41話 チュンチュン
「……ぅ……」
窓の隙間から差し込む朝日で目が覚めた。
ゆっくりと体を起こして……
ベッドに手をつこうとしたら、なにやら柔らかい感触が。
「すぅ……すぅ……」
「っ……!?」
シオンが隣で寝ていた。
なにも着てなくて、大事なところが見えそうに……
「……そっか。俺……うん、そうなんだよね」
昨日は、シオンと一夜を共にして。
色々と……うん。
本当に色々とあった。
「……やばい。思い返すと、ものすごく恥ずかしくなってきたかも……」
というか、俺も裸だった。
ベッドから降りて、慌てて服を着る。
「ん……ご主人様……?」
シオンも目が覚めたらしい。
ベッドの上で体を起こして……
「あっ、ま、まった! シオン、そのままだと……!」
「え? ……あっ、は、はい」
シオンは頬を赤く染めつつ、布団で体を隠した。
……昨夜はかなり大胆で、行為の時も激しかったのだけど。
でも、普段は、こうして恥ずかしがるんだな。
と、ついつい昨夜のことをまた思い返してしまう。
「えっと、その……本当に申しわけないのですが、あちらを向いていただけると」
「え? ……あっ、うん、そ、そうだよね! ごめん!」
「い、いえ……私の方こそ、わがままを言ってしまい申しわけありません……」
「……」
「……」
気まずい沈黙。
でも、言うほど気まずくないのかも……?
どこか甘く。
そして、温かい感じがして、悪くないな、って思えるのだった。
「あの……ご主人様?」
「あっ、ごめん!?」
我に返り、俺は、慌てて後ろを向くのだった。
――――――――――
服を着て、色々と乱れている部屋を整えて。
それから朝食を食べて、再び部屋に戻り、今後のことを話し合う。
「ご主人様、これからどうされるのですか?」
「うーん……しばらくは、事件の後始末に協力したいかな」
リヴァイアサンの討伐は成功した。
ただ、街全体が大混乱に陥ったせいで、あちらこちらで問題が起きているらしい。
それに、事件を引き起こした黒幕の問題も、まだ解決していない。
マリアさんは確信に近い推測を立てたものの、証拠がない。
これから証拠を集めることになるだろうけど、それはとても大変だ。
ここまで関わった以上、はいさようなら、なんてことはできない。
俺にできることをやっていきたい。
……いきたいのだけど。
「どうか、私のことは気になさらないでください」
「あれ? 俺、まだなにも言っていないんだけど……」
「ご主人様は、ある意味で、とてもわかりやすい方なので」
そんなにわかりやすいかな?
……わかりやすいかもしれない。
親方や仲間からも、俺は隠し事に向いていないな、って何度も言われていたっけ。
「シオンには、すごく申しわけないんだけど……」
「いえ。私のことは気になさらないでください」
「でも、ファーグランデに残れば、その分、北に行くのが後回しに……」
「私のことは二の次で構いません。まずは、ご主人様のことを一番にしてください」
「うーん……わかった。ひとまず、シオンの気持ちに甘えさせてもらうよ」
シオンは、けっこう頑固なところがある。
こうと決めたら、なかなか退いてくれない。
ただ、それは俺を一番に考えてくれているからで……
頑固なところは、シオンの優しさでもある。
今は、それに甘えることにしよう。
そして、後でシオンのことを一番に考えよう。
そうして、シオンからもらった色々なものを返していきたい。
「……」
「どうされたのですか、ご主人様? ぼーっとしていますが」
「あ、うん……ふと思ったんだ。シオンと出会っていなかったら、俺、どうしていたのかな……って」
たぶん……あのまま、鉱夫を続けていただろう。
ちょっと厳しいけど、でも、優しい親方。
気のいい仲間達。
そんな人達に囲まれて、鉱山に通い続けて……
そのまま、一生を終えただろう。
でも、今は違う。
シオンと出会ったことがきっかけになり、俺は、外の世界に出た。
シオンを北に送り届けることが目的だけど、でも、他に色々な新鮮な経験をすることができた。
シオンのおかげだ。
彼女が俺の人生を変えてくれた。
新しい視点をくれて、新しい楽しみ方をくれた。
……そう伝えると、シオンがくすくすと笑う。
「それは私のセリフですよ」
「そうなの?」
「ご主人様は、私に色々なものを与えてくれました。それは、どれも温かく輝いているもので……こうして与えていただいた想いは、全部、私の宝物です」
「おおげさだなあ」
「むぅ、本気なのですが……」
ちょっと不服そうなシオンだった。
けっこう大げさな話に聞こえたのだけど……
でも、否定するようなことじゃない。
それがシオンの気持ちなら、それでいい。
「俺さ」
シオンの手を取る。
そのまま彼女の目をまっすぐに見て、言う。
「がんばるよ」
「ご主人様……?」
「シオンのおかげで、俺は、新しい道を見つけることができて。シオンも、いい影響を受けている、って言ってくれて。そういう……なんていうのかな? 互いにいい影響を与えることができる、すごい理想的な関係を築いていけるように、がんばるから」
「……はい」
シオンも、俺の手を握り返した。
「だから……これからもよろしく、シオン」
「はい、こちらこそ、よろしくお願いいたします」
シオンは、にっこりと笑い……
「どうぞ、これからも末永くよろしくお願いいたします……ご主人様♪」
ここで終わりになりますが、最後がこんなタイトルでいいものなのか……?
いいですね! よし、気にしない。
奴隷という名の彼女っぽい二人組の話でした。
こういう話多いな? 好みなのかもしれません。
楽しんでいただけたら嬉しいです。
最後まで読んでいただき、ありがとうございます!
◆◇◆ 追加のお知らせ ◆◇◆
短編を二つ、書いてみました。
『婚約破棄代行ブッタギル ※会社名です』
https://book1.adouzi.eu.org/n7374ki/
『唸れ聖女の鉄拳!~異世界を救った聖女ですが、日本に戻ったらゾンビがあふれる世界になっていました~』
https://book1.adouzi.eu.org/n7371ki/
こちらも読んでもらえたら嬉しいです。




