33話 蹂躙
突然、屋敷の壁が吹き飛んだ。
いくらかの兵士が巻き込まれて、派手に吹き飛んでいく。
舞い上がる粉塵。
その中から姿を見せたのは……
「ノクト様……!?」
――――――――――
屋敷は固く閉ざされていたため、問答無用で壁を吹き飛ばした。
そこから中に入ると、セフィーリアとリアラを見つけた。
セフィーリアは、ぼろぼろと涙を流していて。
リアラは、複数の兵士達に押し倒されていた。
あー……そうか。
なるほど。
こういう展開か。
うん、状況を理解した。
さすがに、原作にはこのような展開はないのだけど……
同人誌などの二次創作では、こういう展開はあるらしい。
ということは、この世界は、同人誌の要素も含まれているということか?
……まあ、考察は後でいいか。
それよりも今は、やるべきことがある。
なによりも優先して、やらなければいけないことがある。
「とりあえず……」
「なっ……!? あれは、殿下だと!? なぜ、ここが……」
「くっ……お前達、殿下を捕らえろ!」
「その汚い手をどけろ」
改造コード、使用。
身体能力、及び魔力を10倍に設定。
床を蹴り、砲弾を射出するかのように加速。
そのままの勢いで、リアラを組み伏せる兵士の一人を殴りつけた。
鎧を貫いて。
肉と骨を砕く感触。
兵士は吹き飛んで、壁にめり込んで……
その先を語る必要はないか。
「火<ファイア>」
突然のことに動揺して、動けない兵士達。
当然、その隙を逃すはずもなく、追撃の魔法を唱えた。
選択したのは、初級火魔法。
ただ、改造コードで魔力を十倍に跳ね上げているため、照射点を細く細く細く……極一点に絞る。
そうすることで、レーザーのような、極限まで圧縮された炎を放つことができて……
「ひぁ!?」
「ぎゃあ……!!!」
「あああ、俺の腕が!?」
兵士達の手足を斬り飛ばす。
そのままだとリアラが兵士達の血で汚れてしまうので、さっと動いて、救助するのも忘れない。
「大丈夫か?」
「は、はい……」
リアラは、ぽかんとしていた。
突然のことに、まだ感情が追いついておらず、あまり状況を飲み込めていない様子だ。
それは、セフィーリアも同じ。
リアラと似た表情を浮かべていた。
「セフィーリア」
「……」
「セフィーリア、大丈夫か?」
「……えっ、あ……は、はい。大丈夫……ですわ」
「すまないが、リアラを頼む」
「わ、わかりました……」
「リアラ、セフィーリアと一緒に、後ろで待っていてくれ」
「は、はい……」
リアラをセフィーリアに託す。
それから、結界を起動する魔道具を使い……
さらに、改造コードで、結界の強度を、今できる最大値まで引き上げておいた。
改造コードで、アイテムの数値もいじることができる。
30くらいしか回復しない薬草を、999回復できるようにしたり。
ただ、本来ありえない挙動となるため、改造コードで操作したアイテムは、一度の使用で壊れてしまう。
結界を展開する魔道具は、本来なら、幾度と使えるものだけど……
気にしない。
二人の安全に比べれば些細な問題だ。
「さて」
俺は、残りの兵士達と……
それと、ナインベル家のバカ貴族の親子に向き直る。
「待たせたな」
「ど、どうして、あなたがここに……いや、それよりも、その力はいったい……」
「答える義務も義理もない。それよりも、早く構えろ」
俺は……
「でないと蹂躙するぞ?」
前に出た。




