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27話 シオン・その5

 一人で逃げろ。


 ご主人様に命令された時は、本当に絶望して……

 ただ、同時に、絶対に従ってなるものか! と反抗の気持ちが湧いてきた。


 その勢いのまま反転して、戻り、ご主人様を助けることができた。

 本当によかった。


 その後、戦いの疲労から、ご主人様は気絶してしまう。


 同時に、気絶したことで私に対する命令も打ち消されて、抗う必要がなくなり、傍にいることができた。

 慌ててポーションなどでご主人様の治療をして。

 膝枕をして、様子を見た。


 しばらくしてご主人様が目を覚まして……

 そこで、私の感情は爆発してしまう。


 奴隷にあるまじき行いで、あれこれと色々な言葉をぶつけた。

 ただ、要約すると、言いたいことはただ一つ。


 ……私を一人にしないで。


 そんな子供じみたことを泣きながら訴えていた。

 我ながら恥ずかしい。

 思い返すと顔が熱くなる。


 ご主人様は呆れなかっただろうか?

 引いたりしなかっただろうか?


 ご主人様はとても優しい方だから、いきなり冷たくなるということは、たぶん、ないと思うのだけど……


 ……というか。

 他にもっと気にするところがあるのでは?


 ずっと一緒にいてほしい、と。

 死ぬまで一緒だ、と。

 私は確か、そのようなことを口にして……


「それは……もしかして、プロポーズなのでは?」


 かなり、それに近い言葉を口にしていたと思う。


「あああああああぁぁぁーーーーー……うぅうううううううぅぅぅーーーーー……あうあうあう、ひぃん……うあうあうあ、あうあうあう、うーーーあーーー!!!?」


 悶えた。

 思い切り悶えた。


 私はなんてことを言った?

 正気か?

 いや。

 どう考えても正気ではない。


「本当に私は、な、なんて恥ずかしいことを……」


 思い返すだけで悶絶してしまう。

 もしも、あの光景が目の前で再現されたら、私は恥死してしまうだろう。


「……でも」


 ご主人様は、どう思っただろう?


 私の言葉を真に受けた?

 ……せ、責任を取っていただける?


 あるいは、深くは気にしていない?

 スルーすることにした?


 正直、どの可能性もありそうだ。

 それ故に、ご主人様がどのように受け止めたのか、まったく想像ができない。


「もしも、ご主人様が私の気持ちを受け止めていただけるとしたら……?」


 その時のことを想像しようとして。

 しかし、うまく想像できない。


 たぶん、私の気持ちが……まだ曖昧なままだから。


 ご主人様はとても優しく、素敵な人だ。

 好きか嫌いかでいうと、間違いなく好きだ。


 ただ、ライクとラブなら?


 後者だと思うのだけど……

 ただ、そこの気持ちがハッキリとしていない。


 ただの憧れなのか?

 それとも、本気なのか?

 断言することができない。


 それと、私は奴隷だ。

 奴隷に好かれても、ご主人様が喜ぶかどうか。


 もちろん優しい人だから、笑ってはくれるだろうけど……

 ただ、ずっといっしょにいられるかどうか、それは別な話なわけで……


「はぁ……ちょっと、頭がこんがらかってきたような。それと……心も」


 私は、どうしたいのだろう?

 この気持ちを、どのように昇華したらいいのだろう?

 そして、どこに向かえばいいのだろう?


 今、一つだけ言えることは……


「あの優しい人と、今は一緒に……」

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