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第三部:『地獄狼』決戦扁

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 ――ハンガリアの街の大広場前。

 すでにそこには、十万を超える民衆が集結していた。

 奇しくも襲い来る軍勢とほぼ同数か。けれど、老人や女性を除けば男性は半分以下。さらにそのほとんどは戦闘訓練を受けていないわけだから、実戦に使えるのは、五千人もいれば十分か。



「……戦力集め、もう少し早くやっておけばよかったかしら……」



 しかも敵軍は死んでも死なない死兵たちだ。

 そう考えると……少し、厳しいわね。



「さて」



 まぁ愚痴ってはいられない。

 たとえ――ほとんどの人間が逃げ出すとしても、領主としてやるべきことがある。



「アンタたち、よく集まってくれたわね」



 ヴァイスくん、アシュレイ、シャキールくん、せっちゃん、ケーネリッヒ、ついでにドクター。

 代表的な異能持ち(ギフトユーザー)らを背後に立たせ、わたしは広場前の壇上に躍り出た。


 ドクターの開発した音声増幅器(マイク)を手に、十万の民衆と対峙する。



「もう知ってるでしょうけど、今この街は、『地獄狼』の軍勢に飲み込まれようとしているわ。連中の進撃速度は相当なもの。十数分後には、この街は敵軍十万に攻め立てられるでしょう」 



 だから。



「だから、怖いものはさっさと逃亡を――」



 しなさいと、そう言おうとした時だ。

 静寂の空気を斬り裂くように――あるいはこれまで、ずっと息を吸い続けてきたように。

 民衆の声が、爆破した。



『レイテ様ァアアアアアアアアアーーーーーーーーッッッ!!! 戦いましょオォオオオオオオーーーーーーーーッッッ!!!』


「!?」



 は、はぁ!?



『ブッ殺してやりましょう! クソみたいな傭兵団なんざ!』

『ハンガリア領を荒らされて堪るかァーーーーッ!』

『やってやりましょうぜぇ~~~~~~~~ッッッ!』


 

 響き渡る声、声、声声、声声声声声声声声声声声声声声声声声声――!

 

 少数だけが声を上げているんじゃない。

 老人が。女性が。子供が。気弱そうに見える者が。

 誰もが――そう、本当に十万を超える全員が、〝戦ってみせる〟とそう宣言していた……!



「アンタたち……」


『オレたちの大切なモノをッ、奪われて堪るかァーーーーーーッ!』



 広場にぎっしりと集まった人々。

 いつしかハンガリア領を示すための、ハートに近しい刻印旗が高々と掲げられ、風にはためく音が鼓動を加速させる。人々の目には燃え上がる決意が宿り、拳を振り上げるその手には、迷いの影すらなかった。

 本当に老若男女一切問わず。口々に、『いざ戦争を』と覇気ある声を張り上げていた。


『勝利を掴みましょうぞッ!』

『最恐の傭兵団を打ち倒しッ、最強の栄光をハンガリアにもたらしましょう――!』



 拳を突き上げて叫ぶ人々。

 同時に誰かが地面を踏み鳴らし、やがてそれは十万人が重ねる大震動となる。周囲の建物が揺れ、街中の空気が激しく熱される。

 声の合間には、どこからか鼓笛隊が現れて戦律を奏で、群衆の昂ぶりをさらに煽った。眩みそうになるほどの熱気が溢れる。もう止められない。



『ハンガリア領の力をッ、見せてやるゥーーーーーッッッ!』



 さらに、さらに、さらにさらにさらにと。全員が声をとめどなく張り上げ、闘争の咆哮を叫び上げた。

 喉を枯れてもまだまだと――ああっ。



「アンタたちってば……なんて、凶悪なのよ……っ!」



 止まらない彼らの熱気は、まるで戦いが始まる前に、この地を戦場に作り替えていくようだった。

 あぁもうまったく! 本当にもう!



「やっぱり、アンタたちは信用できない悪党どもよ! 十万の死兵を前にして、〝戦う〟!? 〝栄光〟!? 〝力を見せる〟!? 本当に欲深いろくでなしどもっ!」



 だからこそ――!



「最高よッ! この極悪令嬢ッ、レイテ・ハンガリア様の兵士にふさわしいわ!」



 見せてやりましょう視せてやりましょう魅せてやりましょう!

 誰もが懸命に生きて作り上げたわたしたちの世界、魔の辺境領『ハンガリア』!

 その底力を、愚か極まる傭兵結社にねぇ――!



「演説なんざしてやらないわ! アンタたちへの命令は一つッ! 敵を全員ッ、ブッ殺すわよォオオオオオーーーーッッッ!」


『ウォオオオオオオオオオオオオオオオオオオオーーーーーーーーッッッ!』




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― 新着の感想 ―
めっちゃ鳥肌たった!!!!!!! すごい!!領民の熱さや覚悟、レイテ様の震え上がる心が伝わりました!!
レイテ様とその民お前ら最高に最凶だよおおおおおお!!!!
最新話まで追いつきました! まんじ先生の描く熱い展開、胸に響くぜーッ! ってなわけで読んでテンション上がったので感想ぺたぺたさせていただきました!! 応援してまあああああす!!!!!!!
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