58:終ッ、ブチキレレイテちゃん!!!!!
「うおおおおおおお死ねぇブルリック・オーブライトォオオオオオーーーーーーーーーッッッ!!!」「一生怨み続けてやるァアアアアアアアーーーーーーッ!」「よくもハンガリア領を犯したなァアアアアアーーーッ!」
領主邸に響く怨嗟と怒号。約十万人の領民どもが屋敷を完全包囲する中、わたしはブルリックに語り掛けた。
「ケーネリッヒが話してくれたわ。母親を盾に脅されたってね」
「ひ、ぐぅう……!」
来客用のソファに座るわたし。対して、ブルリックは床に座らせた。
「き、きさ、いやっ、レイテ・ハンガリア辺境伯。我がオーブライト家とそなたの家は、脈々と続く親類の仲。だのに、年上でもある吾輩に、こんな扱いを……!」
「えぇそうね。まさか親類で年下なわたしの領から、技術を盗もうとするとは思わなかったわ」
「くっ!?」
いいんじゃないの。結構な悪で。好きに嬲っていい自治領民にやったらさぞ気持ちよさそうなやり口じゃない。参考になるわぁ。
でも、
「お前、わたしに手を出したな?」
「そ、それはっ」
「まず謝れよ」
一度踏み折った男の手に、わたしはかかとを振り下ろした。
「ぐぎゃぁぁあああぁッ!?」
「我が領の利益が落ちたらどうする。領民が貧しくなったらどうする。今なお『魔の森』から侵攻してくる魔物を食い止めていられるのは、豊富な装備と医療支援あってこそだぞ。ソレが損なわれたら、どうするつもりだ」
別に領民が死ぬのは構わない。
が、それによってわたしの優雅な生活が台無しになったら、一体どうしてくれるのか。
「技術を、既製品より調べて盗むなら構わない。それはそちらの努力の証。悔しいけれど納得はしてあげた。でも」
指を鳴らす。すると執事のアシュレイに恭しく連れられ、やつれた女性が入ってきた。その隣には女性を気遣い支えるケーネリッヒが。
彼女こそ、ケーネリッヒの母。そして目の前の男の妻に当たる人物だ。
「身内脅して盗みに入らせるとは、まぁよくやったものね」
「ぐぅぅぅ……!」
別に非道さは責めてないわ。だってわたし、悪だもの。
要は刃先の問題よ。悪意なんて自治領民にだけ向けてりゃいいのに。
「背中を刺してくるような縁者、いっそ暗殺者よりどうしようもないわねぇ。最近の殺し屋はむしろ、正々堂々正面からくるのに」
「……その節は面目ないでござる……!」
顔を赤くして謝るせっちゃんにクスッと笑う。なかなか刺激的でよかったわ。
「くっ……それで吾輩をどうする気だ!? いっ、言っておくが、貴族同士の死闘は禁止されておるぞっ!?」
「……はぁ」
対してこちらは恥じらいもしない。ある意味見上げたメンタルね。
「その通りね。〝貴族は共に須らく、王と国家の剣と盾。此れ侵し合うことを永久に禁ズ〟と法にあるわ」
「そっ、そうだろう!?」
「この侵し合うって意味、闘争以外に知的財産の略奪も含まれてるんだけどね?」
「なぁッ!?」
そういう意味じゃ、お前のほうが先に手を出したわけで。
「お前に殴られた。だからわたしは抵抗した。――その因果関係を王宮に説明すれば、面倒になるのはどちらかしらねぇ?」
「そっそそそっ、それはぁああぁあぁああ……!?」
ブルリックの顔がいよいよ青くなる。
いざとなったら法に訴えればいいという切り札。それがあえなく破られたからね~。
「うん、その顔が見れただけひとまず満足としましょう。……それじゃ、そろそろ賠償の件について話しましょうか?」
「ひぃっ!?」
あぁあぁ、もっと顔が青くなってしまったわ。そんなに怯えないで頂戴。だってわたしは優しいから。
「今回の件――なかったことにしましょうか!」
「…………………へっ!?」
へ、じゃないわよ。わたしは笑って彼に続ける。
「ブルリック。アナタに裏切られたことは悲しかったわ。でもだからって、大勢で殴り込んだのは早計だったわね。ごめんなさい、怖かったでしょう?」
「ぁっ、いや、それは……!」
「だから、今回は何もなかったことにしましょう。色々と『行き違い』があっただけ。これで話は終わりね」
一方的に言い切ることにした。もうここに用はないからね。
「じゃあ帰るけど……ああ、ケーネリッヒと奥様は、しばらくウチの領に遊学ということでよろしい? アナタも顔を合わせづらいでしょう」
「あっ……ああっ、うむ! そう、さな。こっ、今回は行き違いで、面倒をかけてしまった。あぁまったく……ケーネリッヒが口を滑らせなければ、こんな面倒には……!」
