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16話 誕生日パーティー

 そして、セフィーリアの誕生日パーティーが訪れた。


 舞台は彼女の家。

 華やかに飾りつけられた広間に、たくさんの料理とスイーツ。そして、酒が並ぶ。


 そんな会場に負けないくらい華やか服やドレスに身を包んだ貴族達。

 談笑しつつ、本日の主役が現れるのを待つ。


 俺もすでに会場に入っていた。

 目立たないように、と端の方で待機しているのだけど、ちょこちょこ挨拶にやってくる者がいる。

 王子の肩書は伊達じゃない。


 とはいえ、一通りの挨拶はすでに済ませた。

 他は父上のところに足を運んでいる様子で、俺にもう興味はないようだ。


 むしろ、本命がそちらなのだろう。

 噂に聞くわがまま王子なんて、本当は相手をしたくないはず。


 まあ……

 うまく話をすることで、そうなるように誘導したため、俺のせいでもあるが。


「みなさま、おまたせいたしました」


 涼やかな声が響いて、皆の視線がそちらに向く。


「アリアンロッド家が長女、セフィーリアにございます」


 そんな、執事のような言葉を使う父親の案内で、セフィーリアが登場する。


「みなさま、はじめまして。セフィーリア・アリアンロッドです。どうぞ、よろしくお願いいたします」

「……」


 綺麗なカーテシーをするセフィーリアを見て、俺は、思わず……見惚れてしまう。


 彼女が身につけているドレスは、優れた職人が魂を捧げて作った一品なのだろう。

 華やかというだけではなくてデザイン性にも優れているが、しかし、それはあくまでもおまけ。

 セフィーリアは輝くほどに綺麗で、素晴らしいドレスも、彼女を引き立てるおまけになっていた。

 指輪などの装飾品も身につけているが、それもまたよく似合っていた。


 天使。

 あるいは妖精。

 ついついそんな言葉を思ってしまうほど、彼女は綺麗だった。


 原作をプレイしているから、本当の主人公であるセフィーリアが綺麗ということは理解していた。

 いや、していたつもりだった。


 まさか、ここまでなんて。

 精神年齢が大人の俺が、子供に見惚れるとは……いや、本当にすごいな。


「おぉ、これは素晴らしい!」

「まさに妖精のよう! なんて可憐なのだろうか」

「挨拶をよろしいですかな? 私は……」


 さっそく貴族連中が群がっていた。

 まるで、砂糖の塊に集まるアリだ。


 セフィーリアも、内心は面白く思っていないだろう。


 とはいえ、排除するわけにもいかない。

 貴族とはこういうもの。

 横の繋がりを重視して、こうして顔を売ることは当たり前のようにするのだけど、それが悪人の証拠となるわけじゃない。

 善人の貴族だとしても、こういうことはする。


 それを理解しているからこそ、セフィーリアもおとなしく笑顔を振りまいているのだろう。


「……さて」


 俺がするべきことは、善人ではなくて、悪性腫瘍のようなろくでもない貴族を排除することだ。

 あるいは牽制。


「がんばろうか」




――――――――――




 公爵家に恨みがある者、逆恨みをする者。

 あるいは嫉妬する者。

 そういう連中に積極的に声をかけて、セフィーリアと接触する機会を潰していく。


 話の邪魔をするだけ。

 話の腰を折り、気勢を削ぐだけ。

 とても単純で簡単なものだけど、これが意外と有効だ。


 例えば、小心者の悪人が犯罪を犯そうとする時。

 やってやるやってやるぞ、と自分を鼓舞して決意を固めて、いざ実行に移す……その直前で、せっかくの集中を乱されるようなことがあれば?

 声をかけられて、固めた決意を散らされたら?


 犯罪を犯す勇気はなくなり、引き下がるだろう。


 俺は、それと同じことをしている。

 声をかけることで相手の集中を乱して、セフィーリアに対するつまらない嫌がらせを止めさせる。


 ……と、言葉にすると簡単そうに思えるのだけど、実際はけっこうな労力を使う。


 なにせ、愚か者はわりと多い。

 一人一人に声をかけて回り、適度な時間で切り上げないといけない。

 そう考えると、なかなか頭を使う作業なのだ。


「とはいえ、これで終わりか?」


 セフィーリアに悪意を持つ者は関わらせないようにしておいた。

 ただ、これで安心することはできない。


 原作の知識は持つものの、ここは物語と違い、実在する世界だ。

 知識を持っていたからといって、完璧な行動は不可能。

 不測の事態が起きて当たり前。


 十分に注意をして……


「おや。キミが、セフィーリアなのかい?」


 ふと、妙にキザったらしい聞こえてきた。


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◇◆◇ お知らせ ◇◆◇
既存の作品を大幅にリファインして、新作を書いてみました。

娘に『パパうざい!』と追放された父親ですが、辺境でも全力で親ばかをします!

こちらも読んでもらえたら嬉しいです。

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