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24話 ドラゴンスレイヤー

「ちっ」


 思わず舌打ちをしてしまう。


 交戦を始めて、どれほど経っただろうか?

 五分? 十分?


 体感的には、もう半日ほど戦っているような気がした。

 それほどまでに密度が高く……

 絶望的な時間だった。


「こいつ、不死身か……?」


 騎士団長達と連携して、ありったけの剣撃を叩きつけた。

 改造コードアリの手加減なしで魔法も打ち込んだ。


 それでもドラゴンを倒すことはできない。

 それどころか、大したダメージを与えておらず、ヤツは未だピンピンしていた。


「……いや、火力が足りていないだけか」


 普通の剣、魔法では傷一つつけられない、ということだ。


 俺は、そこそこの力があると自負する。

 改造コードの力もある。


 そして騎士団長は、国でトップクラスの剣の使い手だ。

 それでも足りていない。


「なら、今以上の火力を叩き込むしかないか」


 方法はある。

 改造コードだ。


 すでに改造コードは使用している。

 ただ、威力を引き上げる倍率は10が最高。

 それ以上は、まだ、解析が済んでおらず使うことができない。


 ならば、今、この場で解析を進めて、さらなる威力を叩き出すしかない。


「騎士団長……他の者と協力をして、十分……いや。五分でいい、時間を稼ぐことができるか?」


 攻撃をしつつ、彼の隣に並んで、そう問いかけた。


「五分……ですか? なにか策が?」

「とっておきの一撃を叩き込む。ドラゴンでも無事に済まないはずだが、ただ、準備に時間がかかる」

「なんと。そのような切り札を……?」

「……いざという時のために持ってきた、特別製の魔道具だ」


 魔道具、という嘘を吐いておいた。

 あからさまな威力になるだろうから、改造コードのとがバレないように、という保険だ。


「ただ、起動に時間がかかる。稼いでくれるか?」

「御意に」


 疑うこともなく、質問を返すこともなく。

 騎士団長は即座に頷いて見せて、部下と一緒にドラゴンに対する攻撃を再び開始した。


 ……本当、俺にはもったいないくらいの人だ。

 できることなら、これからもあの人から剣を学び続けたい。


「そのためにも……!」


 さらなる改造コードの解析、絶対に成功させてみせる!


 集中。

 集中。

 集中。


 世界を構成するプログラムを読み込んでいく。

 あまりにも複雑で。

 情報の洪水を叩きつけられているかのようで、処理が追いつかない。


 取得する情報は最低限に。

 必要なものだけを選び取り、目的の改造コードを急いで組み上げていく。


「……っ……」


 改造コードの作成には、大きな集中力だけではなくて、魔力も消費する。

 急激に消費されているせいで、頭痛と目眩を覚えた。


 しかし、悲鳴は我慢だ。


 騎士団長達ががんばってくれている。

 村人達も耐えてくれている。

 そして、聖女も……


 ならば、俺が折れるわけにはいかない。


「……よしっ、できた!」


 対象の防御力を一時的にゼロにする改造コード。


 こちらの攻撃力を、この短時間でさらに大きく上げるのは難しい。

 それができるのなら、今までの時間に解析を進めて、攻撃力100倍とか実装している。

 ただ、まだそこまでには至らない。


 なので、逆転の発想。

 こちらの攻撃力を上げるのではなくて、相手の防御力を下げることにした。

 そうすれば攻撃が通るはずだ。


「これで……いけっ!!!」


 改造コード、発動!

 10秒間ではあるものの、ドラゴンの防御力をゼロにした。


「皆、離れろっ!」

「あれは……はっ!」


 こちらを見て状況を理解したらしく、騎士団長をはじめ、ドラゴンと交戦していた騎士達が一斉に退避した。

 しかも、矢や魔法などの遠距離攻撃を叩き込み、足止めをしつつ後退する。


 間髪入れず、魔法を唱えて……


「グゥ……ガァアアアアアッ!!!」


 ドラゴンが怒りに吠えて。

 刺すように俺を睨みつけて。

 そして、超高熱のブレスを放つ。


 まずい。

 ヤツの方が速い。

 このままだと、合体魔法を放つ前に、俺は……


「ダメぇっ!!!」

「なっ……!?」


 悲鳴のような声。

 それと同時に、聖女が俺の前に割り込む。

 体を震わせつつも、俺を守るように両手を広げて……


「っ!?」


 ……そして、ブレスが着弾した。

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◇◆◇ お知らせ ◇◆◇
既存の作品を大幅にリファインして、新作を書いてみました。

娘に『パパうざい!』と追放された父親ですが、辺境でも全力で親ばかをします!

こちらも読んでもらえたら嬉しいです。

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