一瞬、ジロリと息子を睨むブルリック。ケーネリッヒが恐怖にビクつく。
「ちっ……あ、あぁ失礼っレイテくん!」
ブルリックはすぐに表情を繕い、「いやいやはははっ」と媚びたように笑った。
「あぁ、やはりレイテくんはあの頃のままなのだなぁ。お人形さんのように大人しく可愛らしい女の子だ。いやぁ、すっかり変わってしまったと思っていたが、お優しいままのようで……!」
「それはどうも。じゃあみんな、引き上げるわよ」
さっさと引き上げることにする。ケーネリッヒは固まっていたけど、袖をくいっと引いてあげたら「す、すまないっ」と慌てて動き出した。
……らしくないわね。まるで竦んだ小動物みたいじゃない。
「――さぁ、アナタたちも帰るわよ」
「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「わあああああああああああああレイテ様ァアアアアアアアアぁあああああああああぁああああーーーーーーー!!!!!!」」」」」」」」」」」」」」」」」
「うっさいわね!」
屋敷から出て領民どもにも声を掛ける。
いちいち媚びて歓声上げなくていいのよ。近所迷惑になるでしょうが。
「わたし、他の領地の民衆には優しくするのがモットーなのよ。だって法的に嬲るの禁止だしね。だから今回はご迷惑をかけちゃったわぁ~。ごめんね、ケーネリッヒ」
「えっ、あ、いやいやいや……! 今回はむしろ、レイテにこそ迷惑をかけてしまった……」
深々と頭を下げるケーネリッヒ。やっぱりらしくわねえ。
また、続けて彼は「感謝する」と述べた。
「父を潰すと言ったときは、一体どうする気かと思ったが、多少の暴行はあれどそれで手を打ってくれるとは」
「どうする気だと思ってたの?」
「そりゃ、処刑とかめっちゃ賠償金をもらうとか……」
「馬鹿ねー。前者は法で禁止、後者はオーブライト領のみんなが苦しむじゃない」
やれやれだわ。わたしは賢い悪党だから、法と他領民には善良なのよ。
「あーあー、本当に今日は反省だわぁ。ブルリックはともかく、オーブライト領民には本当にご迷惑をかけてしまったわぁ。みんなもそう思うわよねぇ~?」
「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「たしかにぃ~! 謝罪が必要かとー!」」」」」」」」」」」」」」」」」
ほら領民たちも言ってる。……って、あら、ケーネリッヒどうしたのよ。「いやいやそんなっ」て慌てて。
「どっ、どうしてしまったのレイテ! それに領民たちも変だぞっ!? たしかに我が民草には恐怖を与えてしまったが、全ては父と、脅されて動いてしまった俺のせいだ……! だからレイテが何かすることは」
「駄目よ、ケーネリッヒ」
彼の肩を手を添える。
先に家督を継いだ者として、『貴族としての在り方』を教えないとね。
「貴族は力と富を持つ者。誰よりも責任を負うべき存在よ。ゆえに間違ったことをしてしまったときは、誠心誠意の謝罪と賠償をしなきゃだわ。たとえきっかけが何であろうとね」
「レイテ……」
「だからね」
わたしは笑って、幼馴染に続ける。
「これより、オーブライト領民の移民にかかる費用を、全てゼロにするわ」
「はっ?」
ううん、それだけじゃない。
「支度金も用意してあげる。助成金も用意してあげる」
「まて」
「土地も用意してあげる、家も用意してあげる、職も用意してあげる、前の年収よりも必ず上となるよう保証してあげる」
「まてっ、いやまてまてまてっ!? おまっ、レイテそれはっ!?」
わたしは周囲を見渡した。
群がった領民どもの先。領主邸の塀の向こう。事態を固唾と見守る、オーブライト領の者たちを意識し、呼びかける。
「聞いていたかしらッ、オーブライト領のみなさまぁ! 謝罪としてッ、あくまでも今回の謝罪としてッ! もしもウチの領民になるなら、この地以上のあらゆる幸福を約束してあげるわァーーーーーーッ!」
『オッ――オォオオオオオオオオーーーーーーーーッ!?』
はい、宣伝完了っと。
あとは勝手に情報が広まるでしょ。羊も人も、肥えた地があるとわかれば勝手に移動していくものよ。
「レ、レイテぇ……」
ケーネリッヒは何やら固まっていた。
うふふふ、言ったでしょう? このわたしに敵対した以上、
「潰してやる、ってね」
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