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33話 リヴァイアサン

 ピシッ。


 ガラスにヒビが入るような甲高い音が響いた。

 それは一回だけにとどまらず、何度も何度も繰り返されて……


 大きな音になって。

 不安と恐怖を煽るように、空間を震わせていく。


「まさか……」


 マリアさんが顔を青くした。

 ヘイズさんも同じような表情だ。


 二人の視線の先……水晶の中で寝ているはずのリヴァイアサンが動いていた。


 卵から孵化する時のように体を動かして。

 ゆっくりと水晶に亀裂を入れて、剥がしていき……


「ルァアアアアアアアァァァッ!!!!!」


 水晶が全て砕け散り……

 そして、リヴァイアサンがこの世界に生まれ落ちた。


「なんてこと……まさか、本当に……」

「くっ……! みんな、急いでここから逃げろ! ヤツは、俺が引き受ける!」

「ヘイズ!?」


 ヘイズさんは剣を抜くと、リヴァイアサンに向けて駆け出した。


「相手が災厄級の魔物だとしても、俺ならば、時間を稼ぐことが……がはっ!?」


 リヴァイアサンは尾を鞭のようにしならせて、打ち、ヘイズさんを吹き飛ばした。

 十メートル近くを飛ばされて、壁に叩きつけられる。


「な、なんだと……? この俺が、なにもできずに、たったの一撃で……」


 ヘイズさんは立ち上がろうとするが、立ち上がることができない。


「ヘイズさん、大丈夫ですか!?」

「あ、ああ……すまない」


 シオンが慌てて駆け寄り、ポーションを使用した。

 完治とはいかないものの、歩ける程度には回復したらしく、ヘイズさんが立ち上がる。


 そして、改めて剣を構えた。


「今度こそ、俺が時間を稼いでみせる。その間に……」

「バカなことを言わないでちょうだい」


 マリアさんがヘイズさんの隣に並んで、杖を構えた。


「あのリヴァイアサンは異常よ……いくら災厄級だとしても、ここまで強いなんてことはない。その理由はわからないけど……今、迂闊に背中を見せたら、殺されるだけよ」

「それは……」

「みんなで協力して、痛い一撃を食らわせてやりましょう。そうして怯んだところで、急いで脱出……いいわね?」

「……わかった」


 渋々という様子ではあったが、ヘイズさんは頷いた。


「クロード君とシオンちゃんも、それでいい?」

「はい、問題ありません」

「私も問題はありませんが……しかし、うまく戦うことができるかどうか」


 シオンの声は震えていた。

 災厄級の魔物なんてものを目に前にして、怯えるな、という方が無茶だ。


 ただ……


「うーん……?」


 俺は、不思議と恐怖は感じていない。

 どちらかというと、刈り取るものの方が怖いくらいだ。


 強さは圧倒的に違うらしいけど、本当にそうなのだろうか?


「アアアァアアアアアーーーーー!!!」


 リヴァイアサンが吠えて、空気を震わせつつ、こちらに突撃してきた。


 速い。

 高速で巨大な壁が迫ってくるかのよう。

 巻き込まれたら、ひとたまりもないだろう。


 俺達は、それぞれ横に跳んで回避した。


「喰らいなさい……紅の参式・エクスプロージョン!」


 マリアさんが魔法を放つ。

 炎弾がリヴァイアサンに着弾すると、爆発的に大きくなり、紅がヤツの体を飲み込んだ。


 しかし、リヴァイアサンは平然としていた。

 体を素早くひねらせることで、己にまとわりつく炎を散らした。

 さらに自らの頭部を地面に叩きつけて、その衝撃で床の破片を矢のように飛ばす。


「くっ……なんて、でたらめな攻撃を!?」

「気をつけて! たったの一発で、私の結界を貫通したわ!」

「ご主人様! どうか、私の後ろに……」

「いや。そういう、いてて……わけにはいかない、いてて……から、いてて」


 シオンを背中にかばい、代わりに破片を浴びた。


「だ、大丈夫なのですか……?」

「ちょっと痛いけどね。でも、鉱山で仕事をしていると、こうして破片が飛んでくることは日常茶飯事だったから」

「……私、ご主人様と一緒にいると、鉱夫の認識がおかしくなっていきそうです」


 そう言われても、俺が特別すごいわけじゃない。

 頑丈さで言うのなら、親方の方が上だ。


 なにしろ、あの人は、家のような岩に押し潰されてもピンピンしていたからなあ……


「さすがクロード君ね、ナイスよ!」

「よく時間を稼いでくれた!」


 時間を稼いだつもりはなかったのだけど。


「今度こそ……!」

「喰らえっ!!!」


 マリアさんが雷撃魔法を放ち、それをヘイズさんが剣で受け止めた。

 紫電を帯びる剣で、リヴァイアサンを斬りつける。


 バチバチと紫電が弾けると同時に刃が通り……


「ギィ……ガァアアアアアッ!!!?」


 初めて、リヴァイアサンにダメージが通った。


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