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◤書籍化&コミカライズ配信中!(検索!) ◢極悪令嬢の勘違い救国記 ~奴隷買ったら『氷の王子様』だった……~  作者: 馬路まんじ@サイン受付中~~~~
第四部:学園の聖女扁

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131:ねむれずのよる


「死んだと思われた『セルケト・ディムナ』――彼こそが、真犯人だ!」



 辿り着いた真実。刻限に向かう中での、救国の一手。

 だけど告げた直後に、舞台の主役(ジャックくん)はその場に崩れ落ちた。「ちくしょうっ……!」と呻きながら、血濡れた床に両手をついた。



「そ――そんな馬鹿な話があるかよッ! セルケト先輩がハイネくんを嵌めて、ストレイン王国を壊そうとしてる犯人だなんてふざけんなッ! ……なのに何度考え直してもっ、彼が犯人としか考えられないんだよぉ……!」



 彼は、謎を解いた自分自身に怒っているようだった。

 喚きながら床を叩く。何度も、何度も。広がった偽物の血に、己の血が流れだすまで。



「セルケト先輩は法務科のトップだぞ……!? ほ、法は、国を護る正義の概念で……!」


「そうね」



 でも、



「法を扱う人間が、全て善人とは限らないわよ」


「ッ……!」



 ジャックくんは歯を食いしばり、そして。



「ちく、しょぉぉぉ……!」



 やがて血の海に、沈むように突っ伏したのだった。



「――何事でござるか!」



 と、そこで。廊下から複数人の駆けてくる音が響いた。

 ああ、ちょうどタイムリミットだったみたいね。



「っ、風紀警備隊員が倒れていると聞いて駆けつければ……貴様らでござるか!」



 現れたのは『アリスフィア統合生徒会』が副会長、カザネ・ライキリ。そして、



「ちょっとちょっとレイテちゃんたちぃ~? 殺人現場で何かしてるのは、色々アウトなんじゃない?」


「皆様方、いったいなにを……?」



 広報のコルベール・カモミールに、庶務のハロルド・シンプソンがやってきた。

 となれば。



「――ほう」



 最後に、金髪の美丈夫が現れる。彼は彫像のごとき長身より、静かにわたしたちを見下ろした。



「――ざわめく夜だと思っていたが、よもや血の湖畔で、啼哭鳥(カナリア)が鳴いているとはな」


「意味わかんないこと言ってんじゃないわよ」



 この学園の実質的な帝王、統合生徒会長セラフィム・フォン・ルクレール。

 彼までもが姿を出したことで、『アリスフィア統合生徒会』メンバーが勢ぞろいしたのだった。

 さらには「なんだどうした!?」「警備隊が倒れてたんだってよ!」「噂では『ジャックさん』が堕とした変態メス化奴隷メイド(※元王族)の一人にやらせたとか……!」と、騒がしい声と複数の足音までもが響いてくる。

 一般生徒たちが集まり始めたのだ。もはや、真犯人を立証しない限り、わたしたちに逃れるすべはなくなった。



「はっ、化けの皮を剥がしたなぁ貴様ら!」



 そんな状況の中、カザネが憎々しげにわたしたちを見下ろす。



「皆の衆、見るがいい! 同胞たるセルケトの眠る場を踏み荒らしたコヤツらの諸行を!」


 入口に集まった野次馬たちを煽る。「証拠の隠滅でもしようとしていたのだろうッ! なんたる邪悪ッ!」と、わたしたちを悪党に貶めていく。



「なにせレイテにジャック、貴様らストレイン王国民であったからなぁ……!?」



 大臣の子、ハイネ・フィガロの罪が確定しては拙い。そう思って貴様らは――と、カザネは勝手な理屈を並べて、形の良い唇を嘲笑にゆがめた。

 ……だが。



「……なよ。……ざけるなよ……」


「む……?」



 ジャックくんは、カザネのほうをまったく見ない。

 血の海に膝をついたまま、嘲りを一切無視していた。その様子にカザネが青筋を立てる。



「っ、貴様ッ!」


「やめなさいよカザネ。今のジャックくんに絡むのは」


「えぇい止めるなレイテ・ハンガリアッ! 殺人鬼のガキの屑に愚弄されて、このカザネが黙ってられるか!」



 立腹するカザネ。かくして彼が、「おい屑ッ、こっちを向け!」とジャックくんの胸倉に手を伸ばそうとした――その瞬間、



()()



 ()()()、という乾いた音が暗夜に響いた。

 ジャックくんが、カザネの指先を軽く手に取るや、逆方向に折り曲げたのだ……!



「ッ、ぎゃぁあああああああーーーッ!? ききッ、きさまァッ!?」



 カザネの表情が一気に怒りに染まる。彼は片手の袖口から極小の針を出した。




「殺してやるッ! 異能(ギフト)発動ッ、『一寸――」



 カザネの異能『一寸法刃』。その能力は〝太刀のサイズ変更〟。あの針の正体も太刀で、それを振るってジャックくんを斬ろうという算段だろうけど、でも。



「うるせえな……」


「――あ、れ? なぜ貴様が、針、を」



 刹那の一瞬。針は袖口から手に渡る間に、気付けばジャックくんによって()られていた。

 そして。



「そんなに針を刺すのが好きなら」



 ジャックくんはカザネの無事なほうの手首を取ると、ぷつり、と。



()()()()()()()()()()()()()()()



 ()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()



