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35歳バツイチオッサン、アーティファクト(美少女)と共に宇宙(ソラ)を放浪する   作者: エルリア


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108.買い物を満喫して

「そうか、目的の物は全部買えたんだな」


「おかげさまで不足していたものはすべて買い足すことができました


「思っている以上に種類が豊富ですべて回れなかったので、明日はみんなで回りましょうね!」


 超高級レストランで本物のステーキ肉を堪能した後、デザートのアイスクリームを頬張りながらイブさん達の買い物報告を聞いていた。


 予定通りの物は買えたらしいけど、それ以上に店が多すぎて途中で挫折してしまったんだとか。


 流石大型工業コロニー、全住民の買い物欲を満たすにはかなりの店が必要なんだろう。


 目的を達したんだから別に買い物に行かなくてもと思いながらも、女性はそういう生き物だったなという事を思い出す。


 元嫁も買い物が好きで平気で半日歩き回ったりしていたもんなぁ。


 それに対して苦言を呈そうものなら大変なことになってしまう、こういう時に男ができることは一つだけ、諦めだけだ。


「って、言ってるけどアリスはどうする?」


「マスターがいかれるのでしたらご一緒します」


「その返事だと俺も行くの確定じゃねぇか」


「嫌ですか?」


「んー、嫌っていうかあんまり物欲が無いんだよなぁ。別段今買わなきゃいけないものもないし・・・ちなみに明日は何を買いに行くんだ?」


「せっかく船が大きくなるので、キッチンに置く各自の食器なんかを用意しようかなと。あとは自室に置く日用品や回れなかった服屋も見るつもりです」


「私も急ぎ必要な物は買いましたけど、部屋をいただけるのなら細々としたものは買い足したいですね」


 つまり今日の買い物で満足していないからもっとしたいという事なんだろう。


 確かに個室を持っていたのは俺だけなので、自分の部屋を色々カスタマイズしたくなる気持ちはわからなくはない。


 コロニーと違って船だと自室にいる時間も長いので、その時間をいかに心地よく過ごせるかが長期航行時の重要なポイント。


 船員の福利厚生を考えるのも船長の務めなわけで、個人的にはいきたくないけどここは重たい腰を上げる必要がるようだ。


 迎えた翌朝。


 開店と同時に向かったのはコロニーの住民がよく使う大型ショッピングモールだ。


 エドさんには経費で出るので超高級店も案内できると言われたけれども、流石に場違い感が半端ないので丁重にお断りすることにした。


 ここに来れば何でもそろう、昨日みたいに大通りを色々と見て回るのも楽しそうだけど向こうもそれなりの金額になってしまうので庶民は庶民らしくお安い値段でいい物を探すとしよう。


