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35歳バツイチオッサン、アーティファクト(美少女)と共に宇宙(ソラ)を放浪する   作者: エルリア


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112/139

112.コロニー内を案内してもらって

「で、結局受けてしまうんですね。この変態」


「誰が変態か」


「だって抵抗もできない女性を自分の言いなりにしてあんなことやこんなことするつもりなんですよね!このケダモノ!」


「誰がケダモノか!っていうかそういう誤解させるようなこと言うな、キャロルさんがびびってんだろ!」


ボッシュさんからのぶっ飛んだ提案をされた後も補償を含めて色々な提案があったのだが、最終的に最初の提案を受けることでその場を収めることにした。


一番ぶっ飛んでいてめんどくさい提案ではあったけれども、後々に手に入る金額を考えればこれが回収率が高い。


ご自由にお使いくださいという事は使わない自由があるという事、適当に理由をつけて別の事をさせておけばいいだけの話だ。


「あの、私は別に・・・覚悟はしてきました」


「いや、そういう覚悟とかもういいから。ローラさん、とりあえず空いてる部屋に案内しといて」


「わかりました、さぁキャロルさんこちらへどうぞ」


「まったく、余計なこと言って脅かすんじゃないっての。それよりもさっきの偉いさんについて素性は分かったのか?」


「所属部署、役職、発言全てが本物です。現在賠償稟議が上がっているようで・・・あとは社長決裁を残すのみのようですね。ふむ賠償金は300万ですか、マスターにしでかしたことを考えればゼロが一つ足りませんがまぁいいでしょう。それに足りない分に関しては別途請求をかければいいだけの話、それこそキャロル様を通じて要求すればあと200万ヴェイルぐらいは引き出せそうです」


アリスにかかれば星間ネットワーク上にアップしたメッセージや書類などはすべてお見通し、これによって相手の予算が確認できるのでギリギリまで引っぱり出すことができる。


向こうからしたら地獄のような相手だが、まぁそれも運みたいなものだ。


「一日留置所に入って300万と考えればいい報酬か」


「そういうポジティブな発想が出来るところは流石ですが・・・正直な話これからどうするおつもりですか?


「自由にしていいってことは連れて歩かないのも自由ってことだろ?ここにきてまだ二日、仕事を始めたら買い物だなんだと色々と忙しくなるからそっちで活躍してもらえばいいんじゃないか?」


「つまり組み敷く予定はないと」


「当たり前だろ、そこまで飢えてないっての」


「スタイルもまぁ悪くはありませんし、見た目もそれなりに。一般男性の性欲を考えれば十分手を出しそうなものですが・・・まさかマスター、もう枯れ始めましたか?」


まったくこのヒューマノイドときたら、マジでどうしてやろうか。


お陰様でそっちの方は健康そのもの、プライベートを確保できないこともあって今は疎遠になっているけれどいい感じの店を紹介してもらったので、時間を見つけて発散させてもらうとしよう。


そのためにもまずはコロニーについて知るのが先決、地図はあっても実際に歩かないとそこの雰囲気や治安などは分からないので地元の人間に案内してもらってもいいかもしれない。


そんなわけで休憩をはさんだお昼前、キャロルさんににコロニー内を案内してもらうことになった。


「あの、本当に案内するだけでいいんですか?」


「あの人に何を言われたか知らないが知りもしない相手を抱く趣味はない。覚悟してるとか言ってるけど、実際その気はないんだろ?」


「それは、まぁ」


「今の俺達に必要なのはノヴァドッグについての生の情報だ。どの店がうまい、どの店が安い、ネットワークに乗っていない地元民しか知らない情報を教えてくれ。ってことだからまずは飯だな、普段はどこに行くんだ?」


「連れていくのはいいですけど、口に合うかわかりませんよ?」


「望むところだ」


流石に普段からゲテモノを食べたりはしないだろう。


案内されたのは様々な合成食の店が並んだ通り・・・ではなく、そこから少し入ったところにある小汚い感じの飲食店。


目線の高さにかかる目隠し代わりの紺色の布を払いのけて中に入ると、なんとも食欲をそそる香りがただよってきた。


「いいにお~い」


「おばちゃん五人だけど行ける?」


「奥を使いな」


「ありがとう!」


店内はほぼ満員、突然やってきた女ばかりの集団に先に入っていた爺さんが目を丸くしていたが、キャロルさんは特に気にする様子もなくそのまま奥のテーブルへ。


メニュー表的なものは・・・どうやらなさそうだ。


すぐに温かな飲み物が人数分運ばれてくる。


「なんにする?」


「とりあえずかけを五つ、あとおにぎりも」


「はいよ」


「もう一回聞きますけど口に合わなくても怒らないで下さいよ」


「そんなことで怒ったりしないっての。見た感じ結構太いヌードルなんだな」


「いつも時間がないのでこれをかきこんで仕事に行くんです。大開拓時代から続く食べ物らしくて、ここのは合成機を使わず似たような食材を使って味を守ってるって言ってました」


ずるずると面をすする音が聞こえてくるも、不思議と不快感はない。


待つこと数分、温かな湯気を上げる器に白く太い麺が入っている。


「アリス、知ってるか?」


「データーベースに似たようなものはありますが確定はできません」


「ま、食べればわかるか」


まずはキャロルさんが備え付けられていた二本の棒を器用に使って手本を見せてくれる。


なるほど、あんな風に使うのか。


一応フォークはあるけれど、折角ならと同じような感じで試してみるがこれがまた難しい。


以外にもイブさんがすんなりと使いこなし、俺とローラさんが苦戦していた。


「ん!美味い!」


「ツルツルとした食感がいいですね、汁もどこか懐かしい感じがします」


「こっちの白い三角のも塩気がきいてて、食べてから汁を飲むとまた美味しくなりますよ」


食べるのには苦戦したが中身は非常に美味しくて途中から話すのを忘れて夢中になって食べていた。


なるほど、これならパパっと食べて次の仕事にも行けそうだ。


腹にもしっかりたまるし汁がなんとも気持ちを落ち着かせてくれる。


これはいい、今度うちのキッチンでも出せないか試してみよう。


案内してもらったけれど支払いはこっち持ち、全員分支払っても500ヴェイルしないとか無茶苦茶安かった。


「いやー、美味かった!」


「気に入ってもらってよかった」


「いや、マジで毎日来てもいい美味さだ。合成機を使ってないって言ってたけど、つまりは自分で作ってるってことだよな?」


「そうらしいですけど、作り方は知りませんよ?」


「それはアリスがなんとかしてくれるはず・・・だよな?」


「現在似たものを検索しておりますので後二時間ほどください」


合成機に登録されていないものは作ることができないけれど、自分で作るとなれば話は別だ。


会計後に何を使っているのか教えてもらったが残念ながら企業秘密とかで教えてもらうことはできなかった。


それでもうちにはアリス様がいる、きっとあの料理の正体にたどり着くに違いない。


「これからどうします?」


「腹ごなしもかねてコロニー内を適当に回ってくれ」


「またそんな適当な・・・ほんと、あとで文句言わないでくださいよ」


「だから文句なんて言わないって。俺達が知りたいのはネットワークにも上がっていないような地元民ならではの情報だ。食いしん坊が多いから食べ物の店でもいいし、買い物好きもいるからそっちでもいい、まだ半日あるんだからしっかり働いてくれよ」


彼女からしてみればまさかこんなことをさせられるとは思ってもいなかっただろうけど、お互いwin-winの関係なので全く問題ない。


かくしてノヴァドッグ探索ツアーは大好評のまま夜遅くまで続けられたのだった。

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