、報酬も申し分ないししっかりやらせてもらう。荷物は?」


「奥に並んでいるコンテナ全部です、載りますよね?」


「載せるしかないだろ。イブさん、キャロルさん、仕事開始だ」


「了解です!」


 奥に積みあがった無数のコンテナ、これがソルアレスなら絶対無理だけど今の白鯨(相棒)なら間違いなく行ける、その自信にこたえるかのように大量のコンテナを次々と飲み込んでいきなんなら少し余裕を残した状態で積み込みを完了した。


 輸送に特化しているとは聞いていたけれどまさかメインモニターが存在せず、なんならオペレーターシート一つととコックピットの他にはキャプテンシートしかないという狭小具合。


 大変申し訳ないけどイブさんとキャロルさんにはカーゴに設けた一角で待機してもらうことになった。


 まぁ真空状態になるとかそういうのじゃないから大丈夫だと思うけど、この仕事が終わったら少し改造して待機所をしっかり作ろう。


「出発準備完了、ハルヴェリアさん目的地は?」


「この先にある中継コロニーです。納期は後半日、間に合いますか?」


「間に合わせるしかないだろ。アリス、航路の選定は?」


「完了してます。到着予定時間は今から10時間と27分です」


「なら問題なさそうだな。ローラさん移動開始だ」


「了解!ちょーーーっと揺れるからみんなしっかりつかまっててよね!」


 合図とともに船中にエンジン音が響き渡る。


 なるほど、耳栓を渡された時はよくわからなかったけどこれだけの荷物を運ぶとなるとそりゃこんな音になるよな。


 巨大な体を押し出すのは尾翼と胴体に組み込まれた三つのエンジン、これをロケットの如く噴射させて一気にベクトルを与えて加速するのがこの船の飛び方、ボディ横に着いた小さな翼はバランス制御をするためのものだがまぁおまけみたいなものだ。


 通常であれば自動姿勢制御が機能してバランスを取ってくれるのだが、こいつにそんな便利なものはついていないので姿勢制御は全てローラさんの腕にかかっている。


 加えて、一応レーダーがあるとはいえメインモニターがないので操縦はすべて正面の大きな窓でのみ行われ、アリスはその補佐をするだけ。


 つまりパイロットの腕ですべてが決まるというなんとも豪快な船。


 耳栓をしてもなお聞こえてくるエンジン音、ゴトンという音と共に船がハンガーから離れゆっくりとドッグを離れていく。


 目の前に広がるは漆黒の宇宙。


 加速許可が出る場所まで移動、あとは管制の許可が出れば出発だ。


「こちらノヴァドッグコントロール、出発を許可する。よい旅路を」


「白鯨、発進!」


「了解!」


 耳をつんざくエンジン音が最高潮に達し、ドン!という衝撃の後巨大な船は吼えるように加速を開始した。

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