「あ!可愛いカップ!」


「いいですね、香茶を入れるときに使えそうです」


「んー、ちょっと可愛すぎないか?」


「せっかく使うならこれぐらいのほうがいいですよ。こっちが私で、これがローラさん。アリスさんはこれですね」


 テンションマックスのイブさんが選んだのはカラフルなティーカップセット。


 合成機から出てくる液体やピュアウォーターなら普通のコップでいいけど、最近ちょくちょく香茶が出てくるのでそういった時に使いたいんだろう。


 因みにイブサンは黄色、ローラさんはオレンジ、アリスがピンクらしい。


 アリスは残念ながら飲めないけれども一人だけ仲間外れというわけにもいかないし、そもそもイブさんは飲めないことをまったく気にしていない。


 皆とおそろいだから買いたい、ただそれだけ。


 まぁ、そこが彼女のいいところなんだけどな。


「ではマスターはこの紺色で」


「これ?」


「あ!いいと思います、トウマさんらしい落ち着いた色ですけどデザインは少し変わっていて。さすがアリスさんですね」


「つまり俺は変わり者と、なるほどなるほど」


「これは私が買いますからマスターは皆さんのをご購入ください」


「いや、そこは否定するところだろ」


 確かに変わり者の自覚はあるけどその辺をスルーするのはどうかと思うぞ。


 なんて感じで買い物を続けていたのだが、共通で使う物ってのは結構数も多いしそれを集め始めるときりがない。


 食器だって今までは一つでよかったのに今では四つ必要だし、それ以外にも生活するうえで必要になるものはいくらでもある。


 まだしばらく修理からは戻らないのであまり買いすぎるわけにはいかないけれど、あれやこれやと見ているうちに何だか俺も楽しくなって気づけばお昼を過ぎていた。


 一人だとこんなに長時間買い物をすることはないけれど、複数人でワイワイ言いながらやるのは悪くないな。


 とはいえそろそろいい時間、流石に腹に何か入れたいところなのだが、それよりも彼女たちは新しく見つけた服屋に夢中なようだ。


「マスター、私も行ってきます」


「待っている間に適当に飯を食ってくるからゆっくり見てきていいぞ」


「かしこまりました。因みに、セクシーなのとキュートなのどちらがお好きですか?」


「前提条件がわからないから何とも言えないが・・・セクシーな方だな」


「なるほど、購入履歴との相違はありませんから嘘ではなさそうですね」


「だから何の話だよ。アホなこと言ってないでさっさと行ってこい」


 アリスを手であしらい服屋に入るのを見送ってから俺も別の方向へと足を進める。


 空腹の状態であの中に入っていく気力はない、店内もそこそこ大きい感じで彼女たちの性格を考えると選ぶのにも時間がかかりそうだ。


 さっきの質問の意図を考えるとめんどくさいことに巻き込まれるのは確定、危ない所にはわざわざ近づく必要はない。


 そんなわけで店から離れて、そのままフードコートへ。


 店頭に並んでいるのはどれも合成食ばかりだが、合成食と一言で言っても様々な味付けがあり見た目もゼリー状の物から本物そっくりなものまで幅広いラインナップがある。


 折角食べるなら美味しそうなのがいいけれど・・・お?あれなんてどうだ?


「いらっしゃい」


「ナノクリスプ、それとバイオサラダ一つ」


「ドレッシングは?」


「たっぷりで」


 目に留まったのは合成肉を使った揚げ物屋、この手の店は衣をたっぷりとつけて揚げることが多いのだがここは合成肉が丸見えな感じになっている。


 それでも油を通しているのは間違いないようで、提供されたものを恐る恐るかじってみると目に見えない衣がサクサクという触感を作り出していた。


 なるほど、だから『ナノ』なのか。


 ドレッシングも少しピリ辛でバイオレタスによく合っている。


 コロニーの楽しみといえばズバリ『食』、昨日の夜あれだけ高級品を食べて満足したはずなのにやっぱり俺の口は庶民なんだなぁと実感してしまった。


 合成食でも美味い物は美味い、言い換えると不味い物はとことん不味いわけで。


 小腹を満たしてからアリスに連絡を取ってみるも、まだ三分の一も進んでいないらしい。


 よかった、一緒に行かなくて。


 ふとできた一人の時間、折角ならと俺は俺でウィンドウショッピングを楽しむことにした。


 タブレットで何でも買える世の中だが現物を見るのはまた違う、さっき一緒に買い物をしてからそっちの欲望に火が付いたのか俺にしては珍しく普段見ない服屋雑貨に手を伸ばしていた。


 そういや元嫁と結婚する前はジャンクパーツを集めては適当に組み上げて遊んだりしてたよなぁ。


『何に使うかわからないゴミは捨ててくれ』と言われて泣く泣く処分したけれど、今はだれも文句を言わないわけだしそういうのをまた初めてもいいかもしれない。


 もしくはこうやって宇宙を旅できるようになったんだから各コロニーのエンブレムを集めてみるとか、そういえば前の仕事でそんなのを集めている人もいたな。


 データじゃなくて現物で持つのがいいんだって自慢してきたっけ・・・。


「よし、そうと決まればジャンク屋に行ってみるか」


 ここはノヴァドッグ、国中のスペースシップメーカーが集まるいわば企業エンブレムの聖地、コレクションにはぴったりだろう。


 先程よりも軽い足取りでモールの一番奥へと足を向けるのだった。

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