60:聞かなきゃよかったクソガキさん!
途中でもご感想ぜひください~~~~~~~~~~~~~~~~~!!!!!!
「わたし、起床!」
――わたし、レイテ・ハンガリアの朝は早い。
伐採地のヴァイスくんが爆発剣術で木を斬りまくるよりも早く起きると、朝の身支度を自分で開始。
鏡台に腰掛け、自慢のさらさらな銀髪に櫛を通していく。
使用人は使わない。
メイドたちに任せようとすると『朝の身支度権』を賭けて殴り合い始めるし、アシュレイに任せるとなんかハァハァキモいからね。
「なんかわたしの周りって変な男ばっかりよねぇ……」
とぼやきながら、いつもの『悪そうなドレス』を着て準備完了と。
窓の外に向かって堂々と宣言してやる。
「領民どもォォォッ! 今日もこの、極悪令嬢レイテ様がコキ使ってあげるわァッ! おーーほっほっほっほぉーーー!!!」
『うぉおおおおおおおおおおレイテ様ァァアアアーーーーーーーーッッッ!』
わたしの声に、オーブライト領民を取り込んで十五万人に膨れ上がった領民どもが叫び返すのだった。
って流石にうるさいわ!
◆ ◇ ◆
「毎朝やるのか、それ?」
「あらケーネ」
「可愛く略すな……!」
朝食の席にて。
先日から泊まっている幼馴染のクソガキさんが妙なことを聞いてきた。
「ほら、朝の『コキ使ってやるわよ~』ってやつ。その宣言にもビビッたがノリノリで応える領民たちにもまたビビッたぞ」
「あー朝の日課ね」
「どんな日課だ……」
やれやれ。わかってないわねぇこのキッズは。
「ほらわたしって頭いいじゃない?」
「部分的には」
「全体的によ。それで領民たちはアホじゃない? だから気を抜いたらあいつらは、自分たちが『レイテ様に飼われるペット』だってことを忘れちゃうかもじゃない」
「それで毎朝刷り込んでるわけか」
そーいうわけ!
「わたし頭いいでしょ~?」
「うーん?」
「って頷きなさいよ! なんで『部分的には』どころか承服しかねない扱いになってんのよ!?」
まったく失礼しちゃう幼馴染だわ。
「いいかしらケーネ」
「呼び方……いやまぁいいか」
「じゃあ続けるわよ。アンタ、わたしに宣言したわよね? 『いつかお前を超えるような領主になってやる』って」
「ああ。生意気に思えるかもだが、心からの本心だ」
よろしい。だったら口だけの男にならないためにも、
「この地にいる間、アンタは弟子みたいなものよ! 常にわたしを見て勉強なさいっ」
「つ、常にお前を見てだと……!?」
ってなーに赤くなってるのよ。
あ、もしかして弟子扱いが不服で怒りそうなの!?
「ふんっ、不満なら別にいいわよ」
「いっ、いやいやいやいや! きっちりと見習わせてもらうぞ、うむっ!」
あぁそう? ならば目をかっぽじって過ごすことね。
「頑張って極悪領主二号になりなさい!」
「いや、お前を見て極悪になれるかは自信が……」
「なんでよ!?」
と、アホ幼馴染と言い合っていた時だ。「朝食をお持ちしました」と、執事のアシュレイがお皿を手にやってきた。
……ってなんでニヨニヨした顔してんのよ?
「いやぁ~青春ですね~『ケーネ様』。愛称で呼んでもらえてよかったですねぇ?」
「うっ、うるさいぞ執事よ!」
こらアンタら、よくわかんないけど言い合わないの。
「料理に唾が飛ぶでしょうが」
「これは失礼を。ちなみにレイテお嬢様、私にもニックネームをつけてくださっても」
「変態クソ眼鏡」
「おふっ……!」
罵ってやったのになんか嬉しそうにするアシュレイ。そういうところが変態クソ眼鏡なのよ。
「おっと重ねて失礼をば。では、本日の朝食のオークソテーとなります。ケーネリッヒ様もどうぞ」
「む、朝から肉か。……ってちょっと待て、ポークソテーでなくオークソテーと言ったか!?」
「はい。魔物の豚鬼でございます」
「ぬぬぬぅ……!?」
あらなにイヤそうな顔してるのよ。美味しいのよ~?
「魔物肉を食べ始めたのは知ってるが、やはり抵抗がなぁ……」
「こらダメよケーネ。優秀な領主を目指すんだったら、なんでも食べて栄養にしないと。じゃないと大きくなれないわよ?」
「お前に言われても説得力がないんだが」
はっ倒すぞ!!!
「だが言うことは正しいな。ありがたくいただくことにする」
「ふん、それでいいのよ」
ケーネと一緒にパクパクし始める。う~~ん相変わらずとろけるようで美味しいわぁ!
