64:地獄の王子キャンプ!!!
前回に
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「ねえアシュレイ、貧民街では仲間とかいたわけ?」
「えぇもちろん。私は強かったので、大勢手下がいましたよ。よくみんなで抗争したものです」
抗争て。過激な青春時代ねぇ……。
「兄貴分として、庇護している子たちもいましたよ。たとえばヴァンピードという少年がいたのですが、彼ってばギフト持ちなのに気が弱くて……」
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という会話を追記しました
ある日の昼下がり。一通りの仕事を終えたわたしは『魔の森』に来ていた。
その理由はというと……、
「行くぞお前たち。〝ストレイン流異能剣術〟奥義――『抜刀・斬煌一閃』」
「「うぎゃぁあああああーーーッ!?」」
最強王子・ヴァイスくんの放つ光刃抜刀の爆発剣技。それにぶっ飛ばされていくのは、幼馴染のケーネと黒髪侍のせっちゃんだった。
「やってるわねぇ~アンタたち」
そう。わたしはヴァイス師匠によるキッズたちへの実戦訓練を見に来ていた。命じた身として、たまには監督してあげないとね。
「やっほーヴァイスくん。容赦なくやってるわね」
「ああ、レイテ嬢……!」
ハッとこっちを見るヴァイスくん。なんか駆け寄ってきた。おっきい犬みたいで可愛い。
「どしたの? なでなでされたいの?」
「それは……後でされたい。ってそうじゃなく、こんな場所に来てはダメだろう。ここは『魔の森』だぞ?」
あぁそうね。『魔の森』っていうのは国境の土地。つまり人間が開拓していない地から、恐ろしい魔物がドシドシ押し寄せてくる窓口なのよね。
怖い場所ってのはわかってるわ。でも、
「大丈夫でしょ? 聞いたわよ。キッズたちとの修行前に、周囲の魔物を掃討してるってね」
おかげで押し寄せる魔物は激減してしまった。
街の兵団員たち、感謝してるわよ? 魔物退治は危険だもの。お給料はいっぱい出してるけど、命の危険があることには変わりないからね。彼らやその家族にとってもありがたいことよ。
「街の連中はもちろん、わたしも感謝してるわ。ヴァイスくんってば建設作業から討伐までやってくれてるんだから」
「むむ……こそばゆいな……」
あらあら。ちょっとだけ頬が赤くなったわ。無表情だけど、テレてるのがよくわかるわね。かわいい。
「ともかくレイテ嬢、一人でこんなところに来てはダメだ。キミの身に何かあったらどうする」
「ああ、大丈夫よ。ちゃんと護衛としてムキムキソニアくん連れてきたから」
さわやかマッチョが特徴の、元王国騎士団の副団長くんね。ヴァイスくんの一日二十時間修行に十時間はついてこれるという強者よ。
「ソニアが? 一体どこに?」
「どこにって、すぐ後ろに控えてて……って、あら?」
ちらりと振り返る。ってソニアくんいないじゃない!? 彼ってばどこに……あ。
「いたわ。三十メートルくらい離れた場所の木の陰に、なんか隠れてるわね」
「なんだと。……ああ、たしかに」
ジッと目を凝らすヴァイスくん。彼も見つけたみたいね。なにやら遠くでチラッチラッとコッチ見てきてる謎マッチョが。
「おいソニアよ。なぜそんなところにいる」
「お、お気になさらず!」
「……俺は、護衛を任された身で、なぜレイテ嬢から離れたと聞いているんだが……?」
「ひえッ!? すすす、すぐいきますぅ~~~~!」
おわわわっ。ヴァイスくんがちょっとキレ声になったわ。いつも天然ふわふわ王子だから新鮮ね。
「不肖ソニアッ、ただいま参りました! ……ひー王子に初めて怒られた……!」
「うふふ、ヴァイスくんは真面目だからね。サボりをする人は許せないのよ」
「い、いやいやレイテ様。護衛対象がレイテ様でなければ、あんなに……」
「え?」
ソニアくんが何やら言い始めた時だ。ヴァイスくんが軽く咳払いした。ソニアくんが思わずビクつく。
「で、ソニアよ。元副団長たるお前が、仕事を投げ出すようには思えんが」
「は、ははぁ! もちろんでございます! ヴァイス王子のお側にまではお届けしましたッ! それから全力で遠ざかっただけです!」
「「なにゆえ?」」
わたしとヴァイスくんの疑問がハモる。
いや別に離れることないでしょ。側にいればいいのに。
「い、いやぁ~……! それは馬に蹴られるからというか、お若い二人を邪魔するわけにはというか……!」
「ソニアくんも若いでしょ?」
まだ二十代そこそこくらいじゃないの。ねぇヴァイスくん?
「む……なるほど。気遣い、感謝する。お前は真の忠臣だ」
「ヴァイスくーん?」
わたしと違い、ヴァイスくんは何やら得心したようだった。え、なに!?
「頑張ってくださいね、王子。ストレイン王国の未来のためにも」
「ああ、全力を尽くすと誓おう」
って二人とも何なのよ~~?