「あっ――ぎゃあああああああああーーーーーーーーーーーーーー!?」



 瞬間、カザネ・ライキリの顔が怒りの赤から恐怖の青に変貌する。

 彼は「じぬううッ!? じぬうううううーーーーーッ!」と喚いて地べたを転がった。そうして片手で手首を必死に掻き毟ろうとするも、それは叶わない。

 だって彼の片手の指は、先んじてジャックくんが折っていたのだから。カザネはそれに気付くと、最後に顔を絶望の白に染めて、泡を噴いて失神するのだった。



「……ああ、どいつもこいつも、踊らされやがって……」



 ジャックくんは倒れたカザネの腕を蹴った。

 すると意味不明なことに、()()、という裁断音が響き、カザネの白い腕が深く斬れた。



「僕を含めて、本当に腹が立つ」



 肌より噴き出す鮮血と針。ジャックくんはそれらを冷たく見下ろした後、恐怖に固まっている野次馬たちを、それから生徒会の者たちを見て、告げた。



「まず最初に言っておく。真犯人は、セルケト・ディムナだ」


『――!?』



 ありえないッ、というどよめきが野次馬たちより広がった。

 続いて「先輩を貶めるな外道!」「馬鹿なことを言うな!」「おまえが一番怪しいんじゃないのか!?」という罵声も。

 だけどジャックくんはもう戸惑わない。



()()()()()()


『!?!?』



 鮮血と、苦悶の息が零れた。罵声を放っていた者たちの舌先。その先端がわずかに裂け、痛みで無理やりに黙らされたのだ。

 明らかに異能(ギフト)使用による攻撃。悪行。けどジャックくんは、もはや風評など()()()()()()という風体だった。

 前髪から覗く彼の瞳は、どこまでも涼やかで、何も映していなかった。



「はぁ……ジャックくん、いいわけ? 今のアナタ、だいぶ滅茶苦茶やってるわよ?」


「ええ、構いませんよ。……明日ちょっぴり後悔するかもですけど、今は、とても、暴れたい気分だ」



 彼はこちらを振り向き、薄く微笑んだ。



「ふふ……思えばレイテ様は、最初から道を示してくれてたんですね……。単に〝悪党扱いが嫌だから〟善人に思われたかった僕と違った。レイテ様は〝そのほうが気持ちいいから〟、悪党扱いを求めていた」



 気付けば『影』が揺らめいていた。

 月明かりの下、惨劇の場に伸びたジャックくんの暗翳が、ざわ、ざわ、と。まるで身をかがめた狼のように。



「誰よりも何よりも()()()()、レイテ様は自分の魂を喜ばせ、()()()としていた。あぁ、そうだ……僕もかくあるべきだったんだ。『罪人の家族や前科者を救う』――なんてお題目の前に、僕は、僕自身を救うべきだったんだ……! 無駄に苦しむ必要なんてなかったんだ……ッ!」



 かつて無様に嬲られていた彼。おどおどと震えてみんなに笑われていた男の子。

 でも、もうそんな弱々しい姿はどこにもなかった。彼は、『殺人鬼の子』は、そっと部屋の壁に手を当てる。すると、



「だって僕には、父さんから受け継いだ力があるのだから――!」



 瞬間、周囲一帯が斬滅した。床だけを残して、壁が、天井が、上階が隣室が全て細かなブロック片となって砕け散った。

 生徒たちの悲鳴が響く中、夜風がぶわっと吹き込んでくる。わたしたちの視界に大きな満月と、学園の広大な敷地が露わとなる。

 ああ、もう本当に滅茶苦茶ね。でも、いいじゃない。



「それでどうするの、探偵くん?」


「決まっているでしょう……!」



 彼は、ニィッと微笑んだ。

 それは弱々しい笑みなんかじゃない。最近どこかで見たような凄惨な笑み――そう、エックス・ロアが浮かべていたような、獲物を狙う『狼』の口元だ。



真犯人(セルケト)を晒し上げてやるッ。そのためにも、()()()――!」


「!」



 ジャックくんが必要としたのは、わたしの従者たる『おぞましきエルザフラン』だった。



「僕の推理が正しければ、ヤツは学園周辺内にまだいるはずだ。そしてこの学園は、『戦士ヒュプノス』が()()()()()礼堂を中心とした場所。つまり」


「ハッ――つまりここらは戦場跡! 死体は眠り放題なわけかよ!」



 意図を察したエルザフランが、全身に異能の光を滾らせた。



「いいぜぇお坊ちゃん。今のアンタは()()()()()()とてもイイ。それにオレは元々、頭を下げたアンタにお嬢が貸した猟犬だ。ならばッ」



 おぞましき薄紫の湮光。それは急速に周辺空間へと溢れ、溢れ、溢れ続け、やがて学園を中心とした地域一帯を呑み込んでいき、そして。



「尻尾振って従ってやんよォ! 異能全力解放ッ、『ねむれずのよるルクスリアン・ハートレス』――!」



 そして――かつてハンガリア領を襲った最悪の光景が再現される。

 死後の安寧を凌辱せしめる禁断の力。学園一帯の土壌が蠢く。震え、叩かれ、一斉に土を舞いあげて、やがて地上を蝕むように、白骨の腕が這い出して――、



「物量勝負で、一切合切カタぁつけてやろうや……!」


『――ガァァァァァアアアアアアアアアアーーーーーーーッッッ!』



 骨鳴らす音を咆哮のごとく響かせて、『死体の軍勢』が学園を覆い尽くした。



次回、四章最終回

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― 新着の感想 ―
あーもうめちゃくちゃだよ( ˘ω˘ )
正直、ある意味カザネとかいうクソとしか思えないキャラを創り出せるのは才能だと思う。 まあぶっちゃけ他の生徒会メンバーもクソだけどね。
正義はこうでなければいけない、の殻を破ったジャックくんはきっと誰にも止められない! 止められるであろうレイテ様はきっと止める気がない!ジャックくんなりの正義を見せてもらおう!
2025/06/26 13:04 退会済み
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