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36話 すり抜けチート

「いくぞ」


 少年の雰囲気が変わる。

 覚悟を決めた表情だ。


 俺を強敵と見て。

 このままでは勝負が長引くと判断して。


 それはまずいと思い……

 決着を急いだらしい。


「ふむ」


 普通ならば、それを焦りと判断して、笑うところだろう。

 所詮は子供と、笑うところだろう。


 しかし、この少年は普通の少年ではない。


 子供らしからぬ力はもちろんのこと。

 俺と相対しても折れない心を持ち。

 先の先を考えているらしく、とても賢い。


 そのような少年が選んだ選択は、短慮によるものではないだろう。

 なにかしら深い考えが。

 あるいは、必勝の策があるに違いない。


 俺は、剣鬼だ。

 剣に全てを捧げてきた。

 これからも、全てを捧げるつもりだ。


 負けるわけにはいかない。

 絶対に。


「……来い」


 俺は、剣を鞘に戻した。


 神速の抜剣術。

 必殺の構えだ。


 この技を見せて、生き残った敵はいない。

 全て我が刃に倒れてきた。


 この少年も同じ道を歩ませようではないか。


「……」

「……」


 にらみ合い……


「っ……!!!」


 先に少年が動いた。


 円を描くように駆けてくる。

 その軌道の先には、屋敷の柱が数本。


 なるほど。

 柱を縦にすることで、体の動きをできる限り隠そうというのか。

 そうしてある程度身を隠すことで、次の行動の予測を困難にさせる。


 なかなかに考えられた策だ。

 即興にしては悪くない。


 しかし。


 俺の『目』は、それほど甘くない。

 柱という障害物があったとしても、相手の動きを隅々まで捉えることができる。

 完璧に把握して、完全な予測をすることができる。


 さあ、来い。

 お前の策を打ち破り、その動きを完全に捉えて、我が刃で両断して……


「なっ……!?」


 驚きの声がこぼれてしまう。


 それも当然だ。

 なぜなら……


「柱をすり抜けた、だと……!?」


 少年は、回避することも迂回もしないで、まっすぐに柱に突っ込んで。

 そのままぶつかることはなくて、まるで幽霊のように柱をすり抜けてみせた。


 バカな。

 そのような技も魔法も聞いたことがない。

 いったい、どのようにしてそんなことを……


「……しまっ!?」


 驚きに囚われてしまい、致命的に対処が遅れてしまう。

 気がつけば少年が目の前にいて……


「がはっ!?」


 強烈な一撃を顎に喰らい、俺の意識は闇に沈んでいった……


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◇◆◇ お知らせ ◇◆◇
既存の作品を大幅にリファインして、新作を書いてみました。

娘に『パパうざい!』と追放された父親ですが、辺境でも全力で親ばかをします!

こちらも読んでもらえたら嬉しいです。

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