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モフモフな子どもが二人もいるのに、結婚なんてできません!  作者: 黒星★チーコ(黑星ちい子)


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⑬お茶の価値

 四人は酒場から、再び応接間に戻った。


 今、ロルフは冷めていくお茶のカップをじっと見つめている。

 デーツは自分の左手を、ザクスは魔法で動く水時計をそれぞれ見つめていた。

 マミリアはドキドキしながら、彼らを静かに見ている。


「……うん、今、魔法の効果が切れました」


 ロルフが言うなり、ザクスは時間を確認した。


「おう、ざっと15分ってとこか。マミリアの茶を水筒に入れて持ち運んでも、ダンジョンじゃ使えないってことだな」

「こっちも効果は今のところ目に見えないね」


 デーツはひらひらと左手を見せる。そこには先程、彼女自身が刃物でつけた小さな切傷があった。血は止まっているが、傷口は赤く生々しい。


「マミリアちゃんのお茶の癒し効果は、怪我とか重い病気にはすぐ効くわけじゃない、ってことね」

「すみません……」


 しょんぼりとするマミリアに、三人は慌てて声をかける。


「いやいや、謝んなよ! これでも充分凄いんだぜ? 癒しの魔法は貴重だからな!」

「マミリアちゃん、傷は治らなかったけど、痛みはもう引いてるから効果はあるわ!」

「さっき言ったようにこれはあくまでもテストですから!」


 そう、テストである。

 マミリアの持つ能力は、お茶に微力な癒やしの魔法を付与するものだった。だが、彼女自身が今日この日までその能力を自覚していなかった為に、如何せん効果の詳細不明なところが多い。


 それでとりあえず、マミリアは応接間で新たにお茶を淹れることになった。

 そのお茶のひとつはデーツが自分の手をわざと傷つけてから飲んだ。もうひとつは飲まずに、効果時間がどれくらい持つかをロルフとザクスが確認したのだ。


「おそらくだけれど、マミリアちゃんの魔法は、お茶を飲んだ人間の魔力と体力を回復したうえ、痛みも和らげるのね。その回復によって、自己治癒能力も高まるから、傷や病気の回復も早まってるはずよ」

「しかも、これだけ何度もお茶を淹れてるのに、マミリアの魔力は一切減ってないというのが凄い。能力自体はあまり強くは無いですが、かなりレアな能力ですよ」


 デーツとロルフの話を聞いて、ヒュー♪とザクスが口笛を吹いた。


「へぇ~すげぇなあ。まるで飲むジグロの実じゃねぇか。しかもジグロの実より美味いし……ん? あれ? これヤバいんじゃねぇの?」


 デーツがニッと口角を上げる。


「気づいたかい。早く商人ギルドにこの話を持っていきたいところだけど。でもその前にマミリアちゃんの意思を聞かないとねぇ」

「え? 私のですか?」


 突然ザクスがヤバいと言ったことや、商人ギルドの話が出てきたので、マミリアは理解できずパチパチと瞬きをする。


「あぁ。マミリアちゃん、このモードレの街に住む気はある?」

「え?」

「マミリアちゃんは山の向こうから山賊に攫われて来たんでしょ。本当は旅の途中だったんじゃない?」

「あ! あの、実は故郷の方向になんとなく向かっていただけで、特にあてのない旅だったので……」


 マミリアは故郷に居場所がなく、頑張って長旅の末に王都に辿り着いたことを簡単に説明する。王都から逃げ出した理由は流石に話せず、王都の水が合わなかったとぼかして語った。


「そっか。これから先、そのお茶を求めてアンタを雇いたいって人はゴロゴロ出てくると思う」

「そうですか? 私のお茶なんて……」

「こらこら『なんて』とか言わないの!」


 デーツはマミリアのおでこを軽くつつく。


「さっきロルフが言ったように、マミリアちゃんのお茶はとてもレアな能力だと思うよ。だから、自分たちのパーティーに入ってくれっていう冒険者や、癒しの力を強化するって名目で教会がスカウトしにくるかも。あと、商人ギルドのギルド長なら、マミリアちゃんの為にカフェの一軒くらいポンと建てちゃうかもね」

「へ……カフェを!?」


 マミリアはつつかれたおでこを押さえ、目を白黒させる。


「けど、できればここの酒場でマミリアちゃんが働いてくれると、アタシは嬉しい」


 デーツはふっと優しく笑った。


「酒場にはダンジョンから戻ってきたばかりの冒険者が集まるんだ。皆疲れてるし傷ついてもいる。だけど全員が高い料金を払って教会で治癒をしてもらえたり、商店で高価な治療薬が買えるわけじゃない」

「……だからお茶を?」

「そ、酒場で治療薬よりも安価なお茶を提供して、皆の自己回復が高まるならすごくいいと思うのさ」

「私を雇っていただけるんですか?」

「うん、そうしたいんだけどねぇ……」


 ギルドのサブマスターは急に歯切れが悪くなった。


「なんせ、お給料はそれほど高くは出せないの。商人ギルドなら多分目の玉が飛び出るような額を提示できるだろうけど、その分提供するお茶代も跳ね上がるだろうねぇ。うちは皆に飲んでもらうために安価でお茶を出したいからさ……」

「あの、どれくらいですか?」


 マミリアは恐る恐る、デーツに尋ねる。王都のカフェは住み込みだったこともあり、給料は雀の涙だった。ユーステスはその倍の金額で雇ってくれたのだが、同じくらいを期待するのは厚かましいだろうと思いながら。


「うーん、お茶代はできれば、一杯銅貨六枚で抑えたいんだよね。それに茶葉なんかの原価を考えると、半分はこっちで貰って、残り銅貨三枚をマミリアちゃんの取り分ってのがギリギリ出せるラインかなぁ」

「えっ!?」

「えっ!?」


 マミリアとザクスから同時に声が上がる。


「そんなに? 高すぎませんか!?」

「おい、それは安すぎだろ!?」


 二人は互いに顔を見合わせた。


「えっ?」

「えっ?」


 二人の様子にロルフは軽く吹き出したし、デーツはニヤリとする。


「うんうん、高いと安い、両方の意見が出るってことは適正な値付けかな」


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