125:証明失敗
誤字めちゃしちゃう・・・!(´;ω;`)
報告修正ほんまありがとうございます!
誤字しなくなる方法ありますかね・・・
「ジャ、ジャック……おまえ……」
目を見開くハイネ。絶望に染まっていたこの子の瞳には、今、カザネの前に立ちはだかるジャックくんの姿が映っていた。
「貴様……こいつが殺人犯ではない、だと……?」
「っ……は、はい……!」
軍務科トップであり、容赦がまるで一切ない男・カザネ。そんな彼を前に、ジャックくんが食い下がる。
「なにか証拠でもあるのか?」
「あ、ありません。でも逆に、ハイネくんが殺したっていう証拠もないでしょう……!?」
「む……ッ」
それはたしかにそうね。
今回起きた密室殺人。ハイネはそれが可能となる異能と、被害者のセルケト先輩を恨むような動機と、短絡的にやりそうな人格評価を持っている。
が、しかし。どれも客観的な考察材料にしか過ぎない。物的証拠は一つもなかった。
「だからカザネ先輩、せめて『殺人犯』と呼ぶのはやめてあげませんか……!? 彼はまだ容疑者であって、決めてかかるのはよくないですよ……!」
「……ちっ。予想外に口の上手いやつ。やはり貴様、虐げられていた態度は演技だったか?」
「いやいやっ、そんなことはっ」
カザネは酷く不機嫌そうだ。だけど下手な反論はしない。ジャックくんの言葉に筋が通っているからだろう。
彼は舌打ちをしつつ、わたしのほうを睨んできた。
「なによ」
「ふん、師匠が師匠なら弟子も気に入らんと思っただけよ。揃いも揃ってこのカザネに食って掛かりおって」
文句を言いながらハイネに繋がる縄を引く。けど、先ほどの強引なものとは違い、少しだけ力加減が丁寧になっていた。
ジャックくんの意見に冷静さを取り戻したからだろう。それでも不満げだけど。
「師匠たる貴様のこざかしさを真似したんだろう。ああ、貴様に比べたら、拙者の師は寡黙で、背中で語る武人然とした人で――――いや、アレの話はともかく」
「?」
不意にしだした師匠自慢を、しかしカザネは咳払いをして自分で打ち切った。なんなのよ。
「ともかく、ハイネ・フィガロを殺人容疑者とすることは絶対だ。拘束もする。本国への通報もさせてもらう。よいな?」
「……ええ、かまわないわ。流石に仕方がないでしょう」
新政権でいきなり大臣の身内が殺人容疑か。新国王様は大変になるわね。
もしも本当にハイネがやってたなら、どうしようもなく致命的で――ああ。
「なるほど、そういうことね……」
「む? なんだか知らんが、連れていくぞ」
わたしが全てを察した時だ。まるで答え合わせでもするように、「カザネ様っ」と呼ぶ声と駆けてくる者たちが。
彼らは一様に『風紀』と描かれた腕章をつけていた。 カザネを前に、彼らは恭しく敬礼する。
「この子たちは?」
「風紀警備隊の部下たちだ。それでどうした、報告せよナナシ副隊長」
カザネの呼びかけに、ナナシと呼ばれた長身三白眼の男が「は!」と応え、先頭に出る。
「レイテ様とのご歓談中、失礼します!」
「いや別に歓んでないが」
「容疑者ハイネの部屋から、こちらが!」
「聞くでござる!」
カザネを無視し、彼は袋に包まれたナニカを突き出してきた。
ああ……それは。
「包丁、でござるか……?」
「はっ。表面上はよく洗われていたようですが、しかし」
ナナシが包丁の付け根を指差す。
柄に包まれたそこにはじんわりと……ごく少量の血液が滲んでいた。それを見て、カザネが麗しい目を見開きながら「なるほど……」と呟いた。
「中子と柄の隙間か。安い刃物では、刃に伝った血がそこに入ってしまうのはよくあることよ。くくっ……」
瞼を瞑って笑うカザネ。次に開かれたときには、彼の視線は絶対零度に墜ちていた。
「ふざけおって」
ぎしィッ、と強く縄が引かれた。ハイネが「うぅ!?」と呻くが、もはやカザネは斟酌しない。彼は容疑者に無言で平手打ちを喰らわせると、ジャックくんのほうを強く睨んだ。
「おい小僧。たしか、証拠がないとか喚いてきたな?」
「そ、それはっ……」
「かくして証拠は挙がった。しかも工作の跡までな」
カザネは縄を引きながらジャックくんに近寄ると、鼻先が触れ合う距離まで顔を寄せ、一言。
「まだ、『殺人犯』を連れていくことに文句があるか?」
――そう恫喝する彼を前に、ジャックくんは何も言い返せないのだった。