幼馴染も最初はおっかなびっくりだったけど、一口含むと「これは美味いっ!」と喜んでくれたわ。
「肉なのに全然しつこくないな。余計な油が少ない感じだ。肉の旨味とソースの味わい深さだけが伝わってくる」
「ねー。魔学者の推測だけど、魔物ってのは殺人を第一目標に生まれた生命だから、肉体がすごく効率的に出来てるかもなの。要は肉質が画一的でシンプルなのね。だから雑味もないのかもだってさ」
「なるほど……。ゆえにシェフも味付けがしやすいということか。魔物食文化、これは奥深いな」
「でしょでしょ? アンタが領主になったらパクッていいわよ」
「いいのか?」
そりゃもちろんよ。むしろそうじゃないと困るわ。
「文化ってのは競い合ってこそ成熟していくものなのよ。そっちの領にも魔物食のシェフが現れたら、ウチの連中はもっとやる気になってくれるでしょ?」
「それは確かに……。うーん、そのへんの機微も勉強しなければならんな」
「そうして頂戴。まぁ文化をパクるのはいいけど、技術盗んでいったらガチギレするけどね~」
「そ、その件はもう勘弁してくれ。二度とお前は怒らせたくないっ……!」
うふふふ。わかってるんならいいのよっと。
「――ヌフフフ……!」
「ってなによアシュレイ」
なに気持ち悪い笑みで見てんのよ。
「いやぁ、小さい子たちが仲良くご飯食べてて癒されるなぁと……!」
「「小さい子言うなっ!」」
あいっ変わらず失礼な執事ね!
「今度小さい言ったらクビにするからねっ~!?」
「それだけはご勘弁を……! ああ、それはそうとお嬢様」
「なによっ!?」
話逸らそうとしてんじゃないわよ!?
「またくだらないこと言うつもり?」
「いえ、少し真面目な話です。――ケーネリッヒ様に対してですが」
ん? ケーネに対して、なによ。
「彼を身内と見込んで、話してみるのはどうですか。このハンガリア領が抱えている重大な案件を」
「ぬぬ……っ!?」
重大な案件って、そりゃぁアレよね?
「第一王子やら公国王子やら有して、『地獄狼』連中といつかバトるかもなことよねぇ……?」
「その通りでございます」
アシュレイは綺麗な姿勢で頷いた。
ちなみにコイツも元地獄狼幹部だったりするんだけどね。わたしの周囲、マジで地雷まみれじゃない。
「はぁ~~。最近お金儲けまくりでハッピーだったけど、改めて現実思い出してげんなりだわぁ。平和が一番なのに」
「流石はレイテお嬢様。領民たちが危ない目に遭うかもしれないことを嘆いているのですね?」
って違うわよ! わたしは我が身が大切なだけだっつの!
「ふん。そりゃまぁケーネは数少ない異能持ちよ? 力になってくれたら頼もしいわ。でもねぇ、あんまほいほい巻き込むのは……」
「おいお前たち、何の話をしているんだ?」
首を傾げる幼馴染。彼は何もわかってない様子だった。
「い、いやー、別になんでも……!」
「レイテよ。いまさらそんな言い訳は通じないぞ。何か面倒ごとを背負っているくらいはわかる」
「うぅっ」
ケーネはやたら真摯な瞳で見つめてきた。以前までは睨んできてばっかだったのに。
「……今の俺は、母上と共にお前に庇護されている身だ。いわば情けないタダ飯食らい。男として、そんな立場にいつまでも甘んじていられるか」
ゆえに事情を伝えて欲しい、と彼は頼み込んできた。アシュレイが「ご立派です!」と囃し立てる。
「このケーネリッヒ・オーブライト! 次期領主として、何より男として誓おう! どんな面倒ごとも後悔せず聞いてやるとなぁッ!」
「おお~ナイス宣言! 見直しましたよケーネリッヒ様ッ! さぁお嬢様、彼もこう言っていることですしっ」
うううううう~~ん。それなら伝えてもいいのかなぁ。
なら、よし。
「ケーネ」
「なんだ!」
「わたしの護衛のヴァイスくんだけどね」
「あの強くて亡くなった王子似の男か」
そう、あの人。
「彼、マジで第一王子なのよ」
「……は?」
「現政権が民衆を黙らせるために偽の死亡宣言まで出した人ね。つまり見つかったらそりゃもうこの地ごと消し飛ばされるわけで」
「おい待て」
「それで石油工場のシャキールくんだけど、彼」
「待てッ!」
「先日滅びた公国の第一王子だから。もし彼の生存が知れ渡ったら散り散りになった公国民が一斉に奮起するからコッチも現政権的に潰したいわけで」
「おぉおおい!?」
「あとはストレイン王国とラグタイム公国の兵士もダース単位で匿ってるのね。ちなみにそこのアシュレイは現政権を実質支配している傭兵組織『地獄狼』の元幹部で脱走者で、あぁさらっと言っちゃったけど国王になった第二王子ってば行動がおかしいからヴァイスくん曰く『傭兵王ザクス・ロアに洗脳されているかもしれない』って感じなの。それで実はこの国ってパーになりそうで」
「………………」
あら、ケーネってば黙り込んでしまったわ。おーい。
「もしかして、聞いて後悔してる?」
「ししししっ、してないわチクショォ~~!」
と涙目で彼は叫ぶのだった。なんかごめんね~?
ここまでありがとうございました!
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