表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

34/38

34話 悪で構わない

「ぎゃあああああっ!?」


 悲鳴と共に兵士が吹き飛んだ。


 宙を舞い。

 くるくると回転して、おもちゃのように吹き飛んで。

 壁に激突。


 そのまま地面に落ちて、昏倒した。


 一応、生きている。

 骨などは折れているだろうし、後遺症も残るかもしれないが、命があるだけマシだと思ってほしい。


 本当なら、可能な限りの苦痛を与えて殺してやりたいところだけど……

 セフィーリアとリアラの前で、それはまずい。

 というか、さきほども、ついつい怒りに任せてやりすぎた。


 二人には、あまり血なまぐさいところは見せたくない。


「ひ、怯むな! いけっ、囲めっ! 相手は一人だ!!」

「ぼ、僕達を守れぇ!?」


 ナインベル家のバカ親子は、逃げるのではなくて、投降するわけでもなくて、あくまでも抵抗することを選んだ。


 バカが。

 ここでおとなしくなるのなら、最低限の温情は与えようと……


 ……いや。


 嘘だな。

 うん。

 温情なんて与えない。

 二人の前なので殺しはしないが、それに等しい苦痛と恐怖は味わってもらう。


 セフィーリアを泣かせた。

 リアラを傷つけた。

 そのことは、決して許せることではない。


「吹き飛べ」


 単純な突撃。

 ただ、改造コードで身体能力を10倍に強化しているため、俺を止めることはできない。

 暴走する馬車に立ち向かうようなもの。

 兵士達が次々と吹き飛ばされていく。


 脆い。

 この程度で俺を止められると思っていたのだろうか?

 だとしたら、ナインベル家のバカ親子は、相当なバカということになる。

 バカではなくて、バカの極みだな。


 ……なんて。


 そんなことを考える俺は、相当に頭に来ているみたいだ。


 セフィーリアとリアラは、この物語のメインヒロインで。

 悪役王子である俺の不倶戴天の天敵で。

 二人と仲良くしたのは、バッドエンドを避けるためのはず……だったけど。


「ただ……俺は、自分で思っていた以上に、セフィーリアとリアラのことを好ましく思っていたみたいだな」


 その二人に手を出した以上、覚悟してもらう。


 兵士達を吹き飛ばして。

 殴り倒して。

 投げ伏せていく。


「な、なぜ、ここまで……」

「ひぃっ……こ、こんなこと……」


 次々とやられていく兵士達を見て、ナインベル家のバカ親子は震えていた。


 息子の方は、完全に戦意を喪失しているみたいだが……

 ただ、親の方は、まだ抵抗の意思を瞳に宿していた。


「お、王族ともあろう方が、このようなことをしてタダで済むとでも!?」

「その言葉、そっくりそのまま返すが?」


 公爵令嬢の誘拐。

 一般市民の誘拐。

 それと、暴行未遂。


 どれも、許されることのない犯罪だ。


「し、しかし、執行する権利のないあなたが……! しかも、ここまで好き勝手に暴れるなど、あってはならないことだ! 王族であるあなたが、国の法を無視するというのか!? それでは暴君ではないか!」

「ああ、それで構わない」


 正規の手順に従っていたら、間に合わなかっただろう。

 リアラもセフィーリアも、一生消えることのない傷を負っていただろう。


 それを許すというのなら、『正しさ』なんていらない。

 悪でいい。


 なぜなら……

 俺は、悪役王子なのだから。


「くっ……こ、こうなれば……!」


 バカ親は、力強くこちらを睨みつけた。


 なにか切り札を持つか?


「おいっ、お前の出番だ!」

「……そのようだな」


 バカ親の呼び声に応じて、新しい男が姿を見せた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

◇◆◇ お知らせ ◇◆◇
既存の作品を大幅にリファインして、新作を書いてみました。

娘に『パパうざい!』と追放された父親ですが、辺境でも全力で親ばかをします!

こちらも読んでもらえたら嬉しいです。

― 新着の感想 ―
ここは騎士団長も連れてくるべきだったのでは・・・
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