「レイテ様も話に混ぜてよ!」
「「いやぁそれは……」」
「なんでなんで!?」
と、二人に割り込もうとした時だ。不意に迫る二つの影があった。
「す、隙ありだぞォッ、王子!」
「終わらせてやるでごじゃるぅーー!」
ブッ飛ばされていたケーネリッヒとセツナだった。二人ともボロカスなせいで目がイッちゃってるわ。
彼らはこちらに飛び掛かり、その異能を全力解放させる。
「暴風纏え『旋紅靴』ァアアアーーーッ!」
「重圧与えよ『桃源天下』ァーーーーッ!」
風と重力が二人から溢れる。ケーネは暴風を出力に超速の飛び蹴りを放ち、せっちゃんは倍加した重力による振り下ろしを放った。
「「くたばれ王子ィーーーーーッ!」」
共に必殺の一撃。当たれば致命傷は間違いない。だけど、
「ギフト発動――『天楼雪極』」
「「ッ!?」」
瞬間、ヴァイスくんの青白い閃光が溢れた。ソレを浴びて二人は弾き飛ばされた。まるで、真正面から雪崩に突っ込んでしまったかのように。
「うぐぅ……なッ、なんて濃密な『アリスフィア放射光』……!?」
「強化型ギフトだからとて、こんなことが……!」
剣を振るわれるまでもなく地に伏せる二人。って……いやいやいやいや!? わたしも驚きなんだけどぉーーっ!?
「ヴァイスくんこれどうなってんの!? 二人とも、アナタに近づくことすら出来てないんだけどッ!? ヴァイスくんの能力って身体強化じゃ……」
「――アレはもしやッッッ!?」
「ってうるさ!?」
ソニアくんがなんか叫んだ! そーいえば彼、バトルマニアだったわね。解説任せた。
「『神威解放・殉光ノ型』! 異能の根源エネルギーたるアリスフィア放射光を、何倍もの出力で放つ技でございます!」
すんごい早口で話すソニアくん。オーバーなんちゃらって……ああ。
「前にアシュレイが使ってたやつね」
アリスフィア放射光は、水に似た性質を持つ。それを高出力で噴き出すことで、アシュレイは高速移動を行っていた。
「なるほど。ヴァイスくんはそれを防御に利用したのね」
「そう正解ッッッ!」
うるさ!?
「王子は身体強化系能力者。肉体と異能が近しい彼らは、アリスフィア放射光の放出量が元々多いのです。そんな彼が意図して高出力で放てば」
「光に触れただけで相手が吹き飛ぶ、無敵の鎧になるわけね……!」
ヴァ、ヴァイスくんさんの最強度合いが上がってる~~!
元々爆発剣技で攻撃力はカンストしてたのに、防御力まで上がっちゃったの!?
「ヴァイスくん、アナタすごいわね……!」
「いや、まだまだだレイテ嬢。異能力者の上級戦闘技法『神威解放・殉光ノ型』。アシュレイに教えてもらったのだが、コントロールが上手くいかん」
光を収めるヴァイスくん。「放射光を操る感覚がわからない。全身から雑に出すのが精いっぱいだ」とぼやきつつ、ふう、と。無表情ながら彼は息を吐いた。
「ってアナタ、もしかして疲れてるの……?」
とっても珍しいことだ。彼ってば体力オバケだから、疲れた素振りなんてこれまで見せたことがないのに。よっぽど消耗が激しいのね、あの技。
「ギフト発動って、全力出すほど体力や精神力を削るもんね」
ソニアくんが言ってたっけ。ギフトの力そのものである放射光をめっちゃ出すのは、血を噴出するに等しいって。
「ああ、禁技として秘匿されているわけだ。体力の消耗がかなり激しい。放出加減を間違えて、訓練で何度か死にかけたほどだ」
「そうだったんだ……」
異能使いは希少な存在。その血筋を自爆技で絶やすにはいかないものね。
「アナタってば王子様なのに。そんな危険な技を練習してたの?」
「まあな。どうしても、強くなりたかったんだ。キミを守るためにな」
「ぬぬ!?」
それってどういう……って、ああ、彼はわたしの護衛役だものね。仕事を全力で果たしたいってことね。……一瞬変な勘違いしかけたわ。
「レイテ嬢。世の中には危険がいっぱいだ。もう少し身を案じたほうがいい」
たとえば――と言って、彼は冷ややかな眼差しで、ケーネリッヒとセツナのほうを見た。
「レイテ嬢が側にいるのに、突っ込んでくる者たちもいるからな」
「「ひえっ!?」」
あ、ヴァイスくん怒ってるわ。これあかんヤツだわ。
「ちっ、違うんだ王子よ! 何度も何度も訓練で打ちのめされたせいで、冷静じゃなかったというか……!」
「そそそーでござるよっ! もうヴァイス殿をぶっ倒して訓練を終えたい一心で……!」
慌てて言い訳するキッズたち。が、「無駄だ」と、ヴァイスくんは二人の言葉を一蹴した。そして。
「仕置きだ。構えろ」
「「ふぇ!?」」
地面にへばる二人へと、容赦なく言い放つ。必殺の抜刀の構えをしながら。
「別にそのまま寝ててもいい。お前たちがどうだろうと、俺は技を放つだけだからな」
「「ちょっ、ちょっ待っ!?」」
「ではいくぞ。〝ストレイン流異能剣術〟奥義――『滅尽・斬煌亂閃』」
「「わああああああああーーーーーーッ!?」」
……そして放たれる十六条もの光の斬撃。
乱反射する破壊光が、キッズたちごと周囲一帯の木々を爆滅させた……! って相変わらずヤバぁああッ!?
「加減はした。ケーネリッヒにセツナよ、どこに吹き飛んだかは知らんが生きているな? 生きているなら訓練を続ける」
「ちょっと休ませてあげてヴァイスくんさんっ!?」
この『魔の森』で一番怖いのは、魔物じゃなくてこの王子様ね……!
ここまでありがとうございました!